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「まぁ、それはおいおい慣れていただくとして」
 慣れる? 慣れるということはいつか実行されてしまうということか?
 思わず想像してしまった未来に顔を真っ青にさせたアシェルの髪を愛しい愛しいと言うかのように撫で梳いたルイは、いつ受け取ったのか、宝石のように輝くフルーツがたっぷりと乗せられたケーキの皿を見せた。
「甘いものはお好きですよね? 私としてはお肉も美味しいと思いますが、今のあなたにはこちらの方がお口に合うでしょう」
 慣れない場所で、慣れない人混みにいては肉など食べる気にもなれないだろうというルイの予想通り、アシェルは決して心地よくない胸のつまりを覚えて何を食べる気にもなれなかったが、差し出されたケーキには思わず目が釘付けになる。
 田舎に引っ越し余生を送るため、できるだけ金を貯めなければとアシェルが手を出さなくなったものの中にケーキを含めた甘味がある。ひとつひとつはそう大きな金額ではないものの、積もり積もれば大きな金額だと知って、泣く泣く自分の人生から切り離したのだ。先程侍従たちに無理矢理連れ込まれた小部屋でも、あえてフルーツではなくサンドイッチを食べていたのも、一度口にしてしまえば、もう我慢できなくなることを自覚していたからだ。だというのに、どうぞ食べてくださいと差し出されるとは何の拷問だろうか。
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