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 人は簡単に嘘をつく。否、本当の事を口にする方が珍しいと言った方が良いか。そんな中で、ルイの言葉を真正面から信じることなどできない。そんな疑心に満ちた兄を見て、フィアナは紅茶を飲むフリをして瞼を伏せた。
「お兄さまは難しく考えすぎなのですわ。この世の中、利益だけで結ばれる愛ばかりではございませんのよ?」
 確かに表面上は政略結婚であったが、フィアナとラージェンの間には確かに愛がある。それをアシェルは知っているはずなのに、自分のこととなると途端に信じられなくなるらしい。
「愛だ何だを議論する気は無い。お前の今の幸せを否定する気もないよ。僕はお前が幸せなら、それに関して口出しなんてしない。ただフィアナ、どうしてこんなことを? 俺が結婚しようがしまいが何ら家にもお前にも影響はないし、田舎の屋敷の資金も、これからの生活費もお手伝いの賃金も自分で賄えるように働いて貯めた。僕が王都にいなくたって、問題はないはず。全部自分で完結できるし、誰にも迷惑は掛からない。家の金に頼る気も、お前たちに援助を頼む気も無い。父上のことも子の義務として放り出す気はない。なのに、なぜ急にこのような縁談など……」
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