53 / 349
53
しおりを挟む
「アシェル・リィ・ノーウォルト殿。どうか私と結婚してください」
飾った言葉など何一つない求婚は、しかしだからこそ異常な輝きを放つ。世の女性たち、あるいは男性であってもうっとりしてすぐに首を縦に振ってしまうような眩さであるが、生憎とアシェルには効かない。彼には叶えなければならない願いがあるからだ。
「お断りします。そもそも、何か勘違いされているかもしれませんが、私は男ですよ?」
「男性であることが断りの理由であるのでしたら、どうぞ撤回してください。私はあなたが男性であることなど最初から知っています。だからこその、陛下のお許しなのですから」
断ると言った瞬間に悲しそうな顔はするものの、ルイは引く様子を見せない。アシェルは面倒なことになったと胸の内で小さくため息をついた。
彼の言う通り、貴族である以上男同士など婚姻を拒否する理由にはならない。このバーチェラでは同性同士の結婚を許可する法律は無いが、貴族であれば家同士の結びつきや跡目争い、相続争いを防ぐために子を望むことのできない同性同士の結婚を求めることもある。無益な争いを防ぐためにも、特例として領地を持つ貴族は王の許可があれば同性同士の結婚が認められるのだ。現に女性同士、男性同士で結婚している貴族も少なくはあるものの両の手では数えきれないくらいには存在する。
国王たるラージェンが許可すると言っている以上、同性同士であることは断る決定打にはならない。現にルイはずっとアシェルの手をとったまま、〝はい〟と返事をするまで離さないとでもいわんばかりだ。ならば、別の理由を考えなくては。
飾った言葉など何一つない求婚は、しかしだからこそ異常な輝きを放つ。世の女性たち、あるいは男性であってもうっとりしてすぐに首を縦に振ってしまうような眩さであるが、生憎とアシェルには効かない。彼には叶えなければならない願いがあるからだ。
「お断りします。そもそも、何か勘違いされているかもしれませんが、私は男ですよ?」
「男性であることが断りの理由であるのでしたら、どうぞ撤回してください。私はあなたが男性であることなど最初から知っています。だからこその、陛下のお許しなのですから」
断ると言った瞬間に悲しそうな顔はするものの、ルイは引く様子を見せない。アシェルは面倒なことになったと胸の内で小さくため息をついた。
彼の言う通り、貴族である以上男同士など婚姻を拒否する理由にはならない。このバーチェラでは同性同士の結婚を許可する法律は無いが、貴族であれば家同士の結びつきや跡目争い、相続争いを防ぐために子を望むことのできない同性同士の結婚を求めることもある。無益な争いを防ぐためにも、特例として領地を持つ貴族は王の許可があれば同性同士の結婚が認められるのだ。現に女性同士、男性同士で結婚している貴族も少なくはあるものの両の手では数えきれないくらいには存在する。
国王たるラージェンが許可すると言っている以上、同性同士であることは断る決定打にはならない。現にルイはずっとアシェルの手をとったまま、〝はい〟と返事をするまで離さないとでもいわんばかりだ。ならば、別の理由を考えなくては。
666
お気に入りに追加
1,544
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる