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 アシェルを横たえて侍従が離れた瞬間、次は侍女たちが一斉に寝台を取り囲み、ヌルヌルと濡れた手をアシェルの全身に這わせ始めた。
「ちょッ、止めなさいッ! 何を――ッッ」
 鼻腔をくすぐる薔薇の香りに、香油を塗られているのだということは理解できるが、だからといって許容できるものではない。幼い頃から知っているじぃならばまだしも、見も知らぬ、それも女性に下着一枚の姿で香油を塗りこめられるなど誰が許容できるものか。そう思ってジタバタと侍女たちを蹴り飛ばさないよう気をつけながらも手足を暴れさせれば、控えていた侍従が「失礼を」と言ってアシェルの両手両足を掴み、寝台に縫い付けた。この侍従たちは〝失礼を〟と言えば何でもして良いと勘違いしているのではないか? とアシェルが真剣に悩む中、暴れる障害が無くなった今が好機と侍女たちは手早くアシェルの全身に香油を塗り込み、手足の爪をヤスリで磨いた。
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