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「……今日は式典のはずでは? 王妃様はもちろん参加されるだろうが、私はノーウォルトとはいえ三男だ。参加の予定はない。なぜ王妃様が着飾って来てと言うのかはわからないが、それは今でなくて良いのでは? そちらも陛下や王妃様のお仕度に忙しいだろうし、私も陛下やサイラス様への挨拶がある。王妃様がお望みとあらば明日、もう一度登城する。おめかしは本当によくわからないが、そちらの方がお互いに良いのでは?」
フィアナは心優しく聡明な子だ。兄であるアシェルのことも大切にしてくれている。それは誰に言われずともわかっているが、どうにも嫌な予感がしてアシェルは車椅子のひじ掛けを無意識に強く握った。本当はすぐにでも車椅子を動かしてこの部屋から出ていきたいところだが、流石に妹とはいえ王妃の命を問答無用で無視するわけにもいかない。それに、チラと視線を向ければアシェルを逃がさないためだろうか、唯一の扉の前には体格の善い侍従が立っていた。その姿に益々嫌な予感がして目の前の侍従がアシェルの提案に頷いてくれることを心の底から願ったが、彼の願いに反して侍従はにこやかな笑みを崩すことは無い。
フィアナは心優しく聡明な子だ。兄であるアシェルのことも大切にしてくれている。それは誰に言われずともわかっているが、どうにも嫌な予感がしてアシェルは車椅子のひじ掛けを無意識に強く握った。本当はすぐにでも車椅子を動かしてこの部屋から出ていきたいところだが、流石に妹とはいえ王妃の命を問答無用で無視するわけにもいかない。それに、チラと視線を向ければアシェルを逃がさないためだろうか、唯一の扉の前には体格の善い侍従が立っていた。その姿に益々嫌な予感がして目の前の侍従がアシェルの提案に頷いてくれることを心の底から願ったが、彼の願いに反して侍従はにこやかな笑みを崩すことは無い。
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