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「申し訳ございません。あのような人目のある場所でご説明できなかったとはいえ、無理にお越しいただきました非礼はお詫びいたします。王妃様のご命令にて、我々はアシェル様をお待ち申し上げておりました」
「王妃様の、ご命令で?」
 アシェルのことを気にかけているフィアナはあれこれと理由をつけては接触を試みているので、あまりに避け続けるアシェルにしびれをきらして強硬手段に出たというのであれば理解はできる――が、やはりおかしい。常ならばともかく、今日は式典の日だ。フィアナは王妃として色々と準備に忙しいだろうに、アシェルに構っている暇などあるのか? それも、アシェルを捕まえるためだけにこれほどの侍女や侍従を差し向けるなど。
「よくわからないが、王妃様からの命があるのならば早めに話してほしい。こちらの事情で悪いが、私は退職の挨拶を陛下とサイラス様にしなければならない。式典でお忙しくされるだろうから、できるだけ早い時間に伺いたいんだ」
 遅くなれば迷惑を被るのは王とサイラスだ。サイラスはともかくとして、王の時間を削り予定を崩すことを、王に仕える侍女や侍従が良しとするはずもない。早くしなければ困るのはそちらだと目を細めるアシェルであったが、そんな彼の予想に反して侍従はにこやかに微笑んだ。
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