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「大丈夫だよ、じぃ。少し仕事が忙しかっただけだ。今日ゆっくり眠れば問題はない」
「それは勿論でございますが、足が痛めばゆっくりお休みにもなれないでしょう。明日お休みなのでしたら、医者を呼びましょう。このお屋敷に戻られてから、あまり診察も受けておられないのですから、それでは悪化してしまいますぞ」
 足や目のことを考えれば、定期的に医者の診察を受けるべきであるのだが、アシェルは何度もよぶ必要はないと言って医者を遠ざけた。おかげで気温によってはジクジクと足は痛みを訴えるし、モノクルで補っているとはいえ見えにくい目を酷使するせいで頭痛も酷い。だがアシェルはやはり、首を横に振った。
「いや、いい。寝てればどうにかなるものなのに医者を呼んでは無駄に金がかかる。それより――」
 明日の事をじぃに頼もうとした時、アシェルの言葉をかき消すようにバンッと大きな音をたてて扉が開かれる。驚いてそちらに視線を向ければ、そこにはムスッと不機嫌さを隠そうともしない表情を浮かべた女性が立っていた。
(相変わらず、派手だな)
 真っ直ぐにアシェルに視線を向けながらコツコツと靴音を響かせて近づいてくる彼女を見て、アシェルは現実逃避をしてしまう。
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