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「旦那様のことも、王妃殿下やジーノ様のことも、何もご心配いりません。すべてはこのじぃにお任せください。これでもまだまだ現役でございますからな」
 例え部下にあたる執事やメイドたちがおらずとも、自分一人で何とでもなると老執事は笑う。生まれた時より傍にいた彼の笑顔は何よりも安心できるはずなのに、今のアシェルは瞼を伏せた。
 父の手足となって生活を支えていた彼は、父とさほど歳は変わらない。そんな彼にこの広い屋敷の維持と父やアシェルの世話を任せていることが申し訳なくて仕方がない。本来であれば引退し、退職金で穏やかな隠居生活を送ったり、仕事をしていたとしても多くの執事やメイドに指示を出すだけで、彼はゆったりと出来ただろう。まかり間違っても重い水や湯を運ぶなどということはする必要はなかった。
 口をつぐむアシェルが何を思っているのか、世話をしてきたじぃには手に取るようにわかる。彼は膝をついて、アシェルの足にそっと触れた。
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