ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

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 幸いなことは、寝たきりで衰弱しているとはいえ、まだ意識はハッキリとしている父がアシェルの給料だけは守れるようじぃに頼んで、ウィリアムとメリッサにはうんと低い給金であると告げ、アシェルの稼いだ金の大半を守ってくれたことだろう。アシェルが生活するに必要な分は成人した者の務めとして出しているが、その他の金は必要最低限以外のすべてを貯金に回した。それが溜まった今、アシェルはすぐにでも本邸を出ていきたいところであるが、国王から三か月の待ったがかかってしまった。だから今、アシェルは静かに待っているのだ。仕事を辞め、王都を離れ、田舎でひっそりと暮らせることを。
「坊ちゃま、お食事をお持ちいたしました。どうぞ温かいうちにお召し上がりください」
 これからの事をつらつらと考えていれば、いつの間にかじぃがテーブルに夕食を用意してくれていた。声をかけられてようやくそれに気づいたアシェルが小さくじぃに謝罪し、カトラリーを取る。
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