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アシェルが成人するまでは、そのような事はなかった。むしろ贅沢を出来るほどには裕福だったと言えるだろう。侯爵家にふさわしい、優雅で金に困ることのない生活をしていた。だが、そうしてノーウォルトを維持していた父が病に倒れ、長子であるウィリアムが当主の座を継いでから、ノーウォルトの斜陽は始まってしまった。もっとも、彼だけが悪いなどとは言わない。彼が当主になった時には、アシェルは勿論、すぐ上の兄である次男のジーノも、末の妹であるフィアナもこの本邸にいた。母はすでに儚くなっていたが、それでも兄弟が力を合わせれば、決して乗り越えられぬ難ではなかっただろう。だが、ウィリアムが許嫁であったひとつ年下のメリッサと結婚し、彼女が本邸に暮らすようになってから、兄弟たちは徐々に本邸を遠ざけるようになったのだ。
何度もウィリアムと話をした。いくら侯爵家であっても、宝石やドレスを買い漁ればいずれ金は尽きる。社交界に出ることが大切であると貴族として生まれてきた兄弟たちはわかっているが、それでも限度がある。数ある舞踏会すべてに顔を出す必要は無いし、その度にドレスや宝石を新調する必要はない。
それはすべて正論で、目に見えて金は減っていった。どれほど目を背けても現実は変わらないと、誰の目にも明らかだった。しかし、ウィリアムは聞き入れなかった。彼はどこまでいっても妻たるメリッサの味方で、兄弟の言葉は聞かなかった。それは夫としては間違いではなかったのかもしれない。だが、確実にノーウォルトの栄光を潰していった。
何度もウィリアムと話をした。いくら侯爵家であっても、宝石やドレスを買い漁ればいずれ金は尽きる。社交界に出ることが大切であると貴族として生まれてきた兄弟たちはわかっているが、それでも限度がある。数ある舞踏会すべてに顔を出す必要は無いし、その度にドレスや宝石を新調する必要はない。
それはすべて正論で、目に見えて金は減っていった。どれほど目を背けても現実は変わらないと、誰の目にも明らかだった。しかし、ウィリアムは聞き入れなかった。彼はどこまでいっても妻たるメリッサの味方で、兄弟の言葉は聞かなかった。それは夫としては間違いではなかったのかもしれない。だが、確実にノーウォルトの栄光を潰していった。
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