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「王妃に会うことがあれば私から弁明しておきますから大丈夫ですよ。それに、仕事を溜めるのは嫌いです」
 もっともらしいことを言って書類を返して欲しいと手を差し出すが、サイラスは書類を渡そうとはしない。どころか、アシェルの背後に近づいてペンを手から抜き取ると、アシェルの車椅子を引いて机から離した。
「心配しなくても仕事はどんどんやってくるんだ。期日に余裕があるなら無理に残業する必要はない。身体を休めることも仕事の一つだ。今日はもう屋敷で休め。さっきノーウォルトの馬車が迎えに来ていると部下が言っていたからな。あんまり待たせるのも可哀想だろう」
 アシェルはあまり自覚していないが、誰が見てもアシェルの顔色は悪い。アシェルの足ともいえる車椅子を本人の意志に反して勝手に動かすのは失礼というのは勿論、危険という面でも決してしてはならないことではあるが、こうでもしないとアシェルは書類の前から離れようとはしないだろう。
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