煩わしきこの日常に悲観

さおしき

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第四章

第一話

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 …きてよ…や…
 きてよ?
 …やく…きて…
 やく?どういう意味だ?
 それにこの声…聞き覚えが…
 お願いだから………
 「起きて」
 その一声でスッと目が覚めた。
 「翔寝過ぎ。葉月さんまた怒るよ」
 「確かに…それで雫、今何話してた?」
 「次の依頼について。今回は2年の如月颯太郎そうたろうっていう先輩からの依頼で、依頼内容は」
 『『恋愛成就よ』』
 雫と葉月が同じタイミングでそう言った。被るか普通?しかも一言一句同じ。
 「そういうわけで、明日の昼休み開始から十五分経ったら教室に集合ね」
 「ちょっと待て、十五分は早すぎやしないか?」
 昼飯くらいゆっくり食わせろ。なんて声に出せたらなんと良いことか。
 「うっさいわね~。文句ばっか言ってないでちゃんとしなさいよ」
 葉月に5秒で返された。くっ……これが若さか……
 「じゃっ、そういうわけで今日は解散!」
 その言葉を皮切りに、俺たちは部室から立ち去った。

 そして次の日。俺たちは昼飯を済ませ、教室へ。
 「全員揃ったわね!早速行くわよ!」
 そう言って俺たち四人は2年の教室へ向かった。2年の教室は俺たちのひとつ下の階にあり、部室や生徒会室に比べると物凄く近くにあって移動が楽で助かった。
 「2年の教室に行くのは初なのかな?」
 彼方が、そう話題を振ってきた。
 「まぁな。雫は?」
 「私も。用事が無いからね、葉月さんは?」
 「私も初よ」
 なんて話しているうちに2年の如月颯太郎がいるクラスに着いた。呼び捨ては失礼だろうから、如月先輩って呼ぶか。
 「ひょっとして君たちSWC?」
 着くなり、とある2年生にいきなり声をかけられた。
 「そうだけどあんたは?」
 「いきなり悪かったな。俺は如月颯太郎。君たちに依頼したんだけど……」
 「依頼は把握しているわ!早速詳しい話が聞きたいんだけど」
 「それなんだけど、来てもらって悪いんだが放課後でいいか?」
 「別に構わないわ。それなら放課後に部室に来てちょうだい」
 「悪いね」
 「なら、私たちは帰るわ」
 そう言って葉月は帰っていく。俺たちはそれについて行き、教室へと帰っていった。
 
 そのまま何事もなく時間は放課後へ。
 「改めまして、2年7組の如月颯太郎だ。よろしくな」
 俺たちは部室で如月先輩から改めての自己紹介をされていた。
 「1年5組の嶋田葉月。残りは右から明坂翔、雨宮彼方、最上雫。こちらこそよろしく」
 葉月が俺たちをまとめて紹介した。
 「なら、早速依頼について話したいんだが」
 「構わないわ」
 「ありがとう。それで依頼についてなんだけど
、忘れもしない去年の夏課外の時……」
 そう言って色々と語りだした。あまりにも長いし余計な話が多かったので要約すると、去年の夏課外の時に数学のわからないところを教えてもらって、どうやらその姿に惚れたらしい。いかにもありきたりで長続きしない理由だった。ちなみに相手の名前は野中たむという名前で今年も同じクラスらしい。野中たむ?いや、まさかな……
 「それで、私たちは何をすれば?」
 雫がそう聞いた。
 「野中さんに俺のことどう思ってるか聞いてほしいんだ」
 成程。確かに、好きな人からどう思われてるかは気になるのは最もだ。
 「わかったわ。それでなんて聞けばいいかしら?下手に聞くと相手が察するだろうから」
 「確かに……何かいい案ある?」
 そう言われてもパッと出て来るはずもなく。第一、恋愛とは無縁の生活だからな。
 「彼方は何か無いのか?」
 「そう言われても恋愛なんてしたこと無いし……」
 「まずはその野中たむさんがどんな人か教えてもらえますか?」
 雫が如月先輩にそう尋ねた。やけに乗り気だな。って、毎回そうか。
 「とにかく優しい。後は成績も常に上位だし、学校での態度も先生に褒められるくらいだし、人当たりも良くて、見た目も可愛い。とりあえずこんな感じで良い?」
 「ありがとうございます」
 そう言って雫は真剣な表情で何か考え始めた。
 「とりあえず今日はそれを決めるって感じかな?」
 彼方がそう聞いた。
 「そうね。今日のノルマはそこね」
 そう言って、俺たちは野中先輩になんて尋ねるかを本格的に考え始めた。
 「考える前に思ったが、そもそも俺たちが聞く時点で怪しまれないか?」
 「確かにそうね。初対面の私達じゃ怪しすぎる」
 「如月先輩」
 「どうした?確か…明坂くん」
 「大したことじゃないんですけど、野中先輩の写真とかって持ってたりします?」
 「確か去年クラスで撮ったのがあったはずだけど、どうかしたの?」
 そう言って、如月先輩はスマホをいじり始める。
 「いや、少し確認したいことが……」
 「あった。これこれ。この写真の右端の」
 右端…やっぱり。まさかと思ったけど、そのまさかだった。
 「それで確認したいことは確認できた?」
 「はい。それで、この野中先輩というかたむ、俺のいとこです」
 「それホント?」
 全員が尋ねてきた。疑われる理由を教えてほしいけど。
 「嘘なんかついてどうするんだよ」
 「こんな美人と翔が?」
 失礼な。遺伝子ってのは残酷なもんなんだよ!
 「最上さん知ってた?」
 彼方が雫に聞く。
 「いや、初耳」
 「まぁ雫が知らないのも無理はない。雫と小さい時に何回か会ったことあるくらいだからな」
 「でも翔は親交はあるの?最上さんでさえそんなんだから」
 「確かに小学校の時は会う機会は無かったけど、中学生になってから会う機会が増えて、今に至るって感じ」
 つっても、高校が一緒なのは知らなかったけどな。
 「なら聞き手は翔に決定ね」
 唐突に葉月がそう告げる。
 「確かに、僕たちが聞くよりは全然怪しくないからね」
 確かに。彼方の言う通り、俺は面識があるからな。
 「後はなんて聞くか、ね」
 「それは簡単よ」
 間髪入れずに雫がそう告げた。
 「何か思いついたのか?」
 食い気味になって如月先輩がそう聞いた。
 「普通に翔が、『高校生活どう?勉強とか、彼氏とか』って聞いて、そこから深堀していく、その結果を私達に報告する」
 「それならなんとか行けそうね。なら早速明日からやるわよ!」
 葉月はそう強引に話をまとめてきた。
 「なら明日、昼休みに今日と同じ時間に集合、でいいかな?」
 そう聞いた如月先輩に対して
 「問題ないわ」
 葉月が手短に返した。
 そうして今日は解散となった。
 明日俺だけが大変な気がするけど……
 にしてもたむと面と向かって話すの久しぶりだな。この部活はいつも俺が大変だからな。
 今回ばかりはそうじゃないことを祈ってる。 
 
 
 
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