煩わしきこの日常に悲観

さおしき

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第一章

第三話

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 そんなこんなで始まってしまった部員集め(一人で)。幸い、同じクラスに知り合いがなんとかいたため、頼ることができた。
 「そういうわけで巻き込まれたんだよ。なんとかならないか?」
 俺は同じクラスの友人、雨宮彼方に相談した。
 「結構面白そうじゃん。良いな~翔、そんなことに巻き込まれて」
 「言いわけあるかよ。元はと言えばお前が変なこと言ったせいでこうなったんだぞ!」
 「そんなこと言われてもね~」
 そう、あのときコイツが部活でも作ればなんて言い出さなければ……
 「いいから!お前は強制な。責任取れよ」
 「責任取れだなんて……なんて大胆っ!」
 「やかましいわ!」
 「まぁまぁ。それより俺は構わないよ。部員になるの」
 「マジか……お前、こういうときだけは良いやつだよな…」
 「一言余計だよ」
 とりあえずこれで一人は確保だ。
 カナタガナカマニナッタ!テッテレー!
 さて、あと一人。これでもう頼れそうな人がいなくなってしまった。俺はいったいどうすれば……どうすれば!なんて嘆いていると思ってもいない救世主が現れた。
 「朝っぱらから何話してるの?」
 雫だった。入学式では新入生代表の挨拶を務め、才色兼備という言葉がふさわしいのだが唯一の欠点が俺の幼なじみであるということ。つまりは自分ではどうしようもないこと以外は完璧な奴である。
 「実はね~」
 そう言って彼方が事情を説明しだす。
 「成程ね」
 と囁き、雫は何か思慮深く考えている様子だった。
 すると、
 「わかった、私も部員になる」
 耳を疑った。言葉の意味を理解できなかった。
 「本気で言ってるのか?」
 慌てて俺は聞き返す。
 「本気よ」
 「本気と書いてマジ的な?」
 「本気と書いてマジよ」
 驚きが隠せなかった。なにせあの最上雫がだぞ!中学のときは常に学校トップの成績で、全国模試でも常にだいたい総合第6位で、幼稚園から中学校まで28回も告白されたあの雫がだぞ!しかも告白の件に関しては男子だけでなく女子からもされてたとか……でも付き合ってるとかは聞いたことがなく、その鉄壁な感じから鉄人2○号だなんて呼ばれてたあの雫が!
 「何はともあれ、良かったじゃん翔。部員集め。ミッションコンプリート、だね」
 良かった……のか?
 でも、もし何もせずに葉月に会うと大変なことになりそうだな…そう考えると良かったと言えるかもしれない。
 「それで部員って何をすれば良いの?」
 「………」
 「まさかわからないの?」
 「まさかってなんだよ、まさかって。俺だって巻き込まれてんだからさー」
 まったくだ。俺は当事者じゃなくて被害者サイドだっての。
 その時、俺を助けるかのように朝のホームルームの予鈴のチャイムが鳴った。
 「まぁなんだ……とりあえず、後で葉月に聞いとくよ」
 「おっけ。そしたら連絡してね」
 彼方の相槌の後、俺と雫は自分の席へと戻り、ホームルームの準備をした。
 
 ホームルーム終了後、俺の背中を叩くやつがいた。
 「部員集めの件、何か策は考えてきたの?」
 葉月は普通のトーンで俺に聞いてきた。
 ふふっ、俺の答えはもう決まっている……
 「もう終わった」
 そしてお前は『なんで!あの友達いなさそうな翔が!』と言う……ズギャァーーーン!
 自分で言ってて悲しくなってきた………
 「ふーん。意外とやるじゃない。見直したわ」
 何その上から目線。俺たちタメだろ……なのに見下すって…そりゃねーぜバカヤロー!
 てか自虐入ったジョ○ョネタで減りに減った俺の心のHPを返せ!
 「で、誰なの?その部員は?」
 俺のモノローグなんざお構いなしかよ……
 「一人はそこの席の雨宮彼方。俺の中学からの友人だ。そしてもう一人は最上雫」
 「最上雫って……入学式でスピーチしてた人であってる?」
 「そうだ」
 すると葉月は不思議そうに
 「てか翔知り合いなの?」
 「ただの幼なじみだよ」
 「意外ね、翔とそんな関係だったなんて」
 意外……だよな。俺だって未だに信じられない。
 「とりあえずこれで部員は揃ったわけね。早速今日の放課後に南館の二階のA教室にその二人を連れて集合ね」
 いきなりかよ……俺に平和は無いのか…憲法第9条は何処へ……
 そんな感傷に浸るところから、俺の授業は始まっていった。

 「それでどうなったの?」
 「何が」
 「部活だよ、ぶーかーつ。嶋田さんは何か言ってた?」
 昼休みは決まっていつも、彼方と一緒に裏庭で昼ごはんを食べている。そのため一緒に裏庭に向かっている途中だった。
 「放課後にA教室に来いってさ。まったく…人使いが荒いのなんの……」
 「A教室ってことは……まさか南館?」
 彼方は何か怯えたように聞いてきた。
 「なんだ?南館には何かあるのか?」
 「知らないの?この高校の七不思議」
 「いや」
 そう言って俺は否定の意を示す。
 七不思議?そんなものがこの現代に存在するなんてな……世の中変わったようで、案外変わってないもんなんだな…
 「それで七不思議って何があるんだ?」
 俺は彼方に問う。
 「聞いた話によると、1つ目は創設者の銅像が動き出す丑三つ時、2つ目がひとりでに鳴り出す音楽室のピアノ、3つ目が理科準備室の人体模型が動き出すはたまた丑三つ時、4つ目が本館一階の視聴覚室横のトイレの花子さん、5つ目が誰もいないはずの体育館から聞こえてくるボールのバウンドする音、6つ目がは午前4時44分に前に立つと吸い込まれてしまう踊り場の鏡、そして7つ目は段差が増えたり減ったりする階段」
 いかにも七不思議って感じのものばかりだった。どれもどこにもありそうなオリジナリティの無いつまらないものでしかない。
 が、俺は1つ疑問を覚えた。
 「南館は?南館にまつわる話が1個も出てないんだが」
 すると彼方は目を光らせて応えた。
 「そこなんだよ!さすが翔、話の粗探しは得意だね~」
 「馬鹿にしてんのか!」
 「冗談だよ、冗談」
 俺ってどんな奴って思われてんの?別にそこまで捻くれてる訳じゃないと思うんだが……
 「それで話の続きなんだけど、実はこの七不思議には8個目の話があるらしいんだよ!」
 「8個目?」
 そんな話をしていると裏庭に着いた。いつもは誰もいない裏庭だったが今日は珍しく先客がいて、そいつは少し意外な奴だった。


  

 
 
 
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