自殺専門店

みなみ尚志

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サイトには、死に方や道具など、自殺に関する話はあまり記載されていなかった。青空をバックにしたトップページの見出しには、「あなたの命に寄り添い、正面から受け止めましょう。」と、まるでカウンセラーのような文言である。
(情報が少ない)
そう思っていると、電話番号が記載されていることに気がついた。「電話対応、いつでも可能」時間に特に制限はなかった。優以は迷ったが、「お電話だけして頂いても問題なし」という言葉に、意を決して電話番号を入力した。3回目のコールの後にから 
「はい、こちらはあなたの命に寄り添い、正面から受け止めましょう、の店長の長谷川と申します。」と、穏やかで高すぎず、低すぎない程よく耳に入りやすい男性の声が聞こえた。しかし、
(店名にしては長すぎる)
トップページの見出しの文章がそのまま店名になっているようだった。それでも優以はその店をもう少し知りたくなった。もし、本物の自殺専門店というものが存在するなら、それにかけるのも良いかもしれない。
「初めまして、私は森沢優以です。中学3年生です。こちらのお店は自殺を取り扱っていますか? 私は本気で自殺を考えています。冷やかしなんかではありません。」
少し早口に言ってしまったが、店長の長谷川はそれでも穏やかに返答した。
「自己紹介とご連絡頂き、誠にありがとうございます。ご質問の回答でございますが、当店では、それを販売しております。もし少しでも気になることでしたら、ご足労おかけしますが、当店までいらしてみてはいかがでしょうか?」
優以はますます気になってきた。まだ少し怪しさはあるが、見に行くだけなら大丈夫だろう、怖くなれば全力で逃げよう。
「場所はサイトに書かれていませんでしたが……。」
「サイトに記載致しますと、悪戯や通報される可能性が高く、わたくしが困ってしまいますので。」
「誰にも言いませんので、住所を教えてもらって良いですか?」
かしこまりました、と長谷川は店の住所を教えた。思いの外、そんなに遠すぎることはなかった。バスを乗り換えれば辿り着く。優以が乗り換える駅やバス代を考えていると、唐突に声をかけられた。
「それはそうと、お客様。」
「はい?」
「商品でございますので、ある程度の金額はご用意して頂きたく存じます。当店には月曜日から日曜日、営業時間の7時から20時の間でしたらいつお越しになっても構いませんが、その際は、パスポートや運転免許証、住民基本台帳カードなど顔写真付きの身分証明書のご提示と、受け付け番号をお答え頂くシステムになっております。お客様の場合は学生様でいらっしゃいますので、学生証でも問題ありません。お顔とご氏名、受け付け番号さえ一致できればよろしゅうございますので、住所、生年月日、血液型などその他の情報は不要となりますので、ご安心下さいませ。
それと、やはり気が変わって行くのをやめる、という心境の変化でございましたら全く問題ございませんが、その際はお手数おかけしますが、電話などでご一報頂けると幸いでございます。」
「行きます。」
優以は決めた。チャンスは今しかないのではないか……。しかし、長谷川は続いて
「お買い上げの際には制服やスーツを着て頂き、実印もご用意して頂きます。」
なんだかしっかりした店だ
「買うときは、ですよね? 見るだけなら……。」
「普段着で結構でございます。実印も不要、でございます。」


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