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逃避

いつもの朝食

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 そんな生い立ちについてオーランと話しながら、ルシルは少し遅めの朝食を用意していた。

「おまたせしました。」

「わぁ~」

 目の前に置かれた朝食に、オーランは口の中の唾液をゴクリと飲み込んだようだった。

「ルシルさん、とっても美味しそうです!!!こ、こんなにたくさんいただいていいのですか?」

「いいわよ。みんな近所の人からいただいたものだけれど。さ、食べましょう」

 今日のメニューは、パン屋のマックさんが持ってきてくれた食パンのトースト、スクランブルエッグ、サラダ、以前作って保存していたベーコン、そして野菜たっぷりスープに先ほどオーランに教えながら入れたコーヒーだ。

「ルシルさん、美味しいです!」

 オーランは皿まで食べてしまいそうな勢いで食べていた。

「よかったわ。ごめんなさいね、私のわがままで・・・こんな下町で警護だなんて不便でしょ?」

 ブレンダンも、オーランも立ち振る舞いなどからきっといい所出の方なのだろと感じていた。それなのにも関わらず、こんな辺鄙なところへ派遣させてしまった。

 私が城へ帰ればすべての問題が解決するのだが、なかなか戻るという決意もここで暮らすという決意もできかねていた。

「大丈夫です!僕たちは野営して野宿だってします。それに比べたら、ルシルさんの美味しい料理も食べられますし、断然こっちの方が僕はいいです!」

 私の心配をよそに、オーランは元気よく答えた。

 確かに、エリストラ国は“今は”平和と言ってもいいくらい安定しているが、数年前までは隣国との争いが絶えない時代もあった。その度に兵士は駆り出され、駆り出された兵士は無傷のものも居たが、一方で多くの兵士が亡くなったと聞いた。

 その後に疫病が猛威をふるい、一部宗教では『隣国の呪いだ』と言っているものもいた。

 呪いであんなに多くの人を殺されてはたまったもんじゃないわ。

 そんなことを考えていたところで「ルシルさん。どうしたんですか?」とオーランが、私の箸が止まっているのを見て心配そうに声をかけて来た。

「なんでもないわ。少し考え事をしていて。」

「そうですか。きっとお疲れも溜まっていると思いますので、今日はゆっくりしてください。」

「そうね、そうするわ。しばらくカフェはお休みするつもりだから。」

 帰ってきたらすぐにカフェを再開しようと思っていたが、考えもまとまらず、ぼーっとしている今の状態ではやる気がおきなかった。

 家の中に埃も溜まってしまっているようだし、掃除をしたり、本を読んだりゆっくりしながら今後のことを考えようと思っていた。

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