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建国パーティー

黒曜石の瞳

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 陛下へ軽く挨拶をした後、私たちは再び人々に囲まれることになった。

 その多くは今まで独り身を貫いてきていたパトリックの婚約者に興味があるものが多いようだ。

 人があまりに多く集まってきたため、身動きがとれなくなる前にと、パトリック殿下は私の手を引いてダンスフロアへと連れ出した。

 え!!??こ、こ、ここってダンスフロアよ・・・

 私、まだまともに足元を見ずに踊れたためしがないんだけれど!

「パトリック様!私まだダンスを上手に踊れません」と必死に小声で訴えたがときはすでに遅かった。

 ほとんどパーティーで踊ることがない王子と全く知られていない婚約者のダンスは人々の目を引くには十分の材料であった。

 そんな中、曲が始まり嫌でも逃げ出せなくなった。

「大丈夫だ。必ずフォローするから任せてくれ」と殿下は耳元で落ち着かせるように言ってくれたが・・・

 耳元から顔を離したパトリック殿下は、私の腰を自分の方へと抱きよせ、私たちの距離がぐっと近くなった。ダンスの練習でも何度かこのように一緒に行ってきていたが、自分の足元を見るのに精一杯だった私は、初めてこの至近距離でパトリックの顔を見たような気がした。

 近くで見るパトリック殿下は黒曜石をはめ込んだような美しい黒の瞳に、天井から吊り下がっているシャンデリアのあかりが煌めいて星を散らしたかのような美しい陰影を落としていた。また、顔立ちは鼻筋がすらりと通っていて、女性が羨ましがるほどキメの細かい肌だった。

 あまりの美しい瞳に、釘付けになったことで自分の足元を見る余裕すら失い、自分が今まで教わったようにしっかりと踊れているかもわからない状態だったが・・・

周りから見ている人には、どんなに甘いスイーツよりも甘くしっとりとした時間に思え、そして私のドレスのスパンコールがシャンデリアの光に反射して殿下の瞳と同じように星を散らしたかのように美しく見えたようだった。

 私にとってはちゃんと踊れていたというよりも、パトリック殿下に引っ張られる形になっていたと思うが、今までにない一体感を感じ、初めてダンスが楽しいと思える時間になった。

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