エクストラ称号『たまごの御使い』を持つ薬師~魔王や聖女なんかにはなりません。どうぞ、後はお好きにしてください~

黒いきつね

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紫農奴になった私

今日も食堂へ行こう ② 食堂前にて

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 食堂に着くと、少し離れた場所に警備隊員達の指揮官らしき人を呼び寄せたオセリアさんが、その人に細かい指示を与えていた。

 その指揮官らしき人は、真剣にオセリアさんの話す指示を、返事をしながら聞いてる。

 2人の話を気にする警備隊員の大人達は、直立不動の姿勢のままで、全く動こうとしない。

 一糸乱れず隊列を組む様子は、何処かの騎士団じゃないかと勘違かんちがいしそうになる。

 普段の傍若無人ぼうじゃくぶじんな警備隊をよく知る私は、この部隊が同じ警備隊に所属しているのが、心底信じられなかった。
 
 ここに整列する隊員達からは、暴力的な気配も農奴を見下す視線も感じないから、余計に不思議に思ってしまう。

 いつも目にした不真面目な警備隊員の姿と、今の真面目な警備隊員達の余りのギャップに驚きを隠せない私は側にいるベスさんに直接理由を聞いてみた。

「ねえ、ベスさん、ここに居る皆さんって、幾ら何でも真面目過ぎませんか?」

「他の星からやって来たって説明された方が、まだ、納得出来る位に変ですよ」

「私、こんなに真面目に警備隊員がお仕事をするのを見たの、大農場に来てから初めて目にしたんだけど、さっきの説明を聞いても、やっぱ、それだけじゃ納得出来ないですって……多分だけど、何か他にも理由があるんじゃないですか?」

「まあ、シルアちゃんがそう思うのも無理はないわね。ここに居る全員、生真面目の集まりだもの。ここにいる人達は将来の騎士団創設を見据みすえて選んだ人員だからって理由もちゃんとあるんだけど、1番の理由は、ここにいる全員がオセリアに狂信的な忠誠ちゅうせいを誓った人達が集まって出来た部隊だってことかな」

「別名『オセリア親衛隊』って警備隊内ではうわさになってるわよ」

(なんか、如何いかにも危なそうで、お近づきに成りたく無い呼称こしょうだよ)

「オセリアって、ああ見えて警備隊内では結構人気あるんだから」
 
「へえ─、そうなんだ、オセリアさんって人気あるんだ。凄く意外だった。オセリアさんって怒りっぽくて無駄口を叩かない真面目な人って思ってたけど、警備隊じゃ、あんな硬い性格に需要があるんですね。警備隊の人達ってちょっと変わった性癖の人が多いんじゃないですか?」

『オセリア親衛隊』って噂される程に、オセリアさんの影響を強く受けた部隊だろうと予測はつく。
 何処となくオセリアさん色に染まったような気はしてたけど……。
 まさか、ここに居る全員がオセリア信者とは思わなかった。
(私もオセリアさんの訓練を受けたら、将来はあんな感じになるの?)
 あんな風になった私を想像したら、やっぱり超キモかった。
 嫌な想像を振り払おうと顔をブルンブルンと左右に振る。
(無理、無理、絶対無理だから!)
(あんな風には絶対成りたく無い)

 私の話を聞いたベスさんは、明るめの茶色の長い髪を左右に揺らしながら、柔らかい笑みを浮かべる。

「ふふふ、シルアちゃんはオセリアが苦手そうね」

 ご本人さんが、離れて近くにいないからって、つい思った事をそのまま口にしてしまったから、ベスさんにそう思われても仕方がない。

「苦手って感じじゃ無いですけど、ちょっと取っ付きにくそうかなって」

「まあ、その内そう気にしなく成るわよ。皆、初対面ではそう思うみたいよ。私もはそうだったし。でも、しばらく一緒にいたらオセリアの魅力もわかると思うわ。あの真面目なオセリアがオロオロしてる姿なんか見ると、結構可愛らしくて笑えるんだから」
 
「え─、堅物かたぶつにしか見えないオセリアさんがオロオロするの?その姿は見てみたいかも。ベスさん、どんな時にそうなるの?」

 オセリアさんの弱点が直ぐにも知りたい私は──。
 必殺、甘えちゃえモードを発動する。

「ねえ、ねえ、私にも教えてよ。早く、早く~」

 甘えちゃえモードはいかにキャピキャピしてお願いするかが勝負の分かれ目。
 我ながら、上手いキャピキャピ具合だと思う。
 これでベスさんもイチコロのはず。
 ベスさん、もう、知ってる事、全部話しちゃって。

「ふふふ、シルアちゃん、そんなキャラじゃないでしょ」

「やっぱ、駄目か~」

「話してあげてもいいんだけど、またの機会にしましょうか」

「え──」

 話したくて口元がウズウズしてる様子のベスさんだったけど……。
 オセリアさんのいる方をチラ見してから、ため息を吐く。

「ほらっオセリアがこっちに戻ってきたわ」

 その声で私もオセリアさんが帰ってくる方向へ顔を向けてみた。
 ベスさんの言う通り、離れた位置に居たオセリアがこっちに戻って来るよ。

「ゲッ、もう戻ってきた」

 そう、小さく呟く私。

「何だ、その言い草は。そんなに私が苦手か」
 
 少し離れた位置に居るオセリアさんは、私に声を掛けてきた。
 えっ今の聞かれたの?まだ、大分離れてるのに……。

「そ…そんな事無いって。お…お帰りなさい。オセリアさん」

 あわてて取りつくってみたけど……。

「バレバレの嘘を付いても今更遅いぞ。私は耳が良いんだ。2人の会話もしっかり聞こえたからな。後の訓練まで覚えておくから、訓練を楽しみにしておくんだな」

 やっぱ無理だった。

「そんな─」

 オセリアさんは命令内容を私にも教えてくれたけど、ここの食堂で、起床の鐘が鳴るまで順番に警備隊の人達も休憩するんだって。

 全員が一変に食堂に入るのは、お店と農奴達に迷惑を掛けるだろうから、2交代制で休憩して半分は食堂の出入り口付近で警備体勢を維持して、残りの半分は、他の食堂とここの食堂とに分けて朝食をとるように指示したと説明された。

 なので、私は警備隊の休憩タイムが終わるまで、ここの食堂にいなきゃいけないらしい。

 段取りを決めた私たちは、オセリアさん達が先に食堂に入って安全確保を確認して、その後から私とベスさんが食堂の中に入っていった。
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