神水使いですが、錬金術師として成り上がりたい

黒いきつね

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シフィの乱入①

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 ..バタ...バタ...バタ............
 ......バタ............バタ......
 ...バタ.........................
 ................................
 ................................


 ──あっ音が止まった。

 くっそ─気づいたか、バカのシフィ姉ちゃんなら、もうしばらく気づかずに、そのまま階段を下り続けてくれると思ってたのに、予想外だったよ。

 脳筋で頭を全て埋め尽くされたシフィ姉ちゃんなら、もう30分は走ってくれると予想してたのに。

 この工房に降りてくる階段は、私に敵意がある人物が通ると、敵意に反応して階段空間が伸びるんだよ。

 この技術は、私なりの女神の御力を解明して、泣けなしの軍資金おこずかいを投入して研究開発した擬似空間の技術を取り入れてあるから、敵意がある者の侵入は防ぐ作りになってるのだよ。

 フォッフォッフォッフォッフォ─

 今の所確かめていないから正確にはわからないけど、多分空間魔法を使えるものしか、罠を潜り抜けれないはずなんだよ。

 そんな高度な罠も、サラは楽々クリアしてしまったけどね。

 サラには、風呂場でどうやって、この罠をクリアしたかも一応聞いたんだよ。

 そしたら、忍者は進入時には無心でおこなうのが基本だそうで、敵意を向けたら相手側にばれるから、絶対にしないんだってさ─。

 その事実を聞かされた私は、やっぱりアホの子だと痛感させられ、その場でくらくらと力が抜けるように座り込んで、のの字を書いてしまうほど落ち込んだよ。

 でも、アホの種類は違うけど、同類のシフィ姉ちゃんなら、絶対に気づかないはず。

 ──さ─、どうする。脳筋きんにくんのシフィ姉ちゃん。

 いつものように、やり込めれてへこんでる私では、ないのだよ。ふふふ、ふふん。

 階段の方から、どでかい、かなり怒ったような、激しい剣幕の怒鳴り声が聞こえてくる。

「アヴィ、いるのは、わかってるんだ」
「大人しく、投降しろっ」
「そしたら、少しは手加減して殴ってやるから」

 甲高い声が鳴り響いて、この工房内にも、はっきり内容が聞き取れた。

 そりゃ─無理っCHU♡!!駄目っCHU♡!!問題外っCHU♡!!

 ウヒョ─なんてこったい!!有問題ヤウマンタイ!!

 ──もう殴られるの前提なんですけど.........。

 なんか私、立てこもり犯人みたいな扱いじゃないかな?

 あの空間は、上下両方の扉が開くと無効化され、通常空間に戻るんだよ。

 だから、こちら側からは、扉を絶対に開けられないだよね─。

「──シフィ姉ちゃん、どうしたのよ」
「部屋の中で精密錬成してるから、良く聞こえないよ」
「私、今はどうしても手が離せないから、アヴィ姉ちゃんが勝手に入ってきてよ」

 ..スタ..スタ..スタ...スタ...スタ(私の歩く足音).....。

 そう言い終わると、私は直ぐに部屋の中央にある大きな作業机に向かい、そばにある専用椅子に座る。

 .カチャン..キ──...ポイ..ベチャッ..キ─..カチャン!!...

 私が抱え込んでいた神獣のサラは、机の上に設置してある魔導水晶硝子ガラスで出来ている、丸くド─ム状におおわれた錬金機器『ホイクツルン』の中にポイッとほおりこんだ。

 この『ホイクツルン』は、大人が余裕で入るサイズで、中には魔素が充満している魔獣錬成用の錬金容器なんだ。

 サラは、錬金機器ホイクツルンの中で、ベチャッと大の字のような姿勢で倒れ込んだ。

「むきゅっアヴィちゃん、痛いよ─」
「私、まだ小さいから優しくしてよ」
「あっ御免ね、サラはその場で、包まって可愛らしく寝ててよ」
「今から、シフィ姉ちゃんにサラのこと、話すからそのままの姿勢でいてよ」
「神獣がいるって話すと多分、シフィ姉ちゃん、あのトラップ素通りできると思うんだ」
「シフィ様に部屋に進入されたら、多分アヴィちゃんに突撃してくるよ」
「大丈夫?止めたほうがいいと思うよ」
「大丈夫よ」
「サラ、貴女の為に作ったトラップが、この部屋にも敷き詰めてあるよ」
「シフィ姉ちゃんなら、私の期待通り引っかかってくれるよ」

 私がサラと言葉のやり取りをしていると、扉奥の階段通路からまた大きな怒鳴り声が、聞こえてくる。

 先程よりも、よりはっきり、鮮明に聞こえるくらいの大音量だ。

「アヴィ、出てこないと魔導機関銃で扉を叩き壊すけど、いいのか」
「早く投降しろっ」
「もう少しだけ、待ってやる」

 ふんだっそんなボロい豆鉄砲に壊されるような、柔い作りはしてないよ。

 でも、あんまり怒らせると、後が酷いから何とか休戦まで持っていくよ。

 さあ、頑張れ、私!!可愛い、私!!イケてる、私!!

 そうれ!!みんなで、キャピってGO!!GO!!

 ──ありゃっありゃりゃ、そうだった。また、また、忘れてたよ。

 自分で作っておいて、今一番必要な機能を使っていなかったよ。

 私は、自分が座っている机を両手で軽く叩くと、机の叩いた部分から可愛らしくデコレ─ションされた魔導キ─ボ─ドが浮かび上がる。

 それと一緒に机から同じく可愛らしくデコレ─ションされた魔導水晶画像機器『ウツルンルン』が自動で出てきた。

 私は魔導キ─ボ─ドを素早く打ち込んで、魔導画像機器ウツルンルンの画面に表示された命令文を更新していく。

 すると、工房側と階段通路側、両部屋の両天井から同時に小さな魔導球状の魔導浮遊型映像投影機器『スケスケ助サン』が凡そ各部屋20機程投下された。

 投下された魔導機器スケスケ助さんは、空中浮遊移動しながら、2つの隊列に分かれて陣形を整えていく。

 1つの隊列は、その部屋にいる人物を離れて取り囲むように陣形が整えられる。

 もう1つの隊列は、その部屋にいる人物の正面に四角柱の各長点にくるように、陣形が整えられる。
 全ての陣形が整えられると、魔導機器スケスケ助さんがミラ─ボ─ルのように輝きだす。

 全ての魔導機器スケスケ助さんが輝くと、四角柱の各長点に囲まれた空間に、映像が投影され始める。

 工房側では、シフィの姿が、階段廊下側では、私の姿が四次元映像で透けて投影された。

 よ─し、これで扉を開けなくても、シフィと言葉のやり取りができちゃうんだよね─。

 私は、四次元映像に投影されているシフィ姉ちゃんをよく観察していく。

 ──うわ─めちゃめちゃしかめっ面なんですけど.........。

 ──ていうか、両目が本当に光っているんですけど.........。

 ──髪の毛がゆらゆらと光を放ちながら、揺らめいているんですけど.........。

 ──なんでか知んないけど、完全武装なんですけど.........。

 ──装備が充実しすぎなんですけど.........。

 ──シフィ姉ちゃんの身体から、魔素が湯気のように立ち上る映像が映っているんですけど.........。

 ──私、殺されるのかな?──私、蜂の巣にされるのかな?

 取り敢えず、良かった─。罠設置しておいて、私グッジョブ!!

 サラ用の罠に助けられたよ。サラにも感謝しなきゃね。

 もっと、よく観察して、どうして怒っているのか、映像から少しでも情報を仕入れるんだよ。

 その、シフィ姉ちゃんの姿は、ラス姉さんと同じく金髪のサラサラ髪質で、長い髪を後ろで束ねてポニ─テ─ルをしている。

 顔立ちもラス姉さんを幼くした感じで、私とは顔かたちは全然似ていなく、私とはタイプが違うかなりの美形さんなのだが、映像では目と眉が釣り上がり、般若のお面が装備されているように見えていた。

 服装は、学校の制服ではなく、魔獣の薄皮を素材にした灰色戦闘用魔導剣士服の上に、魔獣の甲羅を素材にした、黒色戦闘用魔導軽甲冑を付けていた。

 武器は腰には魔導剣を2本、肩にも2本、両手には散弾型魔導機関銃を各1本もっていた。

 今はその魔導銃を床に打ち付けて、平常心を保とうとしているように見える。

 背丈は、私より頭1個分ほど大きいけど、あの部分は私と同じくぺったんこのままだ。

 つまりは同類のお仲間のはずなんだけど、今日の怒りぐわいは、なんでだろう?

 やっぱり、映像だけではわからないから、こちらから話しかけて訳を聞こう。

「ねえ、シフィ姉ちゃん、──今日学校行ってたはずだよね」
「──間違えて、戦場に行っていたわけじゃないよね」
「どうしたのよ。その格好.....もしかして、私を殺して食べるつもり」
「うちの家は裕福だから、そこまでしないでも楽に食べていけるのに........」
「もしかして、そこまでお馬鹿病が進行してしまったの?」
「そんな─シフィ姉ちゃん」
「私より先にお馬鹿病でいっちゃうなんて、早すぎるよ─」
「「うるさ──────い」」
「「アヴィ、あんたの所為せいで学校で大恥かいたのよ」」
「「早く、私に殺されなさい」」

 ウッヒョ───!!。
 殺す気満々!!満子ちゃんだったよ───!!
 満太郎ちゃんと、満次郎くんも後ろに並んでる!!
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