輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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妖精界の騒乱

18話 海中トンネルに到着

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 「言われてみれば、生きてきた時間で年齢が決まるっていうアースの方が不自然な気がするな」

 「アースでは年をとってもお子様な人もいれば、若くても大人みたいな人もいるもんね。アースに居た時、そういうギャップはよく感じてたよね」
 母さんが、落ち葉を踏み、目の前に伸びる道を歩きつつ同意する。

 雷公セトを退けた後、森の中を歩きながら、さっきの話の続きを僕達はしていた。

 周囲の木はだいだい色、朱色、黄色、少量の緑が含まれた光沢のある葉っぱをつけている。アースでは見られない美しい色彩だ。森全体的にはオレンジっぽい色彩に見える。

 「はい、様々な精神年齢の人が同時に存在できる仮相界《かそうかい》ならではのギャップだと思いますっ。真相界においては、おおよそですが精神年齢はその世界の全ての人間で一致します。
 ちなみに、精神年齢を心格って言葉で表現する人もいますね。私は好きじゃないですけど.....」
 
 「小学校で同じぐらいの年齢の子が一クラスにまとめられるのと似た感じなのかな。」
 アース滞在歴の一番長い母さんに話を振ってみた。

 「でも、同じ年齢でも色んな子がいたわね。乱暴な子もいたし、大人しい子もいたし、陽気な子もいた。」

 「メルシアもそれと同じだと思います。精神年齢としてはみんな近い水準なのですが、個性によって様々な人間がいますっ。それでも全体的には、メルシアは愛と知性に目覚めた人達が集まる世界です。」

 「そうか。メルシアに来てから殺伐とした人間をまだ観たことがないもんな。お互いを認め合って楽しんで暮らしてる感じがした。まあ、エルモンテスしかまだ観たことないからよく分からないけど。」

 しかし、さっきの雷公らいこうセトといい、カツマラアといい、愛の世界であるメルシアに騒乱を引き起こしていっている。精神年齢に合わせ住み分けが行われていると言う真相界に、何か異変が起こっているのだろうか?

 そうやって話している内に、森を抜け.....



 目の前には美しい浜辺があった。大陸の最西端まで来たのだ。
 青、水色、黄色、紫などの色彩が煌めく海もさる事ながら、浜辺の砂も美しい。
 砂は基本的には真っ白で、ちらほらルビーやエメラルド、サファイアの色で輝く砂粒が入り交じっている。

 母さんは、キャー!!と言いながら波打ち際まで駆けていき、はしゃいでいる。
 美少女がエメラルド黄色の美しい髪を揺らしながら浜辺で遊んでいる。
 絵的にはグッと来る感じなのだが、あれ.....母親だからな。
 まあ、実体はそうじゃないのかもしれないけど。
 
 

 しかし、海中トンネルはどこだろう?
 
 「海中トンネルの入り口に到着しましたっ!そこが入り口です」
 ニルバナさんはパタパタとその辺りまで飛んでいき、何やら円形の台のようなものを指さしている。
 
 その台は古代ローマの建造物っぽいデザインで、幅は10mほどもある。
 周囲が数段ほどの階段で囲まれていた。
 何やら中央に大きく丸い線が引かれている。

 僕が台に上がって観察していると、母さんも見に来た。

 「ここが海中トンネルの入り口なの?何も無いように見えるけど...」

 「ふふっ、そう見えますよね。では、みなさん、行きますよーっ!」
 突然、丸い線が引かれた地面に魔法陣が浮き上がり、下がりはじめた。

 エレベーター式だったのか!

 ニルバナさんは羽を止めてスタッと地面に降りた。
 エレベーターはどんどん下がり、上を見上げると、さっきまで居た地上が遠くなっているのが分かる。上に見える空が映る穴は小さくなっていき.....

 ガタンッ。

 停止した。

 底まで到達したらしい。
 そして、目の前には洋風の大きな扉がある。
 隣で母さんは「海中トンネル....わくわく...わくわく。」と嬉しそうに呟いている。

 ニルバナさんが扉を開けた。
 
 そこには、トンネルとは思えないような広大な空間が広がり、ずっと先まで続いている。
 壁や天井の素材は何か知らないが透明のアクリルのようなものであり、美しい海の中を自由に見渡す事ができた。
 深い海の底なのに明るく、なぜか光が差し込んでいる。
 海を観ると、フグに白い毛が生えマルチーズみたいにフサフサしたゆるキャラ?
 全身に宝石の鱗をはめ込んだようなキラキラしたイルカ?
 などなど、観たことの無い生物が泳いでいた。

 全体的に、だいぶ可愛くて綺麗な生物が多いようだ。

 母さんが、「か、かわいい....」と荒い息遣いでハァハァしてる。
 
 「この海中トンネルはミストラス大陸とカールストン大陸を繋いでいます。
 エルモンテスがあったのはカールストン大陸で、私の住む妖精界があるのがミストラス大陸です。大陸間はかなり距離がありますので、この乗り物を使っていきますっ」
 ニルバナさんはドア付近にある、座席の付いている大きな透明の箱のようなものを指さした。
 車輪の無い大型車といえば分かりやすいだろうか?
 ただし、ルーフは無い。

 「へー、こんな乗り物がメルシアにはあるんだな」
 「この乗り物はビクシーと言います。さあ、みなさん、出発しましょう!」
 ニルバナさんは急いでいる。故郷のピンチだもんな。無理もない。

 マルチーズフグに萌えていた母さんが慌てて乗り込み、席に座る。

 「では、出発!!」

 ニルバナさんがそう言うと、ビクシーは浮かび上がり発進する....
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