輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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異世界探索の始まり

8話 大魔神の襲撃

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 エルモンテスは、街全体が華やかなオレンジの印象である。屋根の色も様々な暖色で占められているが、全体的にオレンジでまとまっている。

 そして、何というか、街全体からオレンジの光の粒子が大気中に発散されているように見える。

 とにかく活気があり、あちらこちらで笑い声が聴こえてくるな。

 街の全体的な大きさは関東にあったネズミの国一個分といった所だろうか。

 博物館みたいな建物の前を通り過ぎた、その時、

「ルーティア、おかえり!会えなくて寂しかったよ」

 おっ、母さんがにこやかな筋肉質のおじさんに話しかけられた。

「たっだいまー!私も会いたかったよー」
 と筋肉質のおじさんと母さんは欧米でやるようなハグをした。

 何か父と娘、親子の再会みたいになってるけど、どういうことなんだ?
 あ、筋肉おじさんこっち見た!

 目を見開いてる....しかも、何かごくりと喉をならした。
 一体何なんだ。僕の顔にビールでも張り付いてるのか。

「ずっと話してたルーティアの息子かい?想像以上に....
 じゃあ、またな!!」
 筋肉おじさんはにこやかに去っていった。

 おいっ!?想像以上に....何なんだ!

「あのおじさんとは久しぶりに会ったのかい?」
 と、僕は頭を掻きながら言った。

「いえ?めぐ君を迎えにいく前さっきにも噴水広場で、先日放送された映画の話をしてたばっかりだったけど?」
 と、母さんはにこにこ自分の頬っぺたを片手でつつきながら言った。
 ああそうですか。。。。

 ん?放送された??

「この世界でもテレビみたいなものがあるの?」

「うん、あるよ。見たければどこでも目の前に画面を出せる。ほら」
 母さんの前に液晶のパネルだけが現れたみたいに映像が投影された。

 その画面にはニュースを伝える美しいアナウンサーが映っている。なになに。”転生案内人になるための条件が厳しく”..........あ、画面が無くなった。

「めぐ君ならやろうと思えばできるよ。くわぁっ!ってイメージの中でテレビ画面をつけるの」
 と、母さんは無邪気な笑顔で言った。

 まあ、僕はテレビ見ないからなぁ。元居た世界でも家にテレビは置いてなかった。
「そうなんだ。今度やってみるよ」
 やるか分からないけども。

 あれ?そういえば....

「テレビ出てきた時に魔法陣が出なかったけど、これって魔法じゃないの?」

「うん、魔法じゃないよ。自分の意志を世界に新しく反映したい時に使うのが魔法で、その時には魔法陣が出るんだけど、どこでもテレビは世界に含まれている既存のものなの。
 だから、魔法陣は出ないみたい。」

 そう考えると、魔法って世界に存在しないものを取り入れるってことなのだろうか??

 ローブの輩が魔法陣から火球を飛ばしてきたのも、あの火球ってどこから生まれたんだろう。
 あと、魔法を使った自覚は無いが、僕の時も魔法陣が出なかったのはどういう意味があるのだろうか?

 まあ、いいか。人生は謎があるからおもしろい。

「この町の人は陽気だけど寂しがりやだからテレビは広場で集まって観る事が多いかなっ!」
 母さんは心底しんそこ愉快そうである。

 なんだその昭和の大家族みたいな感じ。
 一人っ子だったから特に羨ましい。

「楽しそうだね.....ん?」

 ふと、隣にある建物の鏡張りの壁で、母さんの隣に映った人間を観る。
 筋肉おじさん同様、目を見開き、喉をごくりとならす。


 そこには、どこの神話から出てきた!?と思うような美男子がいる。

 観る者を飲み込むような圧力のある紅蓮ぐれんの髪色、髪型は前髪が眉にかかるぐらいで真後ろの髪だけが肩に少しかかるぐらいの長さ、顔は中性的だが、どこか危険な雰囲気をさせる顔つきをしている。

 服装はくびれのあるトレンチコートのような形状で左右にスリットが入っている。そして、白いズボンを履いていた。コートっぽい服のデザインは、光沢のあるパール色で所々にルビーのような輝く色で刺繍ししゅうが入っている。
 えっ自分の服装に今気が付いたのかって?そうだYO!元居た世界でも僕は自分の服装に関心が無かったからな。

 ここまでの美男子になってたのは驚いたけど、なぜか、少し危険な顔つきをしているのが謎である。
 中身が争いごとが嫌いな人間なのだから、外見にそれが現れるのが自然だ。この世界なら尚更そうなんだと思う。

 紅蓮の髪色にしても、美しいが、どこか観る人間を威圧するような圧力を感じる。


 と........考えにふけってたら、街中まちなかにある噴水広場で音楽が流れだした。

 よく見ると演奏者達が広場の隅にいる。
 バイオリン、ドラム、ラッパ、ハープのような様々な楽器を持つ人達がいた。

 演奏が始まると同時に、オーロラのような光の布?みたいなものが演奏者の楽器から湧き出すように現れ、辺りを漂いだした。
 赤や黄色、紫、青、様々な色がある。

「わっ、母さん、これなに??」
 って、思わず、辺りを漂う光の布を指でつつきながら聴いた。
 光の布はつついた部分の光がゆっくり発散して周囲に溶け込んでいる。

「この世界の音楽には実際の形があるの。元居た世界は仮相界かそうかいだから無かっただけで、あらゆるものが実体を持つのがこの世界なんだ。............まあ、私も教えてもらっただけなんだけどね」
 と、てへぺろのようなポーズをした。外見が美少女風になったから色々ポーズを練習したのだろうか?

 

 僕たちは群衆にまじって音楽を聴くことにした。
 どの楽器一つとっても元居た世界よりも音色が美しいな。演奏自体も、何というか異常に感情を揺さぶられる。音楽と精神が同化しているような感じがするのだ。

 ん?

 ゆったりした曲からテンポの速い曲になってきた。

 おっと、何だかゲームのボス戦みたいな曲になってきたぞ!
 穏和なわりに昔からボス戦っぽい曲は大好物である。


 『ドガーン!!ズガガガァッ!!!』

 突然、演奏者達の後方から爆発音と煙が上がった。

 音楽が実体を持つって爆発音とか煙まで出るのかな?何かボス戦みたいな曲だったし。

 周りの人達が慌てだした。おや、何か様子がおかしい。
 ぼーっと周囲を見渡していると、正面の建物の屋根を巨大な手が掴んだ。

「それ」は掴んだ屋根を支えにして崩しつつ、ゆっくりと立ち上がると、上半身が姿を現した。

 身長約20mの大魔神といった風貌である。いかにも狂暴そうな牙の生えた口、人間ほどの大きさのある眼、ゴツゴツした兜と青黒い鎧をつけていた。


 僕は恐怖で固まり、母さんも隣で青ざめている。

 大魔神は腕を振り上げると.....................握りしめた拳を群衆が逃げ回る場所へと叩きつけ、地面は土の飛沫しぶきを上げて爆砕された。

 衝撃で吹き飛ぶ人々。
 潰された人もいるかもしれない。

 その惨状を見て、自分の中にあった恐怖を塗りつぶすように、怒りの感情が出現してきた。
 さっきまで幸せそうだった人々。母さんみたいにテレビの話題でお互い笑いあっていた人々。
 その人達の幸福が一方的に蹂躙されている。

 が自身の感情に戸惑っていると、住民の中から大魔神に反撃しようとする人間が現れた。
 さっきの筋肉おじさんだ。にこにこしていた顔と違い、今の顔つきは怒れる戦士である。

 おじさんが軽く片手を上げると、彼の上に魔法陣が現れ輝く斧が出現した。

 斧を受け取ると同時に、もう片手を胸へと手をかざした。すると、体全体に巻き付く魔法陣のような線が一瞬光った。

 そして、すぐさま跳躍し弾丸のようなスピードで大魔神の首元を狙い、斧を横に払い..........直撃した。直後、轟音を立てて爆発する!その爆風による圧力はこちらまで届き、頬を熱風がかすめていった。

 あの斧は切りつけると爆発を起こす魔法でもかけられていたのかもしれない。黒い煙が立ち込めて大魔神もおじさんもどのような状態か伺うことができない。

 おじさん大丈夫か!?

 黒い煙の中からおじさんが後方へ飛ぶように飛び出してきた。
 おじさんの周囲には煙が届いてないことから何らかの魔法障壁を張っていたのかもしれない。
 2つ目の魔法陣はそれだったのか。
 相手の攻撃から身を守りながらも、爆発ダメージを相手だけに負わせるために...。
 俺は筋肉おじさんの強さに唖然とした。

 しかし、次の瞬間。
 黒い煙から大魔神の拳がフル加速のトラックのように突き出し、魔法障壁ごとおじさんを叩き落とした。
 ズガァーン!!という轟音を響かせながら、僕と母さんの隣の地面へと突っ込んだ。
 砕けた地面におじさんがめりこんでいた。
 苦痛に「うぐぁああ..........」とうめき声をあげる、さっきまでにこにこしていたおじさん。

 大魔神は傷一つ負っていない。


 そして.............え...?巨大な眼は母さんを凝視し、大魔神は破壊的な拳を繰り出そうとしている。
 母さんは状況が飲み込めず目を見開いている。

「母さん!!」と叫んだその瞬間、俺の脳裏に母さんを体で弾き飛ばし庇うイメージが浮かんだ。その瞬間には、すでに母さんを体で弾き飛ばし.............

 轟音を唸らせながら飛んでくる巨大な拳を全身で食らっていた。

 俺は吹き飛ばされ後方の大きな屋敷に激突し、壁を突き破り、木材や石などが体に当たる感覚が体内に怒涛に押し寄せた。顔を上に向けて瓦礫の中に倒れたため広間に設置してあるシャンデリアが見える。
 外から、母さんの「めぐ君!!!!」という悲鳴のような叫び声が聴こえる。

 それと同時に、俺の脳裏には、目を見開いて固まっている母さんの姿・筋肉おじさんの呻き声をあげる姿が思い起こされていた。

「.............このクソ野郎........殺してやる」
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