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第一升 ※誤字はわざとde・・・
2.食べさせてみた。
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お好み焼きMie。
開店時間はおおよそ午前11時、閉店時間は大体24時。
本当は23時あたりで締めたいのだが、ぱちんこ帰りの常連や、
すぐ近くの、今や世界にまで拡まった、O県地場産業のレストランの支店長さんが晩御飯を食べながら『おちゅかれ』ビールを飲んだりやって来るので、結局午前様になってしまう。
いつも2時過ぎ迄には家に帰っておネムの時間だ。
大体朝7時には起き、軽く柔軟、それから一駅分M駅からS駅までジョギング。
そのあと部屋に置いてあるトレーニング機器で汗をかき、仕上げに自重トレーニングで体幹を鍛えている。
運動神経も普通だが、常日頃鍛えているので同世代よりも体のキレがちがう。
最近試してないのが、腰の動きもまんざらではないと思う。
多分・・・。
風呂に入り、九時過ぎには店にと向かっている。
店の前で鍵を開けようとズボンに手を突っ込むときに声を掛けられる。
「このお店の方ですか?」
「そうですが・・・なんでしょうか?」
鍵を出してドアのカギ穴に挿す。
「昨日この付近で奇怪病患者の事件がありまして、ちょっと回ってるんですが。」
声を掛けてきた方を見ると、それぞれ男女の私服警官は手帳を見せる。
宗重は手帳を注視する。
「店の準備もあるので、入って貰っても良いですか?お話は伺います。」
宗重は店の扉を開けて入っていく。
警察官の二人もその後に続く。
入ってすぐにはレジ。そして左と右に通路があり、右通路の右壁に4席。
開け閉めできる窓が並び、店の外を見ることが出来る。
店裏の駐車場に続く道路が見て取れる。
中央は真ん中に仕切りを入れてテーブルの3席づつ。
左の通路の左壁は御座敷が3席ある。
左の通路を通りすぎて真っ直ぐ向かうと調理場だ。
その調理場からすぐのテーブル席に警察官に座ってもらう。
素早くお冷を、氷入りで出す。
宗重は厨房の鉄板に火を入れる。
「朝食はいつもここで食べるんですが、良かったらどうですか?」
「え?あ、いや私たちは職務中なので。」
「固いのはおとこの・・・いあ、きにするな光代」
宗重はそういって少し微笑む。
光代と言われた女性警察官は宗重を二度見する。
「む、宗ちゃん?」
「なんだ、仕事のし過ぎでこんなイケメンを忘れたのか?」
「じ、じぶんでいうなし!」
思わず地元の方言が出て手に口を持っていく光代。
「せ、先輩、お知り合いですか?」
「え、ええ。学生時代のお友達よ。」
「曲がったことが嫌いなお前らしい。オマワリサンになったんだな。」
「その言い方はやめて、警察官よ、け・い・さ・つ・か・ん!」
珍しく感情をあらわにする光代に後輩警察官も驚きを隠せない。
「鈴木さん、光代とは男と女という間柄だ」
宗重は後輩警察官の名字を呼び、またニヤニヤしながら言う。
「ちょ、誤解を招く言い方はやめて!あなたは男で私は女、そう言う意味で有って肉体関係はないから!!」
光代は後輩の鈴木にまくしたてる。後輩は別にどうでもいいが、慌てる光代にやや困惑している。
「あらぁ、お店が開く前からぁ、にぎやかですねぇ♪」
開いたままの店の入り口からおっぱい、もとい雪絵が入ってくる。
「雪絵ちゃんおはよう。朝ごはんは?」
「まだですぅ。てんちょぅつくってくれるんでしょぉ?」
「ああ、熱くて太いのと、トロトロで甘いのどっちがいい?」
「あつくてふとぉいのがいいです♬」
雪絵がにっこり笑って宗重に言う、はたから聞けば何の話だろうか?
雪絵は上着を脱ぐとそのまま制服だ。
白いシャツに目立つ黒系のブラ。スカートは膝上。
この店の制服だが、シャツが薄い気がする・・・。
「そんなにみるな光代。そんなに見てもお前にその胸が宿ることはない。」
「わぁかってるわよ!やけに薄い白シャツだからきになっただけよ!」
「あぁ、やっぱり少し透けてますぅ?店長がぁ。『雪絵ちゃんは黒とか紺系の下着でたまに赤系でこおふんさせてw』とかいうからぁ。シャツも私だけすこしぃうすいんです。」
「ちょ、職権乱用!
雪絵さん訴えなさい、あんな英狼おや「えぇ、でもじきゅう上げてくれてるしぃ、ぎぶあんどていくですょお?」
話しながら雪絵は鈴木側の席に座ろうとする。
自覚がないが雪絵は胸をせり出すように席に入ろうとするので、座っている鈴木の目の前に胸が迫る。
あわてて光代の手ぶりで鈴木は横に移動。
「さて、雪絵ちゃん『熱くて、太いの』だ」
いつの間にか保温状態の鉄板。油を一度引き、ヘラでふき取り、雪絵の前に大きなだし巻き卵が現れる。
次いでご飯とお味噌汁。
「光代と鈴木さんは『とおろぉとぉろぉでぇ♬あまいのぉw』だ。」
「ちょっと言い方!」
光代の突っ込みに、完全スルーの宗重。二人の目の前にはオムレツのような卵がドンと。
鈴木の前のオムレツには「後背」、光代の前のオムレツには「絶壁」と書かれている。
次いで厚切りのパンと牛乳。
「おごりだ。朝飯もロクに摂らずに仕事してるんだろ?化粧で隠しても俺にはわかるぞ。」
文句を言おうとする光代に宗重はぬるめのホットミルクとオレンジジュースを。
「野菜不足で少し浮腫みが有る鈴木さんにはこれだ」
鈴木にはグリーンスムージーとオレンジジュースをそれぞれ小さいコップで併せて一杯分程度だす。
「昔っから目ざといのと人の名前は一発で覚えるのは変わってないわね!!いただきます!」
「一発とかはしたないぞ光代。ストレスで溜まってるのはわかるが、俺にはその絶壁を朝まで愛で続けるほど熱意はNa「それはいいから!昨日この店の裏手で、この店のフランチャイズの大元の重役さんが襲われたのよ、何か知らない?」
渡されたナイフとフォークでオムレツを切ると、プルプルの中身がドロッとあふれてくる。
パンに添えられたバターもなんか良い香りを発している。
手で厚切りトーストをちぎると、外はさっくり、中はしっとりで、バターを付けて食べると食感とバターのうまみが口の中に広がる。
オムレツも甘めにつくられ、少し塩気のあるバターと相性が良い。
だし巻き卵も雪絵がお箸で切れ目を入れると、中の卵と出しの汁が少しあふれている。少しづつお箸で切ってそのまま食べている。
光代の視線に気づいた雪絵は、宗重から渡された小さいヘラで食べ始めていない逆の方から一切れ切り分けた出し巻き卵を、光代のオムレツの横にそえる。
その後鈴木にもだ。
「ほしがりさんのおめめをしてたのでぇ、よかったらどぉぞぉw」
雪絵の甘ったるい言い方が違う意味合いに聞こえてしまうが、ここで喰いついてはだめだ、と光代は感じていた。
宗重はまえからコンナやつだが、この雪絵という巨乳も大概だ。
「ありがとうございます♪」
普通に光代は返し、一口パクリ。
あ、あついぃwしかもうちのめっちゃすきな明太マヨwwwww
口に含んで一口で絶妙な明太の辛味、それを、たまごの中で熱されたマヨの旨味がつつんで、一粒一粒が張りを増している。
そしてそれに合わせるように濃すぎない優しいお出汁・・・。
恍惚な表情の光代。そして宗重の食のこだわりと片鱗を思い出していた。
昔学校の林間学校で宗重の担当するカレーに行列ができたことを思い出していた。
彼が持ってきた香りの強いスパイスと、前の日から仕込んできた亜麻色の玉ねぎとニンニクのベースを独断で挿入して出来たカレーは、料理をまだそれほどしたことのない、未成年の子供の間では、抜群においしくて、あのあと何回かおねだりした生徒もいたくらいだ。
光代もそんな生徒の一人だった。
「店を閉める頃にパトカーが来たのはわかったが?」
「わたしもぉ、おみせを、おかたずけしてましたぁのでわかんないですぅ」
***
「お、おいしかったわ。それに、飲んだ事の無いオレンジジュースも!」
「オリジナルブレンドだ。アレは効くぞ。クマも薄くなるぞ。」
「ありがとうございます、結局パンも何度もおかわりしちゃって・・・」
「バターも手作りで、パンも玄米多めで食物繊維あるから、通じがよくなるかもだよ。
ジャムも気に入って貰えてよかったよ。しっかり野菜も食べないと、内臓からヤラレるよ、鈴木さん。」
すっかりご馳走になった警官二人。
帰る足取りも心なしか軽くなった気がしないでもない。
店の扉をしめて営業中の電光掲示板がともる。
すると勢いよく店のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませぇ♪」
「お客のあいさつも素早くてさすがは高利益をたたき出す支店ね、実に素晴らしいわ。おはようございます、店長はいらっしゃるかしら?」
白系のジャケットと膝上のスカート、細い紺系の縦線の入ったシャツを着た、小綺麗な女性が入ってくる。
長い髪もお団子状で後頭部の上でまとめ、センスの良い知的な黒メガネだ。
宗重的には細いフレームの赤眼鏡で、俗な女教師物でもう少し胸元は開いてほしいといった処である。
「はぁぃ、ちょっとおまちくださぁい」
雪絵はアイコンタクトで宗重に。
「店長は不在です。店長候補の自分が御用件伺いますが。」
先程まで光代と鈴木達がいたところに白スーツ黒メガネを案内する。
座る前に白スーツ黒メガネが名刺を取り出す。
「ビゼングループ、龍造寺コーポレーション、O県地区の担当になりました、エリアマネージャーの龍造寺千鶴といいます」
「Mie店、店長候補でバイトの烏羽宗重といいます。彼女はパートの森竹雪絵さんです。そういえばさっきまで絶壁と後背位・・・もとい刑事さんがきていたんですが、もしかして・・・」
「そ、そうよ。襲われたのは私です。連れの人達は入院したりで、開店前に話したかったのですが、時間を押してしまって」
「いえいえ、昨日の今日でご苦労様です。朝はまだなんじゃないですか?」
「いえ、後で軽くすませるの『ぐうううううううっ』」
「すごくぅおっきぃwおなかなっちゃいましたよぉ?」
雪絵の言葉で耳まで真っ赤にする千鶴。
「良かったら。」
鉄板の上にオムレツを乗せ、厚切りトーストが一枚。手作りバターとジャムが付いてくる。
ぬるめのホットミルクだ。
「あ、ありがとう。」
「いえ。」
お冷も置かれ、千鶴はお冷を一息にのむ。
柑橘系の香りと、ほどよい酸味のあるお冷。
暑苦しい朝の熱気と湿気のある初夏にはもってこいのすがすがしさだ。
ホットミルクも人肌よりややぬるめだがその温度が飲みやすく、甘い。
置かれてあるナイフとフォークでオムレツを・・・
オムレツの上にケチャップで・・・・
逆三角形のマーク。縦線が数本・・・。
「ケ、警察の方なにかおしゃってマシタカァ?」
「お店の重役さんが襲われたので、その時間の聞き込みの様でしたが、なにか?」
「い、いえ・・・。」
手早く食べ終え、立ち上がる千鶴。
「ちょ、ちょっと用が出来たのでまた後日」
「今からデザートを出そうと思ったのですが?」
丸盆の上で求肥に包まれた抹茶色の和菓子の様な物が。
「こ、これはこの街の有名なケーキ屋さんの抹茶大福じゃないの?!?!?!」
「ええ。そうです、同じ飲食関係の交流会で懇意にさせてもらって、抹茶好きな方やお得意様には出しています。」
「たしかに、ある程度の地場の提携で製品供給も許してるし・・・それに私は抹茶好きだけど何で知っているの?」
「以前、会社の社報で菓子製造関係で活動されていたのをみたので。
テレビも内では時間によっては付けるので、インタビューも観たことがありますよ、抹茶お好きですよね?このケーキ屋さんの抹茶大福は絶品ですよ、自分も大好きなんですよ」
「た、食べてから行くことにします。」
踵を返し、座る。
向かいの座席に雪絵も座り、二人の前にやや小さいカップに珈琲と、抹茶大福が置かれる。
宗重も座る。
宗重の前には茶器で点てたお抹茶が。
w抹茶
「「「いただきます」」」
三人は同時に声を上げた。
「あ、後でそのお抹茶私にも点ててくださいっ!」
開店時間はおおよそ午前11時、閉店時間は大体24時。
本当は23時あたりで締めたいのだが、ぱちんこ帰りの常連や、
すぐ近くの、今や世界にまで拡まった、O県地場産業のレストランの支店長さんが晩御飯を食べながら『おちゅかれ』ビールを飲んだりやって来るので、結局午前様になってしまう。
いつも2時過ぎ迄には家に帰っておネムの時間だ。
大体朝7時には起き、軽く柔軟、それから一駅分M駅からS駅までジョギング。
そのあと部屋に置いてあるトレーニング機器で汗をかき、仕上げに自重トレーニングで体幹を鍛えている。
運動神経も普通だが、常日頃鍛えているので同世代よりも体のキレがちがう。
最近試してないのが、腰の動きもまんざらではないと思う。
多分・・・。
風呂に入り、九時過ぎには店にと向かっている。
店の前で鍵を開けようとズボンに手を突っ込むときに声を掛けられる。
「このお店の方ですか?」
「そうですが・・・なんでしょうか?」
鍵を出してドアのカギ穴に挿す。
「昨日この付近で奇怪病患者の事件がありまして、ちょっと回ってるんですが。」
声を掛けてきた方を見ると、それぞれ男女の私服警官は手帳を見せる。
宗重は手帳を注視する。
「店の準備もあるので、入って貰っても良いですか?お話は伺います。」
宗重は店の扉を開けて入っていく。
警察官の二人もその後に続く。
入ってすぐにはレジ。そして左と右に通路があり、右通路の右壁に4席。
開け閉めできる窓が並び、店の外を見ることが出来る。
店裏の駐車場に続く道路が見て取れる。
中央は真ん中に仕切りを入れてテーブルの3席づつ。
左の通路の左壁は御座敷が3席ある。
左の通路を通りすぎて真っ直ぐ向かうと調理場だ。
その調理場からすぐのテーブル席に警察官に座ってもらう。
素早くお冷を、氷入りで出す。
宗重は厨房の鉄板に火を入れる。
「朝食はいつもここで食べるんですが、良かったらどうですか?」
「え?あ、いや私たちは職務中なので。」
「固いのはおとこの・・・いあ、きにするな光代」
宗重はそういって少し微笑む。
光代と言われた女性警察官は宗重を二度見する。
「む、宗ちゃん?」
「なんだ、仕事のし過ぎでこんなイケメンを忘れたのか?」
「じ、じぶんでいうなし!」
思わず地元の方言が出て手に口を持っていく光代。
「せ、先輩、お知り合いですか?」
「え、ええ。学生時代のお友達よ。」
「曲がったことが嫌いなお前らしい。オマワリサンになったんだな。」
「その言い方はやめて、警察官よ、け・い・さ・つ・か・ん!」
珍しく感情をあらわにする光代に後輩警察官も驚きを隠せない。
「鈴木さん、光代とは男と女という間柄だ」
宗重は後輩警察官の名字を呼び、またニヤニヤしながら言う。
「ちょ、誤解を招く言い方はやめて!あなたは男で私は女、そう言う意味で有って肉体関係はないから!!」
光代は後輩の鈴木にまくしたてる。後輩は別にどうでもいいが、慌てる光代にやや困惑している。
「あらぁ、お店が開く前からぁ、にぎやかですねぇ♪」
開いたままの店の入り口からおっぱい、もとい雪絵が入ってくる。
「雪絵ちゃんおはよう。朝ごはんは?」
「まだですぅ。てんちょぅつくってくれるんでしょぉ?」
「ああ、熱くて太いのと、トロトロで甘いのどっちがいい?」
「あつくてふとぉいのがいいです♬」
雪絵がにっこり笑って宗重に言う、はたから聞けば何の話だろうか?
雪絵は上着を脱ぐとそのまま制服だ。
白いシャツに目立つ黒系のブラ。スカートは膝上。
この店の制服だが、シャツが薄い気がする・・・。
「そんなにみるな光代。そんなに見てもお前にその胸が宿ることはない。」
「わぁかってるわよ!やけに薄い白シャツだからきになっただけよ!」
「あぁ、やっぱり少し透けてますぅ?店長がぁ。『雪絵ちゃんは黒とか紺系の下着でたまに赤系でこおふんさせてw』とかいうからぁ。シャツも私だけすこしぃうすいんです。」
「ちょ、職権乱用!
雪絵さん訴えなさい、あんな英狼おや「えぇ、でもじきゅう上げてくれてるしぃ、ぎぶあんどていくですょお?」
話しながら雪絵は鈴木側の席に座ろうとする。
自覚がないが雪絵は胸をせり出すように席に入ろうとするので、座っている鈴木の目の前に胸が迫る。
あわてて光代の手ぶりで鈴木は横に移動。
「さて、雪絵ちゃん『熱くて、太いの』だ」
いつの間にか保温状態の鉄板。油を一度引き、ヘラでふき取り、雪絵の前に大きなだし巻き卵が現れる。
次いでご飯とお味噌汁。
「光代と鈴木さんは『とおろぉとぉろぉでぇ♬あまいのぉw』だ。」
「ちょっと言い方!」
光代の突っ込みに、完全スルーの宗重。二人の目の前にはオムレツのような卵がドンと。
鈴木の前のオムレツには「後背」、光代の前のオムレツには「絶壁」と書かれている。
次いで厚切りのパンと牛乳。
「おごりだ。朝飯もロクに摂らずに仕事してるんだろ?化粧で隠しても俺にはわかるぞ。」
文句を言おうとする光代に宗重はぬるめのホットミルクとオレンジジュースを。
「野菜不足で少し浮腫みが有る鈴木さんにはこれだ」
鈴木にはグリーンスムージーとオレンジジュースをそれぞれ小さいコップで併せて一杯分程度だす。
「昔っから目ざといのと人の名前は一発で覚えるのは変わってないわね!!いただきます!」
「一発とかはしたないぞ光代。ストレスで溜まってるのはわかるが、俺にはその絶壁を朝まで愛で続けるほど熱意はNa「それはいいから!昨日この店の裏手で、この店のフランチャイズの大元の重役さんが襲われたのよ、何か知らない?」
渡されたナイフとフォークでオムレツを切ると、プルプルの中身がドロッとあふれてくる。
パンに添えられたバターもなんか良い香りを発している。
手で厚切りトーストをちぎると、外はさっくり、中はしっとりで、バターを付けて食べると食感とバターのうまみが口の中に広がる。
オムレツも甘めにつくられ、少し塩気のあるバターと相性が良い。
だし巻き卵も雪絵がお箸で切れ目を入れると、中の卵と出しの汁が少しあふれている。少しづつお箸で切ってそのまま食べている。
光代の視線に気づいた雪絵は、宗重から渡された小さいヘラで食べ始めていない逆の方から一切れ切り分けた出し巻き卵を、光代のオムレツの横にそえる。
その後鈴木にもだ。
「ほしがりさんのおめめをしてたのでぇ、よかったらどぉぞぉw」
雪絵の甘ったるい言い方が違う意味合いに聞こえてしまうが、ここで喰いついてはだめだ、と光代は感じていた。
宗重はまえからコンナやつだが、この雪絵という巨乳も大概だ。
「ありがとうございます♪」
普通に光代は返し、一口パクリ。
あ、あついぃwしかもうちのめっちゃすきな明太マヨwwwww
口に含んで一口で絶妙な明太の辛味、それを、たまごの中で熱されたマヨの旨味がつつんで、一粒一粒が張りを増している。
そしてそれに合わせるように濃すぎない優しいお出汁・・・。
恍惚な表情の光代。そして宗重の食のこだわりと片鱗を思い出していた。
昔学校の林間学校で宗重の担当するカレーに行列ができたことを思い出していた。
彼が持ってきた香りの強いスパイスと、前の日から仕込んできた亜麻色の玉ねぎとニンニクのベースを独断で挿入して出来たカレーは、料理をまだそれほどしたことのない、未成年の子供の間では、抜群においしくて、あのあと何回かおねだりした生徒もいたくらいだ。
光代もそんな生徒の一人だった。
「店を閉める頃にパトカーが来たのはわかったが?」
「わたしもぉ、おみせを、おかたずけしてましたぁのでわかんないですぅ」
***
「お、おいしかったわ。それに、飲んだ事の無いオレンジジュースも!」
「オリジナルブレンドだ。アレは効くぞ。クマも薄くなるぞ。」
「ありがとうございます、結局パンも何度もおかわりしちゃって・・・」
「バターも手作りで、パンも玄米多めで食物繊維あるから、通じがよくなるかもだよ。
ジャムも気に入って貰えてよかったよ。しっかり野菜も食べないと、内臓からヤラレるよ、鈴木さん。」
すっかりご馳走になった警官二人。
帰る足取りも心なしか軽くなった気がしないでもない。
店の扉をしめて営業中の電光掲示板がともる。
すると勢いよく店のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませぇ♪」
「お客のあいさつも素早くてさすがは高利益をたたき出す支店ね、実に素晴らしいわ。おはようございます、店長はいらっしゃるかしら?」
白系のジャケットと膝上のスカート、細い紺系の縦線の入ったシャツを着た、小綺麗な女性が入ってくる。
長い髪もお団子状で後頭部の上でまとめ、センスの良い知的な黒メガネだ。
宗重的には細いフレームの赤眼鏡で、俗な女教師物でもう少し胸元は開いてほしいといった処である。
「はぁぃ、ちょっとおまちくださぁい」
雪絵はアイコンタクトで宗重に。
「店長は不在です。店長候補の自分が御用件伺いますが。」
先程まで光代と鈴木達がいたところに白スーツ黒メガネを案内する。
座る前に白スーツ黒メガネが名刺を取り出す。
「ビゼングループ、龍造寺コーポレーション、O県地区の担当になりました、エリアマネージャーの龍造寺千鶴といいます」
「Mie店、店長候補でバイトの烏羽宗重といいます。彼女はパートの森竹雪絵さんです。そういえばさっきまで絶壁と後背位・・・もとい刑事さんがきていたんですが、もしかして・・・」
「そ、そうよ。襲われたのは私です。連れの人達は入院したりで、開店前に話したかったのですが、時間を押してしまって」
「いえいえ、昨日の今日でご苦労様です。朝はまだなんじゃないですか?」
「いえ、後で軽くすませるの『ぐうううううううっ』」
「すごくぅおっきぃwおなかなっちゃいましたよぉ?」
雪絵の言葉で耳まで真っ赤にする千鶴。
「良かったら。」
鉄板の上にオムレツを乗せ、厚切りトーストが一枚。手作りバターとジャムが付いてくる。
ぬるめのホットミルクだ。
「あ、ありがとう。」
「いえ。」
お冷も置かれ、千鶴はお冷を一息にのむ。
柑橘系の香りと、ほどよい酸味のあるお冷。
暑苦しい朝の熱気と湿気のある初夏にはもってこいのすがすがしさだ。
ホットミルクも人肌よりややぬるめだがその温度が飲みやすく、甘い。
置かれてあるナイフとフォークでオムレツを・・・
オムレツの上にケチャップで・・・・
逆三角形のマーク。縦線が数本・・・。
「ケ、警察の方なにかおしゃってマシタカァ?」
「お店の重役さんが襲われたので、その時間の聞き込みの様でしたが、なにか?」
「い、いえ・・・。」
手早く食べ終え、立ち上がる千鶴。
「ちょ、ちょっと用が出来たのでまた後日」
「今からデザートを出そうと思ったのですが?」
丸盆の上で求肥に包まれた抹茶色の和菓子の様な物が。
「こ、これはこの街の有名なケーキ屋さんの抹茶大福じゃないの?!?!?!」
「ええ。そうです、同じ飲食関係の交流会で懇意にさせてもらって、抹茶好きな方やお得意様には出しています。」
「たしかに、ある程度の地場の提携で製品供給も許してるし・・・それに私は抹茶好きだけど何で知っているの?」
「以前、会社の社報で菓子製造関係で活動されていたのをみたので。
テレビも内では時間によっては付けるので、インタビューも観たことがありますよ、抹茶お好きですよね?このケーキ屋さんの抹茶大福は絶品ですよ、自分も大好きなんですよ」
「た、食べてから行くことにします。」
踵を返し、座る。
向かいの座席に雪絵も座り、二人の前にやや小さいカップに珈琲と、抹茶大福が置かれる。
宗重も座る。
宗重の前には茶器で点てたお抹茶が。
w抹茶
「「「いただきます」」」
三人は同時に声を上げた。
「あ、後でそのお抹茶私にも点ててくださいっ!」
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