上 下
39 / 39
閑話

賢者の粉。

しおりを挟む
 草の門。
 今日も今日とて、アルテの白布を見ようとするヴィートと本気で矢を放つアルテ、
 漁夫の利で眼福のむっつりビアンは草の門の櫓にいた。

 彼らの持ち回りとグループは月毎等で変わる。

 王の門はガッハが、森の門はルワース、草の門はヴィートが隊長で不定期で見回り、それぞれ団員のペアが見張りを行っている。
 数日に一度非番もあり、持ち回りで村の農業や、鍛冶、装飾や縫製などを手伝ったりしながら、ほぼ村の中での自給自足を行っている。

 ヴィートは暇な時がほとんどで、稽古をつけてもらいたい子供達や、まだ入りたての自警団員の稽古をつけている。

 自警団員のなかでもそれぞれ得意とするものを見出し、軽装や重装備、魔術や補給等の要員などに分かれる。

 自衛の面もかねて、最低限ヴィートの手ほどきは通らねばならなかった。
 かなり半端はないが、それだけ実力も伸びる。

 ヴィート曰く、ガッハの重装備部隊の訓練なんか大木担いで村外周数周とかざらだからな、それに比べれば軽いもんだよとはいうが・・・。

 木剣を持った子供数人とヴィートは片手に持った木の棒で巧みに避けながら受け流す。

 子供達も足元や目元などうまく分かれてヴィートに打ち込んでいるが、まるでステップをふるうかのようにヴィートはかわし、掠りさえしない。

「ヴィート兄ちゃん!」

 そんな中門の外から声がして、ヴィートは子供達の稽古を停める。

「どした?」

「ねぇちゃんが・・・白いおっきい馬におそわれたよぉ!」

 まだ五歳そこそこの子供が泣きだし始めた。

 ヴィートは鳴く子を腕に抱えた。

「どこだ?案内してくれ」

 こどもは目をこすりながら指で方向を指す。

 ヴィートがものすごい速さで走り出す。

 まるで馬だ。子供は大丈夫だろうか?

 アルテが何かつぶやきながら櫓から降りてくる。

 ヴィートの抱える子の周りにぼんやり光が現れる。

 アルテもヴィートに続いて走っていった。

 鳴く子が言うには、親の牧羊の手伝いをしながら遊んでいたら、突然大きい白い馬が現れたらしい。

 現場に着くとヴィートは子供をおろす。

「おいおい・・・」

 ヴィートの目の前に、女の子の膝に強引に頭を乗せる一角馬ユニコーンがいた。


 ***


「ヴぃーとにいちゃああん」

 泣きじゃくる女の子。

「ああ、わかったすぐ助けてやるからちょいと待ってろ。」

 ヴィートはそう言って女の子をあやす。

「アルテ」

「ああ、わかった、何も言うな」

「ここはしょじ「わかったからいうな」

 ヴィートの口に手のひらを押し当てて女の子の元に行く。

 ユニコーンは頭をもたげ、目を開けてアルテを見据える。

「その子の代わりに私でよいかな?賢い一角の馬よ」

 女の子をアルテは立たせ、男の子の方に体を向けさせる。

 少し足がしびれてるようだが何とか歩けそうだ。

 アルテは辺りの草を敷いて、そこに座る。

「おいで」

 アルテの声にユニコーンは頷きひざ元に頭をうずめる。

 途端に寝息を立て始め動かなくなる。

 ユニコーン。

 精霊の馬といわれ、額に伸びた一角の角を持つ白馬で、その角はあらゆる毒を治療、中和しするといわれる。
 かれらは日々狙われ、心休まる日々がなく、唯一まだ清い女性のみに心を許すと言われる。

「ヴぃーとにぃ、アルテねぇちゃんだいじょうぶなの?」

「ああ、大丈夫だ、あのお馬さんは兄ちゃんが近づくとおこるけど、おねちゃんやアルテねぇちゃんが近づく分にはなにもしないよ。
 あのお馬さんはユニコーンていう強いお馬さんなんだけど、あの角を狙って悪い人に良く襲われるんだ。
 多分疲れて、こころやすめたかったんだろうね、もう少ししたら自警団の人かお父さんたちが来るはずだから少し待ってようね」

 ヴィートは子供達にそういって、ユニコーンとアルテの所から少し離れて座って様子を見ている。

「ヴィートにいちゃんは近づいてダメなのに、アルテおねぇちゃんがちかづいてもおこらないのはどぉしてなの?」

「それはね、アルテおねぇちゃんは・・・」

 アルテは弓を持ってきていたがユニコーンが膝枕しているのでその行動が出来ない。

 矢だけでも投げるかと構える。

「清い心もっている女の子だからだよ。」

「そぉなんだ。私もきよいこころもってるんだね!」

 女の子も笑みでヴィートに返す。

 どうせろくでもないこと言うと思ったアルテは耳まで赤くなり、顔を俯ける。

「まぁほんとはしょじ「きよいこころだ!!!」

 ユニコーンがびっくりするほど叫ぶアルテだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

namakemono
2019.07.01 namakemono

え~と余計なお世話かもしれませんがセリフ内の「、」が異様に多くそれぞれのセリフを一度音読して見たほうがいいかもしれませんね。セリフの言葉言葉の間に「、」を入れると変なのはわかりますよね?

シンゴぱぱ
2019.07.01 シンゴぱぱ

namakemonoさん、
 文中のセリフ内に読点(とうてん)「、」が「異常」に多く、「変」なのではないか?というご指摘、大変ありがとうございます。
 
 セリフの「、」読点、併せて「。」句点(くてん)につきまして、
 こちらの、「アルファポリス」様に出品する際、何度か「音読」し、誤字脱字等の確認。
 セリフや登場人物の取り回しなど確認している次第です。
 それでも再度見直しますと、「多々」修正箇所が見られ、誤植や修正の難しさを「素人」ながら痛感しております。

 執筆にあたり、読者の方々に出来るだけ想像しやすいように、詳細に書けるところは書き込んでいくように努めております。
 句読点を含まない流れるようなセリフ回しや簡易の動きで、スピーディに読めるライトノベルに慣れている読者の方々には、句読点(くとうてん。句点や読点の総称)が入るが故(ゆえ)の独特の「間」が入る為、大変違和感があるかもしれません・・・。
 むっちもっちさんから頂いたご意見と重なるところはあるのですが、「草印」や「楽譜印」同様、セリフ内でも句読点を使用し、登場人物たちの歯切れの良さ、言葉使いの取り回し等を「表現」している次第であります。
 ですので、セリフを見て、こいつは活舌(かつぜつ)良いなとか、こいつはしどろもどろだなぁと想像の助けになれば大変うれしい限りでございます。
 尚、文法上「」や()内の句読点の使用は、日本の文法でも使用に関しては「ほぼ」問題ない為、使用しても大丈夫かと思われます。
 
 上手く表現できず、興味も沸きにくい作品ですが、セリフに迄注目して御指摘頂き大変うれしいかぎりです。
 何分書き始めて間もなく、試行錯誤、迷走、更には妄想しながらの「愚作」ではありますが、これからもご意見ご感想有りましたらお待ちしております。
 
 
 併せて、今後のミカゲ達の冒険譚を見て頂きますと嬉しい限りです。

解除
むっちもっち

三話まで読んで興味が出てきたのですが、セリフに付く♪やwが雰囲気を損ねているような気がします。せっかく地の文を多目に書かれてしっかりした雰囲気を出しているのになぁと。

シンゴぱぱ
2019.06.29 シンゴぱぱ

 むっちもっちさん、ご感想大変感謝いたします。

 セリフの「♪」や「w」の書き込みについて、
雰囲気を損ねているのでは無いかという貴重なご意見、併(あわ)せて、お礼申し上げます。
 執筆にあたり、読者の方が出来るだけ想像をしやすいよう、詳細を書くように努めております。
 逆に、そちらに注力しすぎ、セリフや簡易の動きで、スピーディに読めるライトノベルに慣れてしまっている読者の方々には、『大変』読みづらいものになっているかもしれません・・・。
 それでも、そのあたりの折り合いや、抑揚(よくよう)の部分や興奮の「度合い」を書ききれず、現代の若者のメールやSNSなどのやり取りで使用する「草印」や「楽譜印」を使い、イメージの一端となればと言葉遊びの一つとして活用させて貰ってます。
 今後執筆の過程で表現を変えていくかもですが、現状は使用していく形です。
 逆に、「ああ、うまく書き切れていないのだなw」と生ぬるい目で見ていただくと大変喜ばしく思います。
 
 上手く伝えきれず、興味も沸きにくい作品を「3話」も読んで頂き、大変うれしい限りです。
 何分(なにぶん)書き始めて間もなく、試行錯誤、迷走しながらの「愚作」ではありますが、これからも、ご意見ご感想お待ちしています。
 
 併せて、今後のミカゲ達の冒険譚を見て頂きますと嬉しい限りです。
 
 

解除

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

せいぎのみかた

シンゴぱぱ
ファンタジー
― 38歳独身、バイトの傍(かたわ)ら、「せいぎのみかた」やってます ―  烏羽 宗重(からすばむねしげ)38歳。  彼は自他ともに認める英狼(エロ)おやじ。  もうすぐ40歳、妖精さんとお友達になれると思っていた様ですが、 バイトの傍ら、彼は正義の味方をすることになりました。  これは、地元のお好み焼き屋でバイトをしている、うだつの上がらない、 もうすぐ四十路(しそじ)も近いおっさんが主人公の物語です。  作者の本能的にお色気あり。  戦闘シーンもそこそこあります。  基本、主人公がマイペースなので、エロんな・・・もとい、 色んな意味で柔らかい感じの世界で進むと思います。

婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?

三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい!  ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。 イラスト/ノーコピーライトガール

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

Wish upon a Star

稲瀬
ファンタジー
平和な学術都市・ソラネンをある年、魔獣が突如襲撃してくる。天才学者・サイラスが友人の傭兵・リアムと二人で秘密を抱えながら対処していくが——果たして都市を守り切れるのか? RPGのような世界で途中軽い流血描写があります ハッピーエンドで完結

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。