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第二章 湖の村日常編

4.区画整理。

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 湖の村の南、草の門。
 その西側の、ティタ達が仮設の天幕を張った場所で、ビアンとステイシア、ティタと数人の部下は顔を突き合わせていた。
 ビアンの勧めでこの場所に仮設の住居を作り、併せてティタ達の居住区画にしようというのだ。
 ヤキニクで使われた石壁も従来の使用目的に使われ始める。
 おおよその区画の大きさまで石壁を設置していき、完成したら村の本来あった壁を壊すか改良して区画の境界にするかといった感じだ。
 来る者は拒まずのこの村だが、やはり半妖魔のイメージもさほど良いものでは無く、まずはそういった区画を作るのも一つの保険と言う事だ。
 ティタはむしろそうしてくれる方がよいと快諾してくれた。
 自身の今まで生きてきた中で、精神的にも荒み、狂人と化してもおかしくはなかっただろう。
 だが、ティタ自身の根本的な心根の良さと姉や周りの者達のおかげといった処か。
 居住区のスタイルとしても彼らはもとより根無し草。
 豪勢な寝所も特にこだわりはなかった。
 雨露をしのげる程度でも何ら彼らにとっては良き住みかとなるのだ。
 とはいっても個人個人のプライベートは必要だろうという事になり、
 建築的にも長屋のような形で、台所と一部屋付き。
 共同で水の供給の得られるという大まかな骨格をビアンは提案した。
 労力は彼ら自身。
 まずは必要な木材の調達からだ。
 ある程度の打ち合わせが終わった時、ティタの部下が申し訳なさそうにやってきた。
かしら、石壁の組み立てで使ってるこれなんですが・・・」
 木材数本と、金属の板とそれを動かす木材の取っ手が付いたものを持ってきた。
 左官などがつかうコテというものだ。
 火山灰となにか白い粉と砂と水をまぜ、それを石壁の隙間に埋めるときに使うもので、力があり余って曲げてしまったようだ。
「かせ。」
 ティタはそのコテを部下から受け取ると、自分の荷物の中から小さな金床と木槌や、叩く面を金属にした小道具等が入った袋を出す。
 金床に当ててキレイに叩いて直していく。
「一時的な応急処置だが、気を付けて使えば大丈夫だろう。
 用途でいうなら木で作っても大丈夫そうだが、時間があれば作っておく。」
 部下は頭を下げて現場に戻る。
「見た目とはちがっておぬし器用じゃな。」
 ステイシアらしくストレートの誉め言葉。
「ステさん、こんなのはいつもの事ですよ、あ、そうだ、良かったら。」
 ティタは腰にぶら下げた袋から綺麗に組み上げられた蝶の細工を取り出す。
「お好きな所にお付けください。」
「ほぉ、細工物も得意なのか?しかしワシがもらってよいのか?」
「暇を見て遊びで作ったもので、逆に申し訳ない。
 部下の装備の手入れは殆ど自分達でして来ていたので、自分がしていたら、手に入れた銀鉱石を溶かして作ってみたんですよ。」
 半妖魔たちは見た目とは違い、実に素朴で人よりも人間味のある者達が多かった。
 何人かは村を離れ、いずれは別の地にと言っている者もいるが、それはここが嫌だというわけではない。
 彼らなりに独立して、余生を過ごしたいものもいるのだ。
 いつの間にか親睦を深めたステイシアは、ティタからは「ステさん」ティタの部下からは「姐さん」とよばれていた。
 この前の焼き肉で酒を豪快に飲ませに来た際に、色々とお世話になったらしい。
 そして裏表なくはっきり言う性格が彼らとの距離を一層近くさせた。
 ステイシアはその蝶の飾りをひとしきりみて、胸の谷間の覗く胸元の衣服に挿す。
「これなら、チラチラ盗み見せずとも、飾りを見てると言えばいいからのぉ・・・」
 ティタ達は顔を赤らめて視線を逸らす。
「今度また時間のある時にかわいらしい飾りをつくってもらおうかの。それはこの辺りに付ければよかろうw」
 戸惑うティタをいじめるように、少し短いスカートの内股を触って見せるステイシアだった。
 
『『『『かしら(ティタ)、さすがっす(ナイス!)』』』

 ティタを讃美するその部下とビアンだった。

 ********************

 ゴブリンの巣から出てきたミカゲ達は、後から応援で駆け付けた自警団の面子と合流した。
 被害のあった女性たちの搬送などが主だ。
 イートやフィートの張っていた裏口以外は特に通路は入り口のほかに見当たらず、また次の住人が魔物であってもなので、入り口ともども封鎖することにした。
 亡くなっていた冒険者か襲われた人達の中で、身元を保証する物がある者は回収し、残りはひとまとめで燃やす形だ。
 冒険者組合では等級や実力に合わせて、首に掛けれるネックレスや腰のベルトなどにつけれるそれぞれの材質のタグの様な物を作成、持たせている。
 こういう時のための身元確認や、階級によってはカードのようなもので、詳しく身元を確認できるものもある。
 初級冒険者が多かったのか、殆どがタグで、数枚のカードもあった。
 これらは村の冒険者組合から王都の大元の冒険者組合に贈られ、見合った報酬なども幾分かは入る仕組みだ。
 カード上のギルドカードはそこそこ上位の冒険者たちが持つ者で、腕に覚えのある者が、ここに来て、悲惨な最期を迎えたのだろう。
 草原の一帯に少し穴を掘り、遺体を置き、持ってきた木材や可燃物で火が灯る。
 何人かの、葬祭を執り行える神聖魔法使いが遺体の安寧と送る言葉を紡いでいた。
 後は何時間か燃やし、灰になった処で土をかぶせていく。
 そうやって簡易的にでも火葬、埋葬することで、死人と化して魔素に染まらず、二次災害も無くなるのだ。
 装備を外し、楽な格好になる五人。
 装備は臭いもきつく、今後使えたものでは無いので、金属系統のみは打ちなおす形で一緒に燃やす。
 火を眺めるミカゲにそっと寄り添うルマリア
「ミカゲ殿、あの杖はなぜ私の名を知っていたのだ?」
「なぜなんだろうな?一度戻ってビアンやステイシアに話してみよう。彼らならその知識と記憶力で何かわかるかもしれない。」
 そう言ってルマリアの手を握る。
 燃える装備と異臭が草原に煙と共に立ち上っていた。

 
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