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番外編
眼鏡とハイヒール・前編
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「あ、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」
土曜日、午後は休みと専大前交差点近く、店外本棚がなかなか圧巻な古書店の2Fで雑多本コーナーとでも名付けたいような棚を物色し、“志ん生の落語選集”などを手に階下に降りたら、レジ前の棚に囲まれた狭い通路で女性とぶつかりそうになった。
後ろを向いていた側を通り過ぎようとして、突然振り返った相手の謝罪にこちらも会釈程度に頭を下げて応じながら、少しずれた眼鏡をフレームの中央を指で押さえるように直す。「あら」と、至近距離から聞き覚えのある声が降ってきて顔を上げれば見知った人物だった。
「あなた朝布大の。ええっとたしか……めが――」
「万城目です」
若干相手の言葉に被せ気味に名乗れば、「そう。万城目、くん。奇遇ねこんなところで」とやや誤魔化しを含む明るい口調で言った女性に、まったくと眼鏡を指で押し上げた。
「確かにこんなところでお会いするのは奇遇です。それはそうといま“眼鏡”って呼ぼうとしましたね。松苗女史」
「あ、ははは……わかっちゃった?」
「上津原の対談仕事と打ち上げとで、数回程お会いしていると思うのですが……」
「人の名前覚えるの苦手なのよ。直接の仕事関係者でないと特に」
「それはまた、意外な」
意外といえば、こうして出くわした場所も意外だ。
レジ前はこの店主力のSF棚。オソカワのSF文庫やペーパーバックシリーズだけでなくサンレオ社やソノヤマのSF文庫といったメジャーなSF系文庫レーベルはもちろん、ちくご書房や川出書房他のSF関連本もずらりと並んでいるそこで、明らかに階下に下りてくるまでの自分同様に棚にならんだ本を物色するのを楽しんでいる様子に見えた。
確かに松苗女史は一般文芸書籍の編集者であるが、なんとなくイメージ的に純文学系の小説が好きそうだと勝手に思っていた。
「なに?」
「いえ。なんとなく松苗女史だともっと奥の文学書や映画コーナーにいそうだなと」
「あなたのその本よりは意外じゃないと思うんだけど……」
明るい髪色のセミロングをかき上げながら、僕の手にしていた本を指差して松苗女史は首を傾けるように僕から書棚へと視線を移した。なんとなくつられてSF棚を見る。
見てしまうと嫌いじゃないだけについ本の背表紙のタイトルを次々と確認してしまう。
「落語とか好きなの?」
「江戸っ子ですので。子供の頃によく祖父に寄席に連れられて好きに」
「へえ。あたしも談志の“居残り佐平次”なんかは好きだけど。そうねあと“芝浜”とか」
「ん、お聞きになるんですか?」
「なによ、聞いちゃいけないの?」
目に留まったらしい文庫に指をかけながら、威圧的な眼差しで軽く睨まれたが、普段からもっと威圧的かつ鋭い目をしたボスの相手をしている。彼女の後輩編集者であり僕と友人付き合いのある早坂さんのように震え上がることもなく、いいえと答えた。
「意外な上にも意外ではありますが。まあそれに談志を挙げるなら僕もそのあたりです」
「大学の頃、やたら引き出しの多い男が同じ文芸サークルにいて対抗心で色々読んだり触れたりする内に色々好きになったのよ。ま、仕事でも役立ってるし広く浅くは実益を兼ねた娯楽ってところかしら」
「その人、もしかして例の甘糟さん逃亡幇助した文旬の」
「まあね。っていうか、なんで知ってんのよ。ああ、早坂か」
「はい。昔の彼氏だとか」
「はぁっ!? なにそれ冗談よして」
「違うんですか? 早坂さんはそうじゃないかって」
「お互い絶対それだけは、たとえなにかの間違いで寝たとしてもあり得ない相手って認識だから。早坂の奴はなにデマ流してんの!?」
なにかの間違いで寝たとしてもあり得ない相手とは、また随分と微妙な……。
そんな微妙な関係性では、あの実直誠実な柴犬のように松苗女史に従う早坂さんではそんな誤解をしても仕方ない。
「あくまで推測の域の話としていましたよ」
なにかと苦労人で不憫な目に合いがちな友人のために言い添えながら、高校時代に読んだ覚えのある懐かしいタイトルの文庫を一冊抜き取り、それも買い物に加えることにした。本というものは際限なく増える。
見れば松苗女史も二冊ほど選びとっていた。
「それにしても……早坂と同い年だっていうのにいつも落ち着きはらって淡々としてるわねえ。無機質っぽいというか」
「まあ機械っぽいとはよく言われます」
「学生さんには慕われているみたいだけど」
「慕われているというか、舐められているというか」
何故か二人してレジに並び、話しながら順に会計を済ませて店の外へ出た。
天気の良い冬の日、明るい髪色のセミロングがきらきらとした艶を放っている。
これまで仕事を通じての場でしか松苗女史と会ったことはない。いつもシンプルなブラウスやジャケットスタイルで敏腕編集者らしい迫力ある大人のキャリア女性といった印象が強かったが、休日のプライベートであるためか今日の彼女はもこもことした白に近いベージュのコートを着て、オレンジ色のスカートに茶色のタートルネックのニットと随分柔らかい雰囲気に見える。
淡いピンクの爪先に白っぽくキラキラしたアクセントを施している指に引っ掛けた本の袋をぶらぶらさせながら、斜め後ろで店外書棚に引き留められた様子で特価コーナーの本を眺めている松苗女史を尻目に、黒に近い紺地のステンカラーコートのポケットに入っているスマートフォンを取り出して時間を確認すれば15時を回ったところだった。
「ねえ」
「はい」
さて、これから再び研究室に戻るか、休日らしくのんびり喫茶店に入って買った本でも読むか、家に帰るか、古書店の店外書棚の前で思案しかけたところを松苗女史に呼びかけられて振り返る。
「せっかくだし、お姉さんとお茶でもどう?」
「はあ、まあ構いませんが」
なにがせっかくなのかはわからないが、取り立てて急ぐ用事もない。研究室に立ち寄るのもなんとなく手持ち無沙汰な時間を過ごすくらいなら研究に戻るかといった考えだった。上津原がいるならまた話は別だが、彼は行政主催のシンポジウムの講演で不在だ。
「なにその乗り気なさげな返事は。用事があるなら別にいいのよ」
「取り立てて必ずといった用事はないため承諾したわけですが」
「……ああ、そう」
なんかむかつくとぼやいた松苗女史に、「ああなるほど」と呟いた。
言えば殺されそうだから言ったことはないが、時々妙に可愛らしいと早坂さんが言っていたのはこれかと思いながら、取り出しついでにメールチェックもしてスマートフォンをポケットに戻す。
「なに?」
「いえ、お茶ってどこ行きます?」
*****
松苗たか子、出版大手のカドワカの文芸書籍の編集者。
新人作家の発掘と気難し屋の大御所の扱いに定評があり、その企画力と幅広い人脈から様々なプロジェクトに参画することも度々。偶然に偶然が重なりほぼ完全に彼女の人脈によって立ち上がった、彼女の担当作家である甘糟塔子の作品映像化第一弾『苔の恋愛』でその評価は決定的になったらしい。
業界関係者は敬意を込めて彼女を松苗女史と呼ぶ――とは、彼女と同じカドワカの月刊文芸誌『野人時代』でボスの上津原のコラム連載の担当編集者であり、連絡を取り次ぐうちに友人付き合いとなった早坂さんから、松苗女史に初めて会う以前より聞かされていたことで、自分にとってはそれ以上の説明を必要としない人であった。
上津原と直接仕事で関わる人ならともかく、彼女は早坂さんや甘糟さんを介して間接的に上津原や自分と関わる人物であるし、実際、研究室になにかしらで数度来た際にお茶出しがてら挨拶したのと、上津原と甘糟さんの対談連載の打ち上げで少し話した程度の間柄である。
それなのに、妙に近しい人物に感じられるのはひとえに早坂さんのせいだった。
彼とは月一程度の頻度で飲み食いしたり、ここ一年はそんな機会はめっきりなくなっているもののたまに彼の誘いで合コンに参加したりで、かれこれ四年の付き合いになる。
ちなみに合コンの誘いがなくなったのは他でもない。早坂さんがそれまで絶対服従のトラウマ新人指導の先輩でしかなかった松苗女史に淡い恋心を抱き始めたからであった。
しかしそれも先々月、一年近く微妙なアプローチをし続けた末に、「はっきり告白されてもないし正直一瞬ありかもと思いはしたけど、やっぱりあんたは可愛い舎弟にしか思えないわ。もしそのつもりなら、ごめん」と清々しいほどきっぱりした先回りの断り文句で玉砕した。おまけにその一ヶ月後には、すっかり顔なじみになっていた大学研究棟の事務員女性となにやら“いい感じ”になり付き合い始めたオチまでついている。
――まあなので、こうしてこの人とお茶などしていても、特に問題はないものの……。
「なに」
深煎りコーヒーの苦味を味わいつつ、向き合う松苗女史の顔を見れば彼女は怪訝そうに眉根を寄せた。
「いえ。単純に情報不足と思いまして」
「は?」
「よく考えたら、松苗女史とは直接接点ないですし」
「ああ。言われてみたら……早坂の話で結構前から知ってる気がするけど」
「そうなんですよ。僕も早坂さんから色々聞いてて知った気でいますが、所詮は人の話ですからね」
「ろくな話じゃないでしょ、それ」
「ろくな話とろくでもない話と、割合的には半々ですね。よく来るんですか、ここ」
古書店の上階にあるブックカフェに戻るでもなく、すぐ近くにあるチェーンのコーヒーショップでもなく、ゆっくりできるところにしましょうよと結局靖国通りを歩いて、すずらん通り近くの路地にある山小屋風の古い喫茶店の中二階の席に落ち着いていた。
「本当、上津原センセーとはまた違って歯に衣着せぬって感じね……。そうねぇ、休みの日にたまに。ほらここフードメニューも充実だし。どうして?」
そう言って松苗女史はストローに口をつける。寒い寒いと言いながら店に入っておきながら頼んだのはいちごの生ジュースだった。
「同じ理由で僕もたまに。家から地下鉄二駅ですからね。神保町は散歩や仕事の本なんか探しにちょくちょく来ますし」
「へえ、そうなの。まああたしも地下鉄二駅だし、会社からもまあまあ近いから」
「ああそういえば、この辺出版社多いですもんねえ」
「うちはちょっと距離あるけどね。だから休日が多いわ」
「案外、このあたりでニアミスかすれ違ってたかもですね」
「そうかも。あたし大学の頃から時々ぶらぶらしてたから、小学生や中学生の君とすれ違ってるかもよ」
テーブルに肘をつき、両手を組んだところに顎を乗せてふふんと笑んだ松苗女史の言葉に思わず顔を顰めてしまう。あまり会っていてほしくない。
しかし、あらためて数えるとそれがおかしくない年齢差なのかとコーヒーに添えられたピーナッツを齧りながら思う。たしか甘糟さんの七つ年上。僕とは八歳差。彼女が二十歳の頃は考えたくないが小学生だ。
「やだ、そう考えるとお姉さんなんだか背徳感」
「なにくだらないことを……そもそも女子大生な松苗女史なんて想像つきませんね」
松苗女史のイメージは二年前に出会った時から固定されている。三十路を過ぎてどこか少女ぽい甘糟さんもだけれど、この人も何気に年齢不詳だ。
四十手前で迫力あるキャリア女性なのに、単純に見た目でいえば三十半ばくらいにしか見えない。
「そう?」
「ええ、僕が大学で指導してる女子学生みたいなわけでしょう?」
「その嫌なものでも見るような顔やめてくれない……まあでも女子大生な頃なんて見られたくもないわね。でも大人って不思議よねえ」
「なにがです?」
「女子大生が小学男子なんて連れ回したら子守だけど、そこそこ歳取るとそうならないじゃない。塔子と上津原センセーなんて一回り違いよ。二人とも早生まれで干支同じなんだから。センセー二十歳で塔子まだ小学三年生の幼女じゃない。犯罪よ犯罪!」
「たしかに……」
そう考えると一気に上津原がロリコンみたいに思える。いや、あの人はもともと大人趣味というかなにかしらバリバリやってる気の強い女性が趣味っぽいし、学生から言い寄られても「ガキに興味なんかあるか」で一蹴だからそういったイメージはないけれど。
学生結婚して短い期間で別れたという元奥さんもやり手の温泉旅館女将らしいし。
ああ、それで結構しぶとくバツイチおやじの自分など時間の無駄だのどうのと、第三者から言わせれば自分が甘糟さんを好きだとほとんど認めたも同然のことを言っていたのか。
大体、見込みのある人間は世話焼きながらシバくタイプの人だし、そう考えたら僕がそうじゃないかと思うより随分以前から。
「どうしたの?」
「いえ、我がボスながら今思えばなんてわかりやすいんだあの人……と」
メガネの中央から額を押さえてうなだれると、ああと詰まらなそうに松苗女史はストローを咥えた。グラスの中のピンク色した液体の水位がみるみる下がっていく。
「塔子も、本人自覚なしだったけど対談連載始めて結構早いうちから……口開けばセンセーの話ばっかりであの頃は本当聞いてる方が痒くなってくるというかなんというか」
「はあ。まあでも甘糟さんは仕方ないのでは? あれだけ上津原からひどい扱い受けていたわけですし」
なにせ小学生かといった揶揄ばかりで、彼女の名前すらまともに呼んではいなかった。
それでいてあの研究第一、教育その次、あとは知らんな人が結構優先的に気を回していた。学会の海外出張先から、その時色々あって失踪中だった甘糟さんの居所をつきとめたから連れてこいなどと指示された時は驚いたものだ。
「なにいってんの。ほら、途中でなんかいたじゃない塔子に言い寄った……その男に連れ回された後、ときめいたそいつの話よりずっとセンセーの話してんのよあの子」
「えっ、そうだったんですか? あのゲリラ豪雨で停電起こした時ですよね。うちの立原先生に食事に誘われたとかいった」
「そーそーそれ。上津原センセーも“戻ってこい”とか言ってたんでしょ。わざわざその先生に電話して」
「あの時、実験中なのに連絡先調べろなんて言われて」
「そういえばそうだったわね。学生に舐められるなみたいなこと言われてたし?」
「何故それを」
「その場にいたの。上津原センセーとお話しして。手土産渡されてない?」
「ああ……いわれてみればあの人が帰る時に日本酒渡されたような」
あれ、松苗女史だったのか。
結構いい純米酒だった覚えがある。
「たしかその後やった勉強会の後で学生達と飲みましたよ。実にいいお酒で……」
「でしょっ! たまたま百貨店に実家のが置いてあったから買ったのよ!」
「実家?」
「造り酒屋なのよ、うち。こっちの方では割烹とかに直接行くから、滅多にお店には出回らないんだから」
そういえば……早坂さんから地元ではお嬢さんらしいと聞いたような。
「蔵元のお嬢さん……」
「地元ではねー。さすがにいまは訪問着だけど、年末年始帰ると振袖なんか用意されたりして……もうねー色々面倒で。祖父が地元団体の会長とかやってるものだから」
「それはなかなか。本気のお嬢様な」
「地方のちょっと古い家ってだけよ。ようやく諦めかけてくれてるけど帰るたびに見合いしろ見合いしろって……なんのために東京に進学して就職して自活してると思ってんの」
「はあ。それはまたなにやら大変そうで」
「まあ兄がいるからまだよかったんだけど。万城目くんもぼちぼち言われない?」
「まあ、相手はいないのかとかなんとか親戚の集まりでは詮索はされますが。家は基本放任主義で僕は気儘な末っ子次男ですので」
「羨ましい。塔子も同じ地方出身だけど公務員家庭で、まあもう私は好きに生きるんだろうって思われてますっなんて言うのよねえ」
「ああ、ぽいですねえ。甘糟さんそんな感じしますねえすごく」
しかし……意外な上にも意外だ。とはいえ聞いてしまえばどことなく人を扱い慣れている感じがそれっぽくはあるけれど。
「でも、ご実家を嫌っているわけではないんでしょう?」
でなければ、百貨店に実家の酒があったからと自慢げに話したり、面倒なのがわかっていても毎年きっちり帰省はしないだろう。
「まあ、面倒ってだけだから……ちょっと、なに笑ってんの!?」
「いえ、恐ろしい敏腕編集者なのに可愛らしいところがあるというの本当だと思いまして」
「はあっ!?」
「早坂さんは言えば殺されると言っていましたが」
「あいつ今度シバく!」
「パワハラですよ。先回りして振った人がそれは流石に気の毒でしょう、松苗女史」
いくらか冷めかけたコーヒーをすする。
あの上津原が敵には回したくないなどと口にしていてどんな人かと思ったら、仕事で絡むならともかくそうでなければ結構面白い人ではないですか。
「……あなた、いつもそうなの?」
「いつもそう、とは?」
「認識が誤ってた。上津原センセーがあなたを従えて虐めてると思ってたけど」
逆ね。上津原センセーを制御するドS機械眼鏡。
「失敬な……上津原のパワハラの最大被害者ですよ僕は」
「絶対違う。ねえそれはともかく、その呼び方なんとかならない?」
「はい?」
「業界関係者はもう面倒だから放置してるけど、その松苗女史ってやつ。そうねえ、お姉さんのことはたか子って呼んで?」
「なんの嫌がらせです、それ」
松苗さん、と言えばつまらないと言われたがつまらなくて結構と返しておいた。
対応の厄介度でいえば上津原と弓月さんを足して割ったような人だ。
足して割ったなので、いくぶんか薄めではある。
話が本や落語などの演芸に戻れば、ちょっと驚くほど盛り上がった。
広く浅くは実益を兼ねた娯楽と言うだけあって守備範囲が広く、過去女性とこういった機会で話して興味なしとされた話も、あああたしも好きよそれとかあれはいまひとつじゃないとか、文学は本職だけに興味深い見解を持っている。
さらに驚いたことに、獣医学って本来は多くの人が思うような動物のお医者さんってわけじゃない学問なんでしょうと僕の仕事や専門領域にまで興味を示した。
気がつけば二人揃って、コーヒーを再注文するなどしてすっかり話し込んでしまい、「お腹空いたわねえ」といった松苗女史に誘われるまま場所を日本酒バルへと移していた。
まあ、明日は日曜で午後までに大学へ出ればいいくらいの予定であるしいいかくらいの気でいた。
その後、起きる事などまったく予期すらせずに――。
「いえ、こちらこそ」
土曜日、午後は休みと専大前交差点近く、店外本棚がなかなか圧巻な古書店の2Fで雑多本コーナーとでも名付けたいような棚を物色し、“志ん生の落語選集”などを手に階下に降りたら、レジ前の棚に囲まれた狭い通路で女性とぶつかりそうになった。
後ろを向いていた側を通り過ぎようとして、突然振り返った相手の謝罪にこちらも会釈程度に頭を下げて応じながら、少しずれた眼鏡をフレームの中央を指で押さえるように直す。「あら」と、至近距離から聞き覚えのある声が降ってきて顔を上げれば見知った人物だった。
「あなた朝布大の。ええっとたしか……めが――」
「万城目です」
若干相手の言葉に被せ気味に名乗れば、「そう。万城目、くん。奇遇ねこんなところで」とやや誤魔化しを含む明るい口調で言った女性に、まったくと眼鏡を指で押し上げた。
「確かにこんなところでお会いするのは奇遇です。それはそうといま“眼鏡”って呼ぼうとしましたね。松苗女史」
「あ、ははは……わかっちゃった?」
「上津原の対談仕事と打ち上げとで、数回程お会いしていると思うのですが……」
「人の名前覚えるの苦手なのよ。直接の仕事関係者でないと特に」
「それはまた、意外な」
意外といえば、こうして出くわした場所も意外だ。
レジ前はこの店主力のSF棚。オソカワのSF文庫やペーパーバックシリーズだけでなくサンレオ社やソノヤマのSF文庫といったメジャーなSF系文庫レーベルはもちろん、ちくご書房や川出書房他のSF関連本もずらりと並んでいるそこで、明らかに階下に下りてくるまでの自分同様に棚にならんだ本を物色するのを楽しんでいる様子に見えた。
確かに松苗女史は一般文芸書籍の編集者であるが、なんとなくイメージ的に純文学系の小説が好きそうだと勝手に思っていた。
「なに?」
「いえ。なんとなく松苗女史だともっと奥の文学書や映画コーナーにいそうだなと」
「あなたのその本よりは意外じゃないと思うんだけど……」
明るい髪色のセミロングをかき上げながら、僕の手にしていた本を指差して松苗女史は首を傾けるように僕から書棚へと視線を移した。なんとなくつられてSF棚を見る。
見てしまうと嫌いじゃないだけについ本の背表紙のタイトルを次々と確認してしまう。
「落語とか好きなの?」
「江戸っ子ですので。子供の頃によく祖父に寄席に連れられて好きに」
「へえ。あたしも談志の“居残り佐平次”なんかは好きだけど。そうねあと“芝浜”とか」
「ん、お聞きになるんですか?」
「なによ、聞いちゃいけないの?」
目に留まったらしい文庫に指をかけながら、威圧的な眼差しで軽く睨まれたが、普段からもっと威圧的かつ鋭い目をしたボスの相手をしている。彼女の後輩編集者であり僕と友人付き合いのある早坂さんのように震え上がることもなく、いいえと答えた。
「意外な上にも意外ではありますが。まあそれに談志を挙げるなら僕もそのあたりです」
「大学の頃、やたら引き出しの多い男が同じ文芸サークルにいて対抗心で色々読んだり触れたりする内に色々好きになったのよ。ま、仕事でも役立ってるし広く浅くは実益を兼ねた娯楽ってところかしら」
「その人、もしかして例の甘糟さん逃亡幇助した文旬の」
「まあね。っていうか、なんで知ってんのよ。ああ、早坂か」
「はい。昔の彼氏だとか」
「はぁっ!? なにそれ冗談よして」
「違うんですか? 早坂さんはそうじゃないかって」
「お互い絶対それだけは、たとえなにかの間違いで寝たとしてもあり得ない相手って認識だから。早坂の奴はなにデマ流してんの!?」
なにかの間違いで寝たとしてもあり得ない相手とは、また随分と微妙な……。
そんな微妙な関係性では、あの実直誠実な柴犬のように松苗女史に従う早坂さんではそんな誤解をしても仕方ない。
「あくまで推測の域の話としていましたよ」
なにかと苦労人で不憫な目に合いがちな友人のために言い添えながら、高校時代に読んだ覚えのある懐かしいタイトルの文庫を一冊抜き取り、それも買い物に加えることにした。本というものは際限なく増える。
見れば松苗女史も二冊ほど選びとっていた。
「それにしても……早坂と同い年だっていうのにいつも落ち着きはらって淡々としてるわねえ。無機質っぽいというか」
「まあ機械っぽいとはよく言われます」
「学生さんには慕われているみたいだけど」
「慕われているというか、舐められているというか」
何故か二人してレジに並び、話しながら順に会計を済ませて店の外へ出た。
天気の良い冬の日、明るい髪色のセミロングがきらきらとした艶を放っている。
これまで仕事を通じての場でしか松苗女史と会ったことはない。いつもシンプルなブラウスやジャケットスタイルで敏腕編集者らしい迫力ある大人のキャリア女性といった印象が強かったが、休日のプライベートであるためか今日の彼女はもこもことした白に近いベージュのコートを着て、オレンジ色のスカートに茶色のタートルネックのニットと随分柔らかい雰囲気に見える。
淡いピンクの爪先に白っぽくキラキラしたアクセントを施している指に引っ掛けた本の袋をぶらぶらさせながら、斜め後ろで店外書棚に引き留められた様子で特価コーナーの本を眺めている松苗女史を尻目に、黒に近い紺地のステンカラーコートのポケットに入っているスマートフォンを取り出して時間を確認すれば15時を回ったところだった。
「ねえ」
「はい」
さて、これから再び研究室に戻るか、休日らしくのんびり喫茶店に入って買った本でも読むか、家に帰るか、古書店の店外書棚の前で思案しかけたところを松苗女史に呼びかけられて振り返る。
「せっかくだし、お姉さんとお茶でもどう?」
「はあ、まあ構いませんが」
なにがせっかくなのかはわからないが、取り立てて急ぐ用事もない。研究室に立ち寄るのもなんとなく手持ち無沙汰な時間を過ごすくらいなら研究に戻るかといった考えだった。上津原がいるならまた話は別だが、彼は行政主催のシンポジウムの講演で不在だ。
「なにその乗り気なさげな返事は。用事があるなら別にいいのよ」
「取り立てて必ずといった用事はないため承諾したわけですが」
「……ああ、そう」
なんかむかつくとぼやいた松苗女史に、「ああなるほど」と呟いた。
言えば殺されそうだから言ったことはないが、時々妙に可愛らしいと早坂さんが言っていたのはこれかと思いながら、取り出しついでにメールチェックもしてスマートフォンをポケットに戻す。
「なに?」
「いえ、お茶ってどこ行きます?」
*****
松苗たか子、出版大手のカドワカの文芸書籍の編集者。
新人作家の発掘と気難し屋の大御所の扱いに定評があり、その企画力と幅広い人脈から様々なプロジェクトに参画することも度々。偶然に偶然が重なりほぼ完全に彼女の人脈によって立ち上がった、彼女の担当作家である甘糟塔子の作品映像化第一弾『苔の恋愛』でその評価は決定的になったらしい。
業界関係者は敬意を込めて彼女を松苗女史と呼ぶ――とは、彼女と同じカドワカの月刊文芸誌『野人時代』でボスの上津原のコラム連載の担当編集者であり、連絡を取り次ぐうちに友人付き合いとなった早坂さんから、松苗女史に初めて会う以前より聞かされていたことで、自分にとってはそれ以上の説明を必要としない人であった。
上津原と直接仕事で関わる人ならともかく、彼女は早坂さんや甘糟さんを介して間接的に上津原や自分と関わる人物であるし、実際、研究室になにかしらで数度来た際にお茶出しがてら挨拶したのと、上津原と甘糟さんの対談連載の打ち上げで少し話した程度の間柄である。
それなのに、妙に近しい人物に感じられるのはひとえに早坂さんのせいだった。
彼とは月一程度の頻度で飲み食いしたり、ここ一年はそんな機会はめっきりなくなっているもののたまに彼の誘いで合コンに参加したりで、かれこれ四年の付き合いになる。
ちなみに合コンの誘いがなくなったのは他でもない。早坂さんがそれまで絶対服従のトラウマ新人指導の先輩でしかなかった松苗女史に淡い恋心を抱き始めたからであった。
しかしそれも先々月、一年近く微妙なアプローチをし続けた末に、「はっきり告白されてもないし正直一瞬ありかもと思いはしたけど、やっぱりあんたは可愛い舎弟にしか思えないわ。もしそのつもりなら、ごめん」と清々しいほどきっぱりした先回りの断り文句で玉砕した。おまけにその一ヶ月後には、すっかり顔なじみになっていた大学研究棟の事務員女性となにやら“いい感じ”になり付き合い始めたオチまでついている。
――まあなので、こうしてこの人とお茶などしていても、特に問題はないものの……。
「なに」
深煎りコーヒーの苦味を味わいつつ、向き合う松苗女史の顔を見れば彼女は怪訝そうに眉根を寄せた。
「いえ。単純に情報不足と思いまして」
「は?」
「よく考えたら、松苗女史とは直接接点ないですし」
「ああ。言われてみたら……早坂の話で結構前から知ってる気がするけど」
「そうなんですよ。僕も早坂さんから色々聞いてて知った気でいますが、所詮は人の話ですからね」
「ろくな話じゃないでしょ、それ」
「ろくな話とろくでもない話と、割合的には半々ですね。よく来るんですか、ここ」
古書店の上階にあるブックカフェに戻るでもなく、すぐ近くにあるチェーンのコーヒーショップでもなく、ゆっくりできるところにしましょうよと結局靖国通りを歩いて、すずらん通り近くの路地にある山小屋風の古い喫茶店の中二階の席に落ち着いていた。
「本当、上津原センセーとはまた違って歯に衣着せぬって感じね……。そうねぇ、休みの日にたまに。ほらここフードメニューも充実だし。どうして?」
そう言って松苗女史はストローに口をつける。寒い寒いと言いながら店に入っておきながら頼んだのはいちごの生ジュースだった。
「同じ理由で僕もたまに。家から地下鉄二駅ですからね。神保町は散歩や仕事の本なんか探しにちょくちょく来ますし」
「へえ、そうなの。まああたしも地下鉄二駅だし、会社からもまあまあ近いから」
「ああそういえば、この辺出版社多いですもんねえ」
「うちはちょっと距離あるけどね。だから休日が多いわ」
「案外、このあたりでニアミスかすれ違ってたかもですね」
「そうかも。あたし大学の頃から時々ぶらぶらしてたから、小学生や中学生の君とすれ違ってるかもよ」
テーブルに肘をつき、両手を組んだところに顎を乗せてふふんと笑んだ松苗女史の言葉に思わず顔を顰めてしまう。あまり会っていてほしくない。
しかし、あらためて数えるとそれがおかしくない年齢差なのかとコーヒーに添えられたピーナッツを齧りながら思う。たしか甘糟さんの七つ年上。僕とは八歳差。彼女が二十歳の頃は考えたくないが小学生だ。
「やだ、そう考えるとお姉さんなんだか背徳感」
「なにくだらないことを……そもそも女子大生な松苗女史なんて想像つきませんね」
松苗女史のイメージは二年前に出会った時から固定されている。三十路を過ぎてどこか少女ぽい甘糟さんもだけれど、この人も何気に年齢不詳だ。
四十手前で迫力あるキャリア女性なのに、単純に見た目でいえば三十半ばくらいにしか見えない。
「そう?」
「ええ、僕が大学で指導してる女子学生みたいなわけでしょう?」
「その嫌なものでも見るような顔やめてくれない……まあでも女子大生な頃なんて見られたくもないわね。でも大人って不思議よねえ」
「なにがです?」
「女子大生が小学男子なんて連れ回したら子守だけど、そこそこ歳取るとそうならないじゃない。塔子と上津原センセーなんて一回り違いよ。二人とも早生まれで干支同じなんだから。センセー二十歳で塔子まだ小学三年生の幼女じゃない。犯罪よ犯罪!」
「たしかに……」
そう考えると一気に上津原がロリコンみたいに思える。いや、あの人はもともと大人趣味というかなにかしらバリバリやってる気の強い女性が趣味っぽいし、学生から言い寄られても「ガキに興味なんかあるか」で一蹴だからそういったイメージはないけれど。
学生結婚して短い期間で別れたという元奥さんもやり手の温泉旅館女将らしいし。
ああ、それで結構しぶとくバツイチおやじの自分など時間の無駄だのどうのと、第三者から言わせれば自分が甘糟さんを好きだとほとんど認めたも同然のことを言っていたのか。
大体、見込みのある人間は世話焼きながらシバくタイプの人だし、そう考えたら僕がそうじゃないかと思うより随分以前から。
「どうしたの?」
「いえ、我がボスながら今思えばなんてわかりやすいんだあの人……と」
メガネの中央から額を押さえてうなだれると、ああと詰まらなそうに松苗女史はストローを咥えた。グラスの中のピンク色した液体の水位がみるみる下がっていく。
「塔子も、本人自覚なしだったけど対談連載始めて結構早いうちから……口開けばセンセーの話ばっかりであの頃は本当聞いてる方が痒くなってくるというかなんというか」
「はあ。まあでも甘糟さんは仕方ないのでは? あれだけ上津原からひどい扱い受けていたわけですし」
なにせ小学生かといった揶揄ばかりで、彼女の名前すらまともに呼んではいなかった。
それでいてあの研究第一、教育その次、あとは知らんな人が結構優先的に気を回していた。学会の海外出張先から、その時色々あって失踪中だった甘糟さんの居所をつきとめたから連れてこいなどと指示された時は驚いたものだ。
「なにいってんの。ほら、途中でなんかいたじゃない塔子に言い寄った……その男に連れ回された後、ときめいたそいつの話よりずっとセンセーの話してんのよあの子」
「えっ、そうだったんですか? あのゲリラ豪雨で停電起こした時ですよね。うちの立原先生に食事に誘われたとかいった」
「そーそーそれ。上津原センセーも“戻ってこい”とか言ってたんでしょ。わざわざその先生に電話して」
「あの時、実験中なのに連絡先調べろなんて言われて」
「そういえばそうだったわね。学生に舐められるなみたいなこと言われてたし?」
「何故それを」
「その場にいたの。上津原センセーとお話しして。手土産渡されてない?」
「ああ……いわれてみればあの人が帰る時に日本酒渡されたような」
あれ、松苗女史だったのか。
結構いい純米酒だった覚えがある。
「たしかその後やった勉強会の後で学生達と飲みましたよ。実にいいお酒で……」
「でしょっ! たまたま百貨店に実家のが置いてあったから買ったのよ!」
「実家?」
「造り酒屋なのよ、うち。こっちの方では割烹とかに直接行くから、滅多にお店には出回らないんだから」
そういえば……早坂さんから地元ではお嬢さんらしいと聞いたような。
「蔵元のお嬢さん……」
「地元ではねー。さすがにいまは訪問着だけど、年末年始帰ると振袖なんか用意されたりして……もうねー色々面倒で。祖父が地元団体の会長とかやってるものだから」
「それはなかなか。本気のお嬢様な」
「地方のちょっと古い家ってだけよ。ようやく諦めかけてくれてるけど帰るたびに見合いしろ見合いしろって……なんのために東京に進学して就職して自活してると思ってんの」
「はあ。それはまたなにやら大変そうで」
「まあ兄がいるからまだよかったんだけど。万城目くんもぼちぼち言われない?」
「まあ、相手はいないのかとかなんとか親戚の集まりでは詮索はされますが。家は基本放任主義で僕は気儘な末っ子次男ですので」
「羨ましい。塔子も同じ地方出身だけど公務員家庭で、まあもう私は好きに生きるんだろうって思われてますっなんて言うのよねえ」
「ああ、ぽいですねえ。甘糟さんそんな感じしますねえすごく」
しかし……意外な上にも意外だ。とはいえ聞いてしまえばどことなく人を扱い慣れている感じがそれっぽくはあるけれど。
「でも、ご実家を嫌っているわけではないんでしょう?」
でなければ、百貨店に実家の酒があったからと自慢げに話したり、面倒なのがわかっていても毎年きっちり帰省はしないだろう。
「まあ、面倒ってだけだから……ちょっと、なに笑ってんの!?」
「いえ、恐ろしい敏腕編集者なのに可愛らしいところがあるというの本当だと思いまして」
「はあっ!?」
「早坂さんは言えば殺されると言っていましたが」
「あいつ今度シバく!」
「パワハラですよ。先回りして振った人がそれは流石に気の毒でしょう、松苗女史」
いくらか冷めかけたコーヒーをすする。
あの上津原が敵には回したくないなどと口にしていてどんな人かと思ったら、仕事で絡むならともかくそうでなければ結構面白い人ではないですか。
「……あなた、いつもそうなの?」
「いつもそう、とは?」
「認識が誤ってた。上津原センセーがあなたを従えて虐めてると思ってたけど」
逆ね。上津原センセーを制御するドS機械眼鏡。
「失敬な……上津原のパワハラの最大被害者ですよ僕は」
「絶対違う。ねえそれはともかく、その呼び方なんとかならない?」
「はい?」
「業界関係者はもう面倒だから放置してるけど、その松苗女史ってやつ。そうねえ、お姉さんのことはたか子って呼んで?」
「なんの嫌がらせです、それ」
松苗さん、と言えばつまらないと言われたがつまらなくて結構と返しておいた。
対応の厄介度でいえば上津原と弓月さんを足して割ったような人だ。
足して割ったなので、いくぶんか薄めではある。
話が本や落語などの演芸に戻れば、ちょっと驚くほど盛り上がった。
広く浅くは実益を兼ねた娯楽と言うだけあって守備範囲が広く、過去女性とこういった機会で話して興味なしとされた話も、あああたしも好きよそれとかあれはいまひとつじゃないとか、文学は本職だけに興味深い見解を持っている。
さらに驚いたことに、獣医学って本来は多くの人が思うような動物のお医者さんってわけじゃない学問なんでしょうと僕の仕事や専門領域にまで興味を示した。
気がつけば二人揃って、コーヒーを再注文するなどしてすっかり話し込んでしまい、「お腹空いたわねえ」といった松苗女史に誘われるまま場所を日本酒バルへと移していた。
まあ、明日は日曜で午後までに大学へ出ればいいくらいの予定であるしいいかくらいの気でいた。
その後、起きる事などまったく予期すらせずに――。
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