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すれ違い(1)
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“旅に出ます。原稿や仕事の用件はきちんと、必ずきちんとやってメールで送りますので探さないでください。甘糟塔子”
「は?」
複数台鳴る携帯の音や忙しない会話の声、コピー複合機の唸りや紙が擦れる音、等々……を背後に、出版大手カドワカの敏腕編集者・松苗たか子は起動させたばかりのノートパソコンで開いたメールを読んで固まった。
固まったまま、もう一度、開いているメールの文章を読み返す。
旅に出ます。
原稿や仕事の用件はきちんと、必ずきちんとやってメールで送りますので探さないでください。
「甘糟塔子……って、あの小娘ぇえええっ!」
美しき女豹の咆哮に、編集部がしんっ……と水を打ったように一瞬静まりかえる。
そんな周囲の状況には一向頓着せず、松苗女史はすっと優雅な動作でスマートフォンを取り出して特定の番号を押し、耳に当てる。
相手はワンコールで出た。
「はーやーさーかー、招集!」
『ま、松苗先輩っ、僕いま青梅で取材中で……っ』
「じゃ、終わったらソッコーで朝布大! 塔子が逃げた。あの男のせいで追跡できなくなっているし、情報収集!」
『はいぃぃっ!』
何故、塔子が逃げたら朝布大なのか。
何故、逃げたのか。
疑問を挟む余地もなく号令で動く。
「持つべきものは、忠犬よねぇ。さってと、お仕事、お仕事~」
そう平生の状態に戻った彼女は、塔子をそれまでの塔子と同じとその時はまだどこかでそう思っていた。
塔子の行動範囲は自分の目の届く範囲であると。
もはやいまとなってはそうでは無い事を知っているにも関わらず。
皮肉にも、甘糟塔子の行動範囲を広げたのは松苗女史自身であった。
*****
寝ぼけて飲んだミルクティーが、寝落ちる何時間か前に作ったものですでに飲み物としてはアウトな代物でした……などといったミステイクは一人暮らしでは痛恨の打撃となる。
「ううぅ……き、気持ち悪い……」
お腹痛いと腹部を抱えながらフローリングの床を長い黒髪を引きずって這うのは、いまや押しも押されぬ人気恋愛小説家にして、メディアへの露出により可憐な美女といった評もついて回るようになっている甘糟塔子その人であった。
とはいえ、塔子本人は周囲の自分への評判についてはとんと無頓着である。
たまに人づてに聞いたり掲載誌等を自分で読んだりしたところで、映画のイメージと混同されているくらいにしか認識していない。
もっとも、いまの彼女を見れば、彼女の対談相手の上津原が時折彼女を揶揄するように口にする、“和製ホラー映画で井戸から這い出てくる女”といった表現にきっと誰もが頷いてしまうに違いない。
なんとか洗面所にまで辿り着いてすがりつくようにドアを開けて中に入る。
もうだめ吐きそうと、吐いても後始末に困らない場所に顔を伏せ、ぜいぜい咳き込んだところでふと強烈な既視感を塔子は覚えた。
最近……似たようなことがあったような?
「ううっ……~~! はッ、や、もぅ……うぅ……」
仕事をしていた時の常で、昨日の昼からろくに食べていないから胃は空に近く、吐き気はあっても吐くものがない。
苦い唾液の味に涙ぐみながら咽せて苦しんでいた塔子だったが、不意に甦った、呆れた調子の低い声が耳の奥を打った。
『吐き方知らないのかよ』
「え……っ!?」
脳裏を過った残像に驚く間もなく、喉に迫り上ってきたものを塔子は出るまま吐き出し、そうして息を吐いてまだ不調が残る体で洗面所を出ようとしたが、力尽きてずるずるとドアの枠にもたれたまま床にへたり込み、足を廊下に投げ出してぼんやりと、蔓をたぐりよせるように甦った記憶に放心した。
我に返ったのは、すっかり冷えきった体が震え出し始めた頃。
「寒い……」
自らを抱き締めるようにしてよろよろと力無く立ち上がり、洗面台で口を漱いで、覚束ない足取りで寝室へと向かう。
そうだ、こんな風に震えながらベッドへ。
ぼすんと寝室のベッドに倒れ込み、倒れ込んだ状態でもぞもぞと掛け布団を掴み、その中へ横着に額まで潜り込ませる。
「……わ……私っ、と、ととと……」
と、とんでもないことをぉぉっ――!
ちょっと、待って。
どうして、なんで、なにがどうして、そうなって……っ。
なんで、どうして、私、上津原さんに、あんな、寄りかかって。
「ああああぁぁっ!!」
やめてぇぇぇっ、私の記憶っ、ていうか脳っ、思い返すのやめてぇぇぇぇっっ!
気分の悪さも尋常じゃないけれど、それどころじゃない。
私、私、わたしっ!
芋虫状に丸まった布団の塊がベッドの上でごろごろと激しくのたうち回り、ぴたりと動きを止める。
さなぎから中の成虫がでてくるように、巻きついた布団の先端からもぞりと塔子は体調不良とショックで蒼白になった顔を出した。
「私……」
上津原さんと。
芋虫状態でごろんとベッドの上で転がって、塔子はそっと自分の唇に指で触れる。
「なにかするほど困ってないって言ってたのに……」
嘘つきいいぃぃぃ――――っ!!
どうして……あんな。
『まさか、誘ってないよな?』
そんなわけない、そもそも酔っ払っていたし。
でも酔っ払ってたけど……。
あんな。
固く目を閉じても、開いても、どうしたって思い出してしまう一連の動作。
寄りかかった自分の肩を支えるように触れていた手が、滑るように顔へ……大きい手だとは思っていたけれど片手で頬から顎先まで包まれた。
そしてそのまま――。
「……どうして」
あんな自然に、流れるみたいに。なにをしているのかはわかっていたと、思う。
触れ合わせただけなんて、そんなあっさりしたものじゃない。
抵抗する気が起きなかったは酷く酔っていたからだろうか。
『おい、喪女……やらしー反応すんな…』
言葉よりももっと鮮明に、離れていった舌先の感触を覚えている。
かっと頬が火照ったように熱くなり、塔子はマットレスにうつ伏せた。
もし、あの時。
気分が悪くならなかったら、どうなってたんだろう。
「いやでも、なんだか、そういったのとは少し違うような気も……」
なんとなく、怒っていたような気がした覚えが……。
それに。
「どちらかといえばその後のが、なんていうか……」
口の中に指突っ込まれて吐いたり。
混乱して落ち着くまで後ろから抱きかかえられたり。
「……~~っ」
き、キスどころのレベルではないような、気がする――!!
「ッ……うぅっ……い、胃が……気持ち悪いぃ……」
思い出したくはなかった出来事を考えていたら、胃の不快感の波が押し寄せてきたのに呻きながら塔子はくの字に体を曲げた。うつ伏せになったのがよくないのだろうと横臥になる。
「ぅ……ハアッ……うぅっ……」
また、吐き気がする……動けない……。
「はっ……ぁ……」
『ちょっと胃とかが驚いてるだけだ、ゆっくり呼吸しろ……大丈夫だ』
ハアッ、と塔子を大きく息を吐いた。
脳裏を過ぎった低く囁くような声の記憶に、なんとなくゆっくりと息を吸って吐き出す。
しばらくそうして、目を閉じてぐったりとしていたら少しまた落ち着いた。
いまのうちにと、ふらふらリビングへと出て、食あたりの症状に効くと説明書きに書いてある胃腸薬を棚から取り出して飲んでまたベッドへと戻り、一度目を閉じて、数十秒してまた開ける。
「……やっぱりあの人、医者なんだな」
動物のだけど。私、ヒトなのに手当してもらったけれど……。
上津原さんからしてみたら、動物の治療とそんなに変わらないのかもしれないけれど。
でも……。
あああああ……っ、もう、もう、あれもこれも全部消したい――。
私……。
「消えたい……」
*****
幸い胃の不調は三日ほどで治った。
その間、ほとんどなにも食べられず、四日目の今朝になってようやく少し薄めのおかゆが抵抗なく食べられるようになったくらいだったけれど。
それにしても、“新星”の連載原稿を送った後で本当によかった。
「書き上がってなかったら、本当に死んでた……」
今月の大きな仕事はこれで終わりだ。
細かい寄稿や文庫化した他の作家作品に添える解説文などは、どれもメールのやりとりで済む。
他はまだこれから先の仕事ばかり。
次の対談があるけれど、まだ日程は決まっていない。
抱えている仕事について思い巡らせながら、梅雨の頃にもらった名刺を手にそこに書かれた番号をしばらく見つめた後に電話を掛ける。
もしかしたら出ないかもしれないと思っていた相手は、塔子の予想に反してすぐに出た。
名乗って、挨拶を交わし、突然すみませんと詫びて、なにから話せばいいのかも見当がつかずしばらく相手が尋ねてくるまで黙り、結局それ以上に適切な言葉も見つからず、「相談したいことが……」と告げれば、ちょうど夜までは予定が空いていて一人でいるから仕事場にきたらいいと言われ、いま、9階建ての長方形の建物の前に立つに至っている。
告げられてメモした住所に建っていたコンクリート打ちっ放しのビルの一室。
訪ねれば、黒い玄関のドアを開けた人物は塔子を見るなり一瞬驚いたように目を見開いた。
「と、突然、申し訳ありません……弓月さん」
「全然。それよか、なんかやつれてない? トーコちゃん」
「ちょっと……ここ二三日、体調を崩していたので」
「大丈夫? とりあえず、入って」
「あ、はい。お邪魔します」
足を踏み入れれば、生活感がまったく感じられないワンルームだった。
生活感の無さでいえば、塔子の家のまるでモデルルームのようなLDKもそうではあったが、その比ではなかった。
部屋の隅に簡素なキッチンがついている他は、がらんとしている。
組まれた撮影機材や巻き上げられたスクリーン、家具はガラスのローテーブルを挟んだソファセットとマットレスベッドくらいしか見当たらない。
部屋の片隅、カメラ機材の後方の壁に華奢な女性一人くらいなら入れそうに大きく使い込まれた革のトランクが無造作に置かれていた。
「編集部のスタジオとはまた違いますね」
「まあ、これでも兼住宅だしねー。ウォークインのクローゼットは、現像とか加工とか……作業部屋に改造してるけど」
「えっ、でもこの部屋って」
どう見てもスタジオ兼事務所にしか、と言いかけた塔子の言葉を遮るように弓月はくすりと笑んで、両掌を塔子に見せて中途半端な高さにその手をあげた。
「食って、シャワーして、寝る場所あれば別に不自由ないから」
「でも日用品とか……」
「ああ、荷物はそこ」
弓月が指差した方向を塔子が見れば、さっき目にした革のトランクだった。
「服とか細かい私物はあれに入らない以上には増やさないことにしてる」
「はあ……」
本当に撮る事中心な人なんだなあと思いながら、塔子は物珍しい思いで首を巡らし室内を見回す。
そんな塔子に弓月は苦笑を漏らしてキッチンへと歩いていった。
「コーヒーか水かウォッカしかないんだけど」
「あ、お水でいいです」
それしかいまは飲めない。
「水道水だよ? あ、一応、水出るところに元から浄水器はついてるけど」
構わないと返答し、塔子はあらためて弓月の部屋を眺めた。
今度はそこに漂う空気や気配ごと。
スタジオにしては人が出入りしている気配は薄かった。けれど久しく人が来ていないわけでもなさそうだ。よく見れば、フローリングの床に塔子のものではない薄い色の髪の毛が落ちていて、マットレスベッドの上に弓月が羽織るのではなさそうなバスローブなども無造作に置いてある。
「僕の仕事興味ある?」
「ぅわっ! いえ、あのっ……ええっと……」
突然、背後から耳打ちされたのに、塔子が両手を上げて驚きの声を上げれば、可笑しそうな笑い声を滲ませて弓月は塔子から離れた。手に水の入ったグラスを持っている。
「本当っ、僕とはまた違って見ようとするよねぇトーコちゃんて。どうぞ」
グラスはテーブルに置いて、弓月が勧めるままにソファへと塔子はとぼとぼと歩み寄って座った。
「す、すみません。つい、物珍しくて……」
「他の女の子だったら叩き出すところだけど、トーコちゃんはいいよ特別だから」
「はあ……」
叩き出すとはまた随分と乱暴な物言いだ。いつも温厚で人当たりのいい弓月にはあまり似合わない、というより塔子には想像がつかない。
「たまにいるんだよねー。私的なことまで色々探ろうとするモデルのコとかさ」
「はあ。よく、わかりませんが……大変、なんですね」
「で、どうしたの? 相談って」
「えっと」
なにをどう話したらよいものだろう。
「電話で、なんだか思い詰めた声してたけど」
「いえ、その……」
まさか来た早々に問われると思わず、塔子は持ち上げかけたグラスを置いて、しばらく狼狽し、細かなきっかけはともかく頼みたい事だけ話そうと決め、一呼吸置いて、正面に腰掛けた弓月を見た。
対談で会う時のように暢気そうな様子で塔子をぼんやり眺め、話しだすのを待ってくれている弓月に少しばかり緊張が解けて口を開く。
「どこかへ行きたいんです。ちょっとの間でも構わないから、誰も知らないところに!」
「へえ、まさかトーコちゃんがそんなことを僕に言ってくるなんて……」
「め、迷惑なのはわかってます。でも、私が考える場所だときっと松苗さんが突き止めてしまうから……えっと、過去に何度かそういうことがあって。まだ駆け出しの頃なん、です、けど……えっと」
何故か立ち上がって、塔子の側に移動してきた弓月に押されるように塔子がソファの上を横にスライドするように移動すれば、空いた空間に弓月は腰を下ろし、腕をソファの背もたれの上に伸ばす。
まるで後ろから腕を回されているような体勢に塔子がどぎまぎしながら俯いて言い淀めば、それでと弓月は先を促した。
「ゆ、弓月さんはこれまであまりカドワカとも接点がないみたいだし……」
「まったく無かったわけでもないけどね。でも、それちょっと面白そうだ」
「お、面白くなんかないですっ、色々整理したくて一人きりでっ!」
「一人?」
「はい」
「一人、かあ……」
急に伸ばしていた腕を引き戻して組み、うーんと唸りだした弓月になにかまずいことを言ったのかと塔子は弓月を窺うように身を乗り出した。
「はい……あの、なにか?」
「うーん、そんなきょとんとした警戒心ゼロな表情で、身を乗り出されて聞き返されるとねぇ。まあ、出来過ぎた話だなとは思ったけれど」
「えっと……」
「まあ、いいやっ」
ぱんっ、と手を打って弓月は立ち上がると撮影機材がある広々とした、本来ならばリビングとして使われるだろうスペースへと移動した。
「それはまたの機会ということにしよう。いいよ、ただし交換じょーけん!」
「じょ、条件!?」
「あの松苗女史を敵に回して、トーコちゃんの逃亡の手伝いするのは流石の僕も厄介だからねー。タダで協力するってわけには……」
「えっと、しょ、紹介料とか手配料みたいな?」
立ち上がって弓月のいる場所まで歩きかけた塔子に、あははと弓月は軽い笑い声を立てて、「違う、違う」と言って手近にある三脚にセットされたカメラの側に立つと、塔子を手招きしてその正面まで引き寄せた。
「お金とかじゃなくてさ……ちょっと撮らせてよ個人的に」
カシャ。
シャッター音に目をぱちぱちとしばたかせて塔子は、カメラのファイダーを覗き込んで軽く身を屈めている弓月を見る。すぐに弓月はまた背筋を伸ばして顔をカメラから上げた。
「私的なポートレイト」
弓月も背は高い。
上津原とそう変わらないほど……。
途端に思い出しかけた人物の姿を振り払うように塔子は激しく首を横に振った。
「あ、ダメ?」
「い、いえ……あの、これは違って、その……」
「じゃあ、いいよね?」
「え……あ、私などでよろしいの、なら……」
なんだろう。
なんだか……ちょっと、変な雰囲気……?
普段と変わらない感じだけど、一瞬だけ、どこにも逃げられないような威圧感というかそんな……気のせいか。
「うーん、いいね。その初々しい返事。じゃあ準備するから、そっちに立って」
マットレスベッドを背後に巻き上っているスクリーンの前のスペースを指示され、言われるまま塔子は移動して弓月の指示に従う。
「あの……私なにか仕度とか……」
「あ、別にいいよそのままで。仕事じゃないから。言ったでしょ個人的にって……ちょっと暗くしようか」
言いながら窓にかかったブラインドが次々に降ろされて、室内が薄明かりくらいに陰り、部屋のあちこちに小さなライトが取り付けられていることに、塔子は光が点って気がついた
うろうろと忙しなく、部屋の奥、恐らくはクローゼットを改造したという部屋からレンズを持ってきたり、室内の機材を移動させたりしている弓月の様子にやや呆気にとられて、塔子がぼんやりと立っている間に手早く準備は出来たらしい。
「じゃ、トーコちゃん」
そう、声を掛けられてカメラに顔を隠した弓月にレンズ越しに見詰められた瞬間、塔子の背筋がぞわりと粟立った。
え、なに……これは。
なんだか、動けない。
「……緊張してる?」
カメラから顔を上げ、今度は直で、塔子をまっすぐに見た弓月に塔子はゆっくりと頷いた。
室内……ううん違う、弓月さんとの間のほんの三、四メートルの空間の気配が、なにかさっきまでとまるで違う。
雑誌の撮影の時はこんなことはなかった、いつの間にか撮られているといった感じで、こんな。
塔子が困惑を隠せずにいると、ふわっと、微笑むように弓月は笑った。
「素質があるねトーコちゃんは、覗いた瞬間にわかるって勘がいい」
「あの、弓月さ……ん?」
「その緊張は僕とトーコちゃんのいまの関係。上津原先生とだって最初はいまみたいに近くはなかったでしょ?」
といってもこれから僕とトーコちゃんの間で関係を構築していくやり方は、話したりなにかを一緒に見たりといったことの中で少しずつ近づいていくものとは、少し勝手が違うかもだけどね。
「ま、撮る人間としては僕は信頼していいよ、トーコちゃん」
「えっと、あ、はい……」
いつも通りの穏やかな弓月さん、だけど。
なんだか、少し怖い――。
「いつもは見る側だからね、トーコちゃんも」
「え?」
「たまには見られる側も面白いかもね」
上津原先生となにかあった?
不意の質問に見開いた塔子の視界を、周辺に取り付けられた小さなフラッシュの光が白く染上げた。
「は?」
複数台鳴る携帯の音や忙しない会話の声、コピー複合機の唸りや紙が擦れる音、等々……を背後に、出版大手カドワカの敏腕編集者・松苗たか子は起動させたばかりのノートパソコンで開いたメールを読んで固まった。
固まったまま、もう一度、開いているメールの文章を読み返す。
旅に出ます。
原稿や仕事の用件はきちんと、必ずきちんとやってメールで送りますので探さないでください。
「甘糟塔子……って、あの小娘ぇえええっ!」
美しき女豹の咆哮に、編集部がしんっ……と水を打ったように一瞬静まりかえる。
そんな周囲の状況には一向頓着せず、松苗女史はすっと優雅な動作でスマートフォンを取り出して特定の番号を押し、耳に当てる。
相手はワンコールで出た。
「はーやーさーかー、招集!」
『ま、松苗先輩っ、僕いま青梅で取材中で……っ』
「じゃ、終わったらソッコーで朝布大! 塔子が逃げた。あの男のせいで追跡できなくなっているし、情報収集!」
『はいぃぃっ!』
何故、塔子が逃げたら朝布大なのか。
何故、逃げたのか。
疑問を挟む余地もなく号令で動く。
「持つべきものは、忠犬よねぇ。さってと、お仕事、お仕事~」
そう平生の状態に戻った彼女は、塔子をそれまでの塔子と同じとその時はまだどこかでそう思っていた。
塔子の行動範囲は自分の目の届く範囲であると。
もはやいまとなってはそうでは無い事を知っているにも関わらず。
皮肉にも、甘糟塔子の行動範囲を広げたのは松苗女史自身であった。
*****
寝ぼけて飲んだミルクティーが、寝落ちる何時間か前に作ったものですでに飲み物としてはアウトな代物でした……などといったミステイクは一人暮らしでは痛恨の打撃となる。
「ううぅ……き、気持ち悪い……」
お腹痛いと腹部を抱えながらフローリングの床を長い黒髪を引きずって這うのは、いまや押しも押されぬ人気恋愛小説家にして、メディアへの露出により可憐な美女といった評もついて回るようになっている甘糟塔子その人であった。
とはいえ、塔子本人は周囲の自分への評判についてはとんと無頓着である。
たまに人づてに聞いたり掲載誌等を自分で読んだりしたところで、映画のイメージと混同されているくらいにしか認識していない。
もっとも、いまの彼女を見れば、彼女の対談相手の上津原が時折彼女を揶揄するように口にする、“和製ホラー映画で井戸から這い出てくる女”といった表現にきっと誰もが頷いてしまうに違いない。
なんとか洗面所にまで辿り着いてすがりつくようにドアを開けて中に入る。
もうだめ吐きそうと、吐いても後始末に困らない場所に顔を伏せ、ぜいぜい咳き込んだところでふと強烈な既視感を塔子は覚えた。
最近……似たようなことがあったような?
「ううっ……~~! はッ、や、もぅ……うぅ……」
仕事をしていた時の常で、昨日の昼からろくに食べていないから胃は空に近く、吐き気はあっても吐くものがない。
苦い唾液の味に涙ぐみながら咽せて苦しんでいた塔子だったが、不意に甦った、呆れた調子の低い声が耳の奥を打った。
『吐き方知らないのかよ』
「え……っ!?」
脳裏を過った残像に驚く間もなく、喉に迫り上ってきたものを塔子は出るまま吐き出し、そうして息を吐いてまだ不調が残る体で洗面所を出ようとしたが、力尽きてずるずるとドアの枠にもたれたまま床にへたり込み、足を廊下に投げ出してぼんやりと、蔓をたぐりよせるように甦った記憶に放心した。
我に返ったのは、すっかり冷えきった体が震え出し始めた頃。
「寒い……」
自らを抱き締めるようにしてよろよろと力無く立ち上がり、洗面台で口を漱いで、覚束ない足取りで寝室へと向かう。
そうだ、こんな風に震えながらベッドへ。
ぼすんと寝室のベッドに倒れ込み、倒れ込んだ状態でもぞもぞと掛け布団を掴み、その中へ横着に額まで潜り込ませる。
「……わ……私っ、と、ととと……」
と、とんでもないことをぉぉっ――!
ちょっと、待って。
どうして、なんで、なにがどうして、そうなって……っ。
なんで、どうして、私、上津原さんに、あんな、寄りかかって。
「ああああぁぁっ!!」
やめてぇぇぇっ、私の記憶っ、ていうか脳っ、思い返すのやめてぇぇぇぇっっ!
気分の悪さも尋常じゃないけれど、それどころじゃない。
私、私、わたしっ!
芋虫状に丸まった布団の塊がベッドの上でごろごろと激しくのたうち回り、ぴたりと動きを止める。
さなぎから中の成虫がでてくるように、巻きついた布団の先端からもぞりと塔子は体調不良とショックで蒼白になった顔を出した。
「私……」
上津原さんと。
芋虫状態でごろんとベッドの上で転がって、塔子はそっと自分の唇に指で触れる。
「なにかするほど困ってないって言ってたのに……」
嘘つきいいぃぃぃ――――っ!!
どうして……あんな。
『まさか、誘ってないよな?』
そんなわけない、そもそも酔っ払っていたし。
でも酔っ払ってたけど……。
あんな。
固く目を閉じても、開いても、どうしたって思い出してしまう一連の動作。
寄りかかった自分の肩を支えるように触れていた手が、滑るように顔へ……大きい手だとは思っていたけれど片手で頬から顎先まで包まれた。
そしてそのまま――。
「……どうして」
あんな自然に、流れるみたいに。なにをしているのかはわかっていたと、思う。
触れ合わせただけなんて、そんなあっさりしたものじゃない。
抵抗する気が起きなかったは酷く酔っていたからだろうか。
『おい、喪女……やらしー反応すんな…』
言葉よりももっと鮮明に、離れていった舌先の感触を覚えている。
かっと頬が火照ったように熱くなり、塔子はマットレスにうつ伏せた。
もし、あの時。
気分が悪くならなかったら、どうなってたんだろう。
「いやでも、なんだか、そういったのとは少し違うような気も……」
なんとなく、怒っていたような気がした覚えが……。
それに。
「どちらかといえばその後のが、なんていうか……」
口の中に指突っ込まれて吐いたり。
混乱して落ち着くまで後ろから抱きかかえられたり。
「……~~っ」
き、キスどころのレベルではないような、気がする――!!
「ッ……うぅっ……い、胃が……気持ち悪いぃ……」
思い出したくはなかった出来事を考えていたら、胃の不快感の波が押し寄せてきたのに呻きながら塔子はくの字に体を曲げた。うつ伏せになったのがよくないのだろうと横臥になる。
「ぅ……ハアッ……うぅっ……」
また、吐き気がする……動けない……。
「はっ……ぁ……」
『ちょっと胃とかが驚いてるだけだ、ゆっくり呼吸しろ……大丈夫だ』
ハアッ、と塔子を大きく息を吐いた。
脳裏を過ぎった低く囁くような声の記憶に、なんとなくゆっくりと息を吸って吐き出す。
しばらくそうして、目を閉じてぐったりとしていたら少しまた落ち着いた。
いまのうちにと、ふらふらリビングへと出て、食あたりの症状に効くと説明書きに書いてある胃腸薬を棚から取り出して飲んでまたベッドへと戻り、一度目を閉じて、数十秒してまた開ける。
「……やっぱりあの人、医者なんだな」
動物のだけど。私、ヒトなのに手当してもらったけれど……。
上津原さんからしてみたら、動物の治療とそんなに変わらないのかもしれないけれど。
でも……。
あああああ……っ、もう、もう、あれもこれも全部消したい――。
私……。
「消えたい……」
*****
幸い胃の不調は三日ほどで治った。
その間、ほとんどなにも食べられず、四日目の今朝になってようやく少し薄めのおかゆが抵抗なく食べられるようになったくらいだったけれど。
それにしても、“新星”の連載原稿を送った後で本当によかった。
「書き上がってなかったら、本当に死んでた……」
今月の大きな仕事はこれで終わりだ。
細かい寄稿や文庫化した他の作家作品に添える解説文などは、どれもメールのやりとりで済む。
他はまだこれから先の仕事ばかり。
次の対談があるけれど、まだ日程は決まっていない。
抱えている仕事について思い巡らせながら、梅雨の頃にもらった名刺を手にそこに書かれた番号をしばらく見つめた後に電話を掛ける。
もしかしたら出ないかもしれないと思っていた相手は、塔子の予想に反してすぐに出た。
名乗って、挨拶を交わし、突然すみませんと詫びて、なにから話せばいいのかも見当がつかずしばらく相手が尋ねてくるまで黙り、結局それ以上に適切な言葉も見つからず、「相談したいことが……」と告げれば、ちょうど夜までは予定が空いていて一人でいるから仕事場にきたらいいと言われ、いま、9階建ての長方形の建物の前に立つに至っている。
告げられてメモした住所に建っていたコンクリート打ちっ放しのビルの一室。
訪ねれば、黒い玄関のドアを開けた人物は塔子を見るなり一瞬驚いたように目を見開いた。
「と、突然、申し訳ありません……弓月さん」
「全然。それよか、なんかやつれてない? トーコちゃん」
「ちょっと……ここ二三日、体調を崩していたので」
「大丈夫? とりあえず、入って」
「あ、はい。お邪魔します」
足を踏み入れれば、生活感がまったく感じられないワンルームだった。
生活感の無さでいえば、塔子の家のまるでモデルルームのようなLDKもそうではあったが、その比ではなかった。
部屋の隅に簡素なキッチンがついている他は、がらんとしている。
組まれた撮影機材や巻き上げられたスクリーン、家具はガラスのローテーブルを挟んだソファセットとマットレスベッドくらいしか見当たらない。
部屋の片隅、カメラ機材の後方の壁に華奢な女性一人くらいなら入れそうに大きく使い込まれた革のトランクが無造作に置かれていた。
「編集部のスタジオとはまた違いますね」
「まあ、これでも兼住宅だしねー。ウォークインのクローゼットは、現像とか加工とか……作業部屋に改造してるけど」
「えっ、でもこの部屋って」
どう見てもスタジオ兼事務所にしか、と言いかけた塔子の言葉を遮るように弓月はくすりと笑んで、両掌を塔子に見せて中途半端な高さにその手をあげた。
「食って、シャワーして、寝る場所あれば別に不自由ないから」
「でも日用品とか……」
「ああ、荷物はそこ」
弓月が指差した方向を塔子が見れば、さっき目にした革のトランクだった。
「服とか細かい私物はあれに入らない以上には増やさないことにしてる」
「はあ……」
本当に撮る事中心な人なんだなあと思いながら、塔子は物珍しい思いで首を巡らし室内を見回す。
そんな塔子に弓月は苦笑を漏らしてキッチンへと歩いていった。
「コーヒーか水かウォッカしかないんだけど」
「あ、お水でいいです」
それしかいまは飲めない。
「水道水だよ? あ、一応、水出るところに元から浄水器はついてるけど」
構わないと返答し、塔子はあらためて弓月の部屋を眺めた。
今度はそこに漂う空気や気配ごと。
スタジオにしては人が出入りしている気配は薄かった。けれど久しく人が来ていないわけでもなさそうだ。よく見れば、フローリングの床に塔子のものではない薄い色の髪の毛が落ちていて、マットレスベッドの上に弓月が羽織るのではなさそうなバスローブなども無造作に置いてある。
「僕の仕事興味ある?」
「ぅわっ! いえ、あのっ……ええっと……」
突然、背後から耳打ちされたのに、塔子が両手を上げて驚きの声を上げれば、可笑しそうな笑い声を滲ませて弓月は塔子から離れた。手に水の入ったグラスを持っている。
「本当っ、僕とはまた違って見ようとするよねぇトーコちゃんて。どうぞ」
グラスはテーブルに置いて、弓月が勧めるままにソファへと塔子はとぼとぼと歩み寄って座った。
「す、すみません。つい、物珍しくて……」
「他の女の子だったら叩き出すところだけど、トーコちゃんはいいよ特別だから」
「はあ……」
叩き出すとはまた随分と乱暴な物言いだ。いつも温厚で人当たりのいい弓月にはあまり似合わない、というより塔子には想像がつかない。
「たまにいるんだよねー。私的なことまで色々探ろうとするモデルのコとかさ」
「はあ。よく、わかりませんが……大変、なんですね」
「で、どうしたの? 相談って」
「えっと」
なにをどう話したらよいものだろう。
「電話で、なんだか思い詰めた声してたけど」
「いえ、その……」
まさか来た早々に問われると思わず、塔子は持ち上げかけたグラスを置いて、しばらく狼狽し、細かなきっかけはともかく頼みたい事だけ話そうと決め、一呼吸置いて、正面に腰掛けた弓月を見た。
対談で会う時のように暢気そうな様子で塔子をぼんやり眺め、話しだすのを待ってくれている弓月に少しばかり緊張が解けて口を開く。
「どこかへ行きたいんです。ちょっとの間でも構わないから、誰も知らないところに!」
「へえ、まさかトーコちゃんがそんなことを僕に言ってくるなんて……」
「め、迷惑なのはわかってます。でも、私が考える場所だときっと松苗さんが突き止めてしまうから……えっと、過去に何度かそういうことがあって。まだ駆け出しの頃なん、です、けど……えっと」
何故か立ち上がって、塔子の側に移動してきた弓月に押されるように塔子がソファの上を横にスライドするように移動すれば、空いた空間に弓月は腰を下ろし、腕をソファの背もたれの上に伸ばす。
まるで後ろから腕を回されているような体勢に塔子がどぎまぎしながら俯いて言い淀めば、それでと弓月は先を促した。
「ゆ、弓月さんはこれまであまりカドワカとも接点がないみたいだし……」
「まったく無かったわけでもないけどね。でも、それちょっと面白そうだ」
「お、面白くなんかないですっ、色々整理したくて一人きりでっ!」
「一人?」
「はい」
「一人、かあ……」
急に伸ばしていた腕を引き戻して組み、うーんと唸りだした弓月になにかまずいことを言ったのかと塔子は弓月を窺うように身を乗り出した。
「はい……あの、なにか?」
「うーん、そんなきょとんとした警戒心ゼロな表情で、身を乗り出されて聞き返されるとねぇ。まあ、出来過ぎた話だなとは思ったけれど」
「えっと……」
「まあ、いいやっ」
ぱんっ、と手を打って弓月は立ち上がると撮影機材がある広々とした、本来ならばリビングとして使われるだろうスペースへと移動した。
「それはまたの機会ということにしよう。いいよ、ただし交換じょーけん!」
「じょ、条件!?」
「あの松苗女史を敵に回して、トーコちゃんの逃亡の手伝いするのは流石の僕も厄介だからねー。タダで協力するってわけには……」
「えっと、しょ、紹介料とか手配料みたいな?」
立ち上がって弓月のいる場所まで歩きかけた塔子に、あははと弓月は軽い笑い声を立てて、「違う、違う」と言って手近にある三脚にセットされたカメラの側に立つと、塔子を手招きしてその正面まで引き寄せた。
「お金とかじゃなくてさ……ちょっと撮らせてよ個人的に」
カシャ。
シャッター音に目をぱちぱちとしばたかせて塔子は、カメラのファイダーを覗き込んで軽く身を屈めている弓月を見る。すぐに弓月はまた背筋を伸ばして顔をカメラから上げた。
「私的なポートレイト」
弓月も背は高い。
上津原とそう変わらないほど……。
途端に思い出しかけた人物の姿を振り払うように塔子は激しく首を横に振った。
「あ、ダメ?」
「い、いえ……あの、これは違って、その……」
「じゃあ、いいよね?」
「え……あ、私などでよろしいの、なら……」
なんだろう。
なんだか……ちょっと、変な雰囲気……?
普段と変わらない感じだけど、一瞬だけ、どこにも逃げられないような威圧感というかそんな……気のせいか。
「うーん、いいね。その初々しい返事。じゃあ準備するから、そっちに立って」
マットレスベッドを背後に巻き上っているスクリーンの前のスペースを指示され、言われるまま塔子は移動して弓月の指示に従う。
「あの……私なにか仕度とか……」
「あ、別にいいよそのままで。仕事じゃないから。言ったでしょ個人的にって……ちょっと暗くしようか」
言いながら窓にかかったブラインドが次々に降ろされて、室内が薄明かりくらいに陰り、部屋のあちこちに小さなライトが取り付けられていることに、塔子は光が点って気がついた
うろうろと忙しなく、部屋の奥、恐らくはクローゼットを改造したという部屋からレンズを持ってきたり、室内の機材を移動させたりしている弓月の様子にやや呆気にとられて、塔子がぼんやりと立っている間に手早く準備は出来たらしい。
「じゃ、トーコちゃん」
そう、声を掛けられてカメラに顔を隠した弓月にレンズ越しに見詰められた瞬間、塔子の背筋がぞわりと粟立った。
え、なに……これは。
なんだか、動けない。
「……緊張してる?」
カメラから顔を上げ、今度は直で、塔子をまっすぐに見た弓月に塔子はゆっくりと頷いた。
室内……ううん違う、弓月さんとの間のほんの三、四メートルの空間の気配が、なにかさっきまでとまるで違う。
雑誌の撮影の時はこんなことはなかった、いつの間にか撮られているといった感じで、こんな。
塔子が困惑を隠せずにいると、ふわっと、微笑むように弓月は笑った。
「素質があるねトーコちゃんは、覗いた瞬間にわかるって勘がいい」
「あの、弓月さ……ん?」
「その緊張は僕とトーコちゃんのいまの関係。上津原先生とだって最初はいまみたいに近くはなかったでしょ?」
といってもこれから僕とトーコちゃんの間で関係を構築していくやり方は、話したりなにかを一緒に見たりといったことの中で少しずつ近づいていくものとは、少し勝手が違うかもだけどね。
「ま、撮る人間としては僕は信頼していいよ、トーコちゃん」
「えっと、あ、はい……」
いつも通りの穏やかな弓月さん、だけど。
なんだか、少し怖い――。
「いつもは見る側だからね、トーコちゃんも」
「え?」
「たまには見られる側も面白いかもね」
上津原先生となにかあった?
不意の質問に見開いた塔子の視界を、周辺に取り付けられた小さなフラッシュの光が白く染上げた。
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