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人生の伴侶(1)
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蒸し暑いなあ……もうこの季節はクーラー効いた店内でしょう。
そんな文句ともぼやきともつかない事を口にしながら、三脚に設置した一眼レフカメラの角度を自在に動かしてはシャッターを切るカメラマンが汗を拭っている。
通りに面したオープンテラスのカフェはたしかに蒸し暑い。梅雨の晴れ間な空からは容赦なく日が照っていた。
アジアンリゾート風を狙い、日よけとインテリアを兼ね空きスペースのここかしこに置かれている鉢植えの観葉植物も、リゾートというよりは鬱蒼と茂る熱帯雨林を思わせて蒸し暑さを感じさせるのに一役買っている。
「では、小説の中の出来事はあくまで甘糟さんの創作ということですか?」
「……ええ」
この手の質問を受けるのは何度目だろうか。
写真を撮られるのは苦手だが、さすがにインタビューを受けることそれ自体には慣れてきた。
求められるのは作家・甘糟塔子の言葉だ。
塔子本人そのものではない。
インタビュアーと向かい合い、テーマに沿って記事の中身を作り上げる点では編集者との打ち合わせに似ている。そう考えれば、一気に気が楽になった。
仕事であれば、人となにを話していいかなどと悩んだり躊躇う必要はない。
テレビとラジオは、本人のキャラクターが求められる部分があるから困惑するが、幸い、映画の上映期間が終わって以降、潮が引いたようにそういった類いの話は来なくなった。少し間を置いてディスク化の時に一、二度宣伝用のコメントを求められただけだ。
「小説の出来事がすべて実体験なら、もう何回結婚して不倫したかわかりませんし」
「たしかにそうですよね」
なにがおかしかったのか、野上と名乗った女性インタビュアーはくすりと笑った。取材の申し込みがあった雑誌の専属ライターだそうで、松苗女史と同世代のショートカットの似合うボーイッシュな感じの女性だった。話し方がニュースキャスターのようにはきはきしている。
「同じ経験を形を変えて作品に反映させるようなこともないですか?」
「ええっと、どうでしょうか。人の経験というものは千差万別だとは思いますが案外パターンがあるようにも思えます」
「パターン……ですか?」
「ええ、例えば映画であればボーイ・ミーツ・ガール的な経験はそれこそ繰り返し描かれるパターンです。けれどエピソードは異なりますし、様々な人が作品を作り上げているわけで同じ経験の繰り返しとは言えません」
「でも甘糟さんの作品は甘糟さんお一人で書いているわけですよね?」
「勿論、私の小説は私が書いています。けれど登場人物にはそれぞれのキャラクターがあり人生の背景がありますので。もし同じ経験だと感じたのであればそのパターンに分類されるものなのかもしれません……私自身は十代の頃から仕事ばかりで人生経験に乏しいですから」
そう、自分にはおよそ恋愛経験どころか人間関係のなかで普通の人なら経験するだろう事にも乏しいと、塔子は少し不可解そうに瞬きしている野上に内心ひとりごちる。
それを補っているのは、古今東西の作品に描かれる人間や人生というものや、ニュースや周辺で見聞き出来る出来事しかない。幸い昨今ではあらゆる情報媒体からいくらでもそれらに触れられる。
きっと、いまの世でなければ作家なんて職業はこんなにも続けられなかったに違いない。自分の手足を動かして触れらるものはあまりに範囲が狭過ぎる。
夥しい量の情報から得た、人生経験というもののストーリーを設定や登場人物に合わせてシミュレートして文字に起こすようなことはきっと出来ない。
「それに、作品のエピソードはどれを取っても自分のこれまでの人生とはかけ離れたものですし」
自分で書いておきながら、そのストーリーの体感も実際にその経験が人生にどのような意味を持つかも塔子には殆どわからない。
「でも、甘糟さん美人だしモテるでしょう?」
とんでもないっと塔子は両手と首を振って否定し、指先に触れたスプーンがかしゃんとカップにぶつかって音を立てた。
「ほぼ毎日、十数時間は家で仕事してて出会いもないです……」
「十数時間っ? って、毎日ですか?!」
「あ、はい」
目を丸くしてという形容がぴったりな表情で尋ねてきた野上に、塔子は不思議な思いで頷いた。
あれ、私なにかおかしなこと言った?
「あはは、野上さん。甘糟さんがすっごい不思議そうな顔してますよ」
パシャ、と音と同時に目に入った光に反射的に塔子は顔を顰めた。
「あ……と、眩しかったかな」
「いえ、大丈夫です」
「まー、作家さんって書くのが仕事だから家で作業する時間が多くなるよね」
「もうっ、邪魔しないでよ弓月くん」
「ただ黙って撮ってるの退屈なんですよ」
野上の苦笑混じりの文句に、三十半ば過ぎのカメラマン男性はいつの間にか三脚から外して構えた彼の商売道具を覗き込みながら言葉を返した。
「被写体がいいと特に」
パシャ、とまた塔子の視界が光ったが今度は先程のような眩しさは感じなかった。
「弓月くん、いま仕事中」
同行のカメラマンは雑誌専属の野上とは違って別契約のフリーランスらしいが、何度か組んで仕事をしているのだろう。取材を始める前から互いに気安いやり取りを交わしている。
「結構、作家先生の写真撮る機会あって。普通の会社員が会社で働いてるくらい普段は家で仕事してる人は多いけど、さすがに毎日十数時間は珍しいかな」
「よく考えたら、連載小説だけじゃなくエッセイや今日みたいなインタビュー記事なんかも見かけますもんね。甘糟さん今が旬の作家だし、仕事量考えるとたしかにそれぐらいでないと追いつかないですよね」
どうやら二人共、塔子のここ最近の生活だと誤解しているらしい。本当はデビュー前からそうなのだが、先程の反応からそれは言わないでおくのが良さそうだと塔子は判断した。
それに、仕事量でいえばたしかにここ最近は野上の言う通りではあった。
けれど。
「ええと、そうなんですけど……いまが旬は……困るかも……」
「え?」
「私、書くことしか出来ないですし、けれどいつまで書かせてもらえるかわからないので……旬より、通年作物や乾物みたいな感じがいいです」
「通年作物か乾物、ですか。ミリオンセラー作家でキャリアも長いのに強い危機感をお持ちなんですね」
「十九で少女小説の文庫を出して、いまみたいな一般文芸に移ってまだ数年ですから……」
感嘆したように言われて、またおかしなことを言ってしまったかとやや焦って塔子は俯き、言い訳がましいと思いながらも補足すれば、すぐ横からヒュウと口笛が鳴った。
「へえ、見た目と恋愛ってジャンルでもっとふわふわした感じの作家かと思ってたら、意外だな」
口笛にカシャカシャと連続でシャッターを切る音が続いたのに、塔子が弓月に目を向ければカメラの向こうで軽く目を細めて笑んだ。ついつられて口角を持ち上げれば再びシャッター音が連続で鳴る。
「うーん、美人の微笑みは吸引力あるねぇ」
弓月はけして穏やかそうに見えるタイプの男性ではない。背が高くやや無骨な感じでカメラマンらしく視線に鋭さがある。
けれどどこか人の緊張を解くような人好きする笑みで、するりと懐に入り込むような親しみを感じさせ、人をむやみに怯えさせるような怖さはまったくない。
似た背格好でも塔子が知る人物とは大違いだ。
「だから仕事中。まったく……彼、こう見えてバツ2ですから、甘糟さん気をつけてくださいね」
「はあ……」
なにをどう気をつけるのか塔子にはわからなかったが、野上がやけに怖い顔で言うので相槌を打てば弓月が抗議の声を上げた。
「ひどいな野上さん、個人情報漏洩だ、それ」
「うるさい。こっちの邪魔しないでよ」
「あの……バツ2って、二度離婚したってことですよね?」
「ほらぁ、甘糟さんが警戒してる」
カメラから顔を上げて非難がましい目つきで野上を見下ろした弓月に、塔子は「あ、いえ……」とその場を取り繕うように声を上げた。
「そういったわけではなくて。あの……どうして離婚されたのかなって」
「はい?」
塔子としてはごく素朴な疑問だったのだが、頓狂な声を弓月は上げた。そういえば最近同じような質問をした時も相手は妙な様子になった。
こういったことはやはり聞いてはいけないことなのだろうかと塔子は弓月を見上げる。
しばらく塔子の顔をぼんやり眺めていた弓月だったが気分を害した様子には見えず、しばらくして先をどうぞと促すように肩を竦めたため、塔子は質問を続けた。
「好きだったり大事にしたかったり側にいたかったから、結婚されたわけですよね?」
「うーん……まあね」
「途中で別の人とか思うなら、恋人でいいわけじゃないですか」
「まあ……一理あるか」
「結婚までして、どうして別れてしまうのかなと。しかも一度ならず二度もっ」
けらけらと野上が腹部を抱えるように笑い出す。
ううーん、と小さく唸って弓月はファインダーを覗きこみ、レンズ越しに塔子を見た。
直に視線を向けられるより、何故かいたたまれない気持ちがしたのに塔子が俯けば、またふっと弓月が笑んだ気配がした。
「甘糟さんって天然? それとも作家の性ってやつ? どちらにしろ容赦ないことに変わりないけど」
「もっと言ってやってよ、甘糟さん。全然っ懲りないから彼」
まいったなと首の後ろに手をやって苦笑している弓月に、やや辛辣な調子でそう言った野上に驚き塔子は二人を交互に見た。
「えっと……」
「すごく盛り上がって結婚するくせに、しばらくすると違ったとか言って違う女性に移るんだから……悪い人じゃないんだけどね」
「取材相手に暴露するかなそういうこと。あ、この人一番目の奥さんで」
「ええっ!?」
がたっと勢いよく立ち上がった塔子に店内の客の視線が集中し、笑っていた表情を引き攣らせた野上は腹部を抱えていた腕を組んで溜息を吐いた。
「ちょっと、そっちこそそういうことなんで言うかな」
「あ……ごめんなさい」
驚き過ぎたと塔子が腰を下ろせば、一瞬集まった視線は再び無関心に分散する。塔子が恐縮したのに気を遣ったのか、野上は張り付けたような微笑みを彼女に見せた。
「悪いのはこの人だから、気にしないで」
「え……あ、はい」
「そういえば甘糟さんって、独身なんですよねぇ」
インタビューの続きなのか会話なのかどっちつかずな野上の言葉に塔子は首を傾げた。
「ええ、まあ……どうしてですか?」
「本の印象が強くて、つい忘れちゃうというか」
「忘れちゃう?」
「甘糟さん書かれているじゃないですか、好きでもどうにもしようがないような夫婦の微妙なすれ違いとか……いまだから言える話、この人とごたごたしてた時に甘糟さんの小説に結構ハマってたんですよ」
どうやら会話の続きだったらしい。
自分の書いた本に夢中になってくれたというのは、書き手としてはうれしいことではあるけれど、事情を聞いての上では複雑なものを覚える。
反応に困って、塔子は、人によっては冷淡に思えるような無表情で固まっていた。
「些細な事で憎しみに近いものを感じちゃったりとかそうそうそれそれって感じで、結婚って好きとかそういうものだけじゃないんですよねぇ……ほんと。経験ないのにああいうの書けるってちょっと不思議で恐いですよね。あ、誉め言葉ですよ」
「はあ……」
そのまま受け取っていいものかどうか、考えあぐねて曖昧な表情で塔子は頷いた。
そんな野上とのやりとりをずっと、弓月は塔子に焦点を合わせたレンズ越しに見ていたらしい。
「野上さん、そろそろ次の時間近づいてきてるんじゃない?」
カメラを構えたまま声をかけた弓月に、野上は腕時計を見た。
「あ、そうね。もうっ、いらない話で時間使っちゃったじゃない……聞きたかったお話は聞けたけれど。甘糟さん、今日は貴重なお時間をありがとうございました」
「あ、はい。こちらこそっ……どうも」
テーブルに頭を打ち付けそうに深くおじぎして塔子が顔を上げた時にはもう、野上は席を立って数歩離れた場所から背中を見せていた。
次の約束の時間が迫っているのだろう。忙しない様子で道路に向かって手を挙げ、呼び止めたタクシーに乗り込んで去っていく姿をカチャカチャと機材を片付ける音を聞きながら見送って、あれ、と塔子は振り返った。
野上に同行せず、地面に屈んでのんびりと折り畳んだ三脚を黒い大きなナイロンバッグにしまう弓月がいる。
「次回作、もしかして結婚する相手とはみたいなのがテーマだったりする?」
「え?」
「そういう顔してた」
「顔……?」
「そ、顔」
ファスナーを閉じる音をさせ、よいしょっと言いながらバッグを背負って弓月は立ち上がると、デザインと実用を兼ねているらしいポケットの多くついた薄手のジャケットのあちこちを探った。
「それか『野人時代』かな? ここ最近の企画では一番なんじゃない。予定調和な穏便さがない対談で面白い。今月の第二回目もまあまあだったし。上津原氏との疑似デート?」
「は、恥ずかしいので……い、言わないでください」
「恥ずかしいんだ」
恐ろしいことに、例の猫カフェで偶然、上津原と出くわした時の出来事が第二回目の対談記事となっていた。
上津原の仕事が多忙を極め、対面でなくともやりとりを交わす時間の調整が取れそうになく、おまけにそれを見越していた彼が、塔子を強引に引っ張っていった店に入るなり携帯電話のボイスレコーダーをオンにして、ご丁寧に店に許可まで取って撮影まで行い、それらをすべて早坂に送りつけたらしい。
あんたの部屋を掃除していたあたしを放置してお食事していた時の書き起すことにしたそうよ、と松苗女史からの知らせを聞いた時は、塔子は思わず携帯電話を取り落としてしまった。
松苗女史の連絡から三日と経たずに届いた初稿を読んで、これは意図的に会話順を入れ替えるなり加筆しないと対談にならないと思ったのは塔子だけではなかったようだ。
上津原が彼の分も含めて塔子に好きに直してもらってくれと言っていたのでお願いしますと、早坂から無茶振りも過ぎる依頼があった。
いくらなんでもそれはと塔子が上津原の研究室へ電話をかければ、「そっちのが読み物に関してはプロだろ」の一言で片付けられ一方的に通話を切られた。
結局、出来る限り発言内容を損なわないよう、早坂と相談しながら共同作業でテーマに沿って原稿を直したのだった。
やはりまあまあかと、弓月の言葉を塔子は受け止めた。けれど、このどこか鋭いものを感じさせるカメラマンが読んでその評価に止まったのなら、読み物としては最低限のものにはなっていたのだと思うことにする。
ベタ起こしのままの対談記事などありえないが、そもそも対談を前提にしていない会話を強引に使った不納得感が塔子にはあった。
「次号は……もう少しましだと思います」
「へえ。ええと、名刺どこに入れてたっけ」
自身の都合で編集部に迷惑をかけた思いがあるのか、第三回目“意外な一面”についての対談は上津原が協力的だった。
おまけに同席した松苗女史が早坂にかわって進行役となり、テーマが塔子にとっても話しやすいものだったこともあって、奇蹟のように対談らしい対談になっている。
もっとも上津原との見解の相違は相変わらず。穏便さなど欠片もない対談となっている。
それに松苗女史と上津原の肉食獣同士の牽制のような名刺交換は背筋が凍るような怖さで、対談中ずっと奇妙な緊張感が続いていたけれど。
「あの……次の取材があるのでは?」
「僕はここで終わり」
「そうですか」
「お、あったあった。駆け出しのフリーだから撮れといわれたらなんでも撮るけど。一応、人物撮影を売りにしてるんで、著者近影とか必要な際はこの番号まで」
弓月の声に我に返り、差し出された名刺を塔子は立ち上がって受け取った。
名前とメールアドレスだけの名刺に携帯電話の番号が書き加えられている。
印字された名前の文字に、思わず塔子は弓月を見た。
「弓月、誠、さん……」
「バツ2で“誠”もなにもないって思ったでしょ、いま」
「い、いえっ……どうも……ありがとうございます」
「人生の伴侶は、一度や二度ではそう見つからない」
「え?」
「だから離婚した。気がない相手を縛り続けることはない。僕と別れる前の彼女はあんなに生き生きとはしていなかった」
名前とそう食い違いはないでしょ、と囁いて弓月は店のスペースから道路へと出ていった。
塔子は手の中に残った名刺に目を落し、再び席に腰を下ろすと追加の紅茶を頼んで、道路を行き交う人をぼんやりと眺めながら物思いに沈む。
人生の伴侶。次の対談テーマ。
塔子にとっては恋愛よりもさらに遠いものに思える。
「人生の伴侶は、一度や二度ではそう見つからない……か」
弓月の去り際の言葉を塔子は呟く。
頭の中では違う人物が言った、違う言葉を思いながら。
『そこで、踏み込むか?』
淡々と静かな声音だった。
もしかすると、自分とはまた違う意味で上津原にとっても人生の伴侶というものは遠いものなのではないだろうか。
何故そんなことを思ったのかはわからない。
けれども、ふと、そんな気がした。
そんな文句ともぼやきともつかない事を口にしながら、三脚に設置した一眼レフカメラの角度を自在に動かしてはシャッターを切るカメラマンが汗を拭っている。
通りに面したオープンテラスのカフェはたしかに蒸し暑い。梅雨の晴れ間な空からは容赦なく日が照っていた。
アジアンリゾート風を狙い、日よけとインテリアを兼ね空きスペースのここかしこに置かれている鉢植えの観葉植物も、リゾートというよりは鬱蒼と茂る熱帯雨林を思わせて蒸し暑さを感じさせるのに一役買っている。
「では、小説の中の出来事はあくまで甘糟さんの創作ということですか?」
「……ええ」
この手の質問を受けるのは何度目だろうか。
写真を撮られるのは苦手だが、さすがにインタビューを受けることそれ自体には慣れてきた。
求められるのは作家・甘糟塔子の言葉だ。
塔子本人そのものではない。
インタビュアーと向かい合い、テーマに沿って記事の中身を作り上げる点では編集者との打ち合わせに似ている。そう考えれば、一気に気が楽になった。
仕事であれば、人となにを話していいかなどと悩んだり躊躇う必要はない。
テレビとラジオは、本人のキャラクターが求められる部分があるから困惑するが、幸い、映画の上映期間が終わって以降、潮が引いたようにそういった類いの話は来なくなった。少し間を置いてディスク化の時に一、二度宣伝用のコメントを求められただけだ。
「小説の出来事がすべて実体験なら、もう何回結婚して不倫したかわかりませんし」
「たしかにそうですよね」
なにがおかしかったのか、野上と名乗った女性インタビュアーはくすりと笑った。取材の申し込みがあった雑誌の専属ライターだそうで、松苗女史と同世代のショートカットの似合うボーイッシュな感じの女性だった。話し方がニュースキャスターのようにはきはきしている。
「同じ経験を形を変えて作品に反映させるようなこともないですか?」
「ええっと、どうでしょうか。人の経験というものは千差万別だとは思いますが案外パターンがあるようにも思えます」
「パターン……ですか?」
「ええ、例えば映画であればボーイ・ミーツ・ガール的な経験はそれこそ繰り返し描かれるパターンです。けれどエピソードは異なりますし、様々な人が作品を作り上げているわけで同じ経験の繰り返しとは言えません」
「でも甘糟さんの作品は甘糟さんお一人で書いているわけですよね?」
「勿論、私の小説は私が書いています。けれど登場人物にはそれぞれのキャラクターがあり人生の背景がありますので。もし同じ経験だと感じたのであればそのパターンに分類されるものなのかもしれません……私自身は十代の頃から仕事ばかりで人生経験に乏しいですから」
そう、自分にはおよそ恋愛経験どころか人間関係のなかで普通の人なら経験するだろう事にも乏しいと、塔子は少し不可解そうに瞬きしている野上に内心ひとりごちる。
それを補っているのは、古今東西の作品に描かれる人間や人生というものや、ニュースや周辺で見聞き出来る出来事しかない。幸い昨今ではあらゆる情報媒体からいくらでもそれらに触れられる。
きっと、いまの世でなければ作家なんて職業はこんなにも続けられなかったに違いない。自分の手足を動かして触れらるものはあまりに範囲が狭過ぎる。
夥しい量の情報から得た、人生経験というもののストーリーを設定や登場人物に合わせてシミュレートして文字に起こすようなことはきっと出来ない。
「それに、作品のエピソードはどれを取っても自分のこれまでの人生とはかけ離れたものですし」
自分で書いておきながら、そのストーリーの体感も実際にその経験が人生にどのような意味を持つかも塔子には殆どわからない。
「でも、甘糟さん美人だしモテるでしょう?」
とんでもないっと塔子は両手と首を振って否定し、指先に触れたスプーンがかしゃんとカップにぶつかって音を立てた。
「ほぼ毎日、十数時間は家で仕事してて出会いもないです……」
「十数時間っ? って、毎日ですか?!」
「あ、はい」
目を丸くしてという形容がぴったりな表情で尋ねてきた野上に、塔子は不思議な思いで頷いた。
あれ、私なにかおかしなこと言った?
「あはは、野上さん。甘糟さんがすっごい不思議そうな顔してますよ」
パシャ、と音と同時に目に入った光に反射的に塔子は顔を顰めた。
「あ……と、眩しかったかな」
「いえ、大丈夫です」
「まー、作家さんって書くのが仕事だから家で作業する時間が多くなるよね」
「もうっ、邪魔しないでよ弓月くん」
「ただ黙って撮ってるの退屈なんですよ」
野上の苦笑混じりの文句に、三十半ば過ぎのカメラマン男性はいつの間にか三脚から外して構えた彼の商売道具を覗き込みながら言葉を返した。
「被写体がいいと特に」
パシャ、とまた塔子の視界が光ったが今度は先程のような眩しさは感じなかった。
「弓月くん、いま仕事中」
同行のカメラマンは雑誌専属の野上とは違って別契約のフリーランスらしいが、何度か組んで仕事をしているのだろう。取材を始める前から互いに気安いやり取りを交わしている。
「結構、作家先生の写真撮る機会あって。普通の会社員が会社で働いてるくらい普段は家で仕事してる人は多いけど、さすがに毎日十数時間は珍しいかな」
「よく考えたら、連載小説だけじゃなくエッセイや今日みたいなインタビュー記事なんかも見かけますもんね。甘糟さん今が旬の作家だし、仕事量考えるとたしかにそれぐらいでないと追いつかないですよね」
どうやら二人共、塔子のここ最近の生活だと誤解しているらしい。本当はデビュー前からそうなのだが、先程の反応からそれは言わないでおくのが良さそうだと塔子は判断した。
それに、仕事量でいえばたしかにここ最近は野上の言う通りではあった。
けれど。
「ええと、そうなんですけど……いまが旬は……困るかも……」
「え?」
「私、書くことしか出来ないですし、けれどいつまで書かせてもらえるかわからないので……旬より、通年作物や乾物みたいな感じがいいです」
「通年作物か乾物、ですか。ミリオンセラー作家でキャリアも長いのに強い危機感をお持ちなんですね」
「十九で少女小説の文庫を出して、いまみたいな一般文芸に移ってまだ数年ですから……」
感嘆したように言われて、またおかしなことを言ってしまったかとやや焦って塔子は俯き、言い訳がましいと思いながらも補足すれば、すぐ横からヒュウと口笛が鳴った。
「へえ、見た目と恋愛ってジャンルでもっとふわふわした感じの作家かと思ってたら、意外だな」
口笛にカシャカシャと連続でシャッターを切る音が続いたのに、塔子が弓月に目を向ければカメラの向こうで軽く目を細めて笑んだ。ついつられて口角を持ち上げれば再びシャッター音が連続で鳴る。
「うーん、美人の微笑みは吸引力あるねぇ」
弓月はけして穏やかそうに見えるタイプの男性ではない。背が高くやや無骨な感じでカメラマンらしく視線に鋭さがある。
けれどどこか人の緊張を解くような人好きする笑みで、するりと懐に入り込むような親しみを感じさせ、人をむやみに怯えさせるような怖さはまったくない。
似た背格好でも塔子が知る人物とは大違いだ。
「だから仕事中。まったく……彼、こう見えてバツ2ですから、甘糟さん気をつけてくださいね」
「はあ……」
なにをどう気をつけるのか塔子にはわからなかったが、野上がやけに怖い顔で言うので相槌を打てば弓月が抗議の声を上げた。
「ひどいな野上さん、個人情報漏洩だ、それ」
「うるさい。こっちの邪魔しないでよ」
「あの……バツ2って、二度離婚したってことですよね?」
「ほらぁ、甘糟さんが警戒してる」
カメラから顔を上げて非難がましい目つきで野上を見下ろした弓月に、塔子は「あ、いえ……」とその場を取り繕うように声を上げた。
「そういったわけではなくて。あの……どうして離婚されたのかなって」
「はい?」
塔子としてはごく素朴な疑問だったのだが、頓狂な声を弓月は上げた。そういえば最近同じような質問をした時も相手は妙な様子になった。
こういったことはやはり聞いてはいけないことなのだろうかと塔子は弓月を見上げる。
しばらく塔子の顔をぼんやり眺めていた弓月だったが気分を害した様子には見えず、しばらくして先をどうぞと促すように肩を竦めたため、塔子は質問を続けた。
「好きだったり大事にしたかったり側にいたかったから、結婚されたわけですよね?」
「うーん……まあね」
「途中で別の人とか思うなら、恋人でいいわけじゃないですか」
「まあ……一理あるか」
「結婚までして、どうして別れてしまうのかなと。しかも一度ならず二度もっ」
けらけらと野上が腹部を抱えるように笑い出す。
ううーん、と小さく唸って弓月はファインダーを覗きこみ、レンズ越しに塔子を見た。
直に視線を向けられるより、何故かいたたまれない気持ちがしたのに塔子が俯けば、またふっと弓月が笑んだ気配がした。
「甘糟さんって天然? それとも作家の性ってやつ? どちらにしろ容赦ないことに変わりないけど」
「もっと言ってやってよ、甘糟さん。全然っ懲りないから彼」
まいったなと首の後ろに手をやって苦笑している弓月に、やや辛辣な調子でそう言った野上に驚き塔子は二人を交互に見た。
「えっと……」
「すごく盛り上がって結婚するくせに、しばらくすると違ったとか言って違う女性に移るんだから……悪い人じゃないんだけどね」
「取材相手に暴露するかなそういうこと。あ、この人一番目の奥さんで」
「ええっ!?」
がたっと勢いよく立ち上がった塔子に店内の客の視線が集中し、笑っていた表情を引き攣らせた野上は腹部を抱えていた腕を組んで溜息を吐いた。
「ちょっと、そっちこそそういうことなんで言うかな」
「あ……ごめんなさい」
驚き過ぎたと塔子が腰を下ろせば、一瞬集まった視線は再び無関心に分散する。塔子が恐縮したのに気を遣ったのか、野上は張り付けたような微笑みを彼女に見せた。
「悪いのはこの人だから、気にしないで」
「え……あ、はい」
「そういえば甘糟さんって、独身なんですよねぇ」
インタビューの続きなのか会話なのかどっちつかずな野上の言葉に塔子は首を傾げた。
「ええ、まあ……どうしてですか?」
「本の印象が強くて、つい忘れちゃうというか」
「忘れちゃう?」
「甘糟さん書かれているじゃないですか、好きでもどうにもしようがないような夫婦の微妙なすれ違いとか……いまだから言える話、この人とごたごたしてた時に甘糟さんの小説に結構ハマってたんですよ」
どうやら会話の続きだったらしい。
自分の書いた本に夢中になってくれたというのは、書き手としてはうれしいことではあるけれど、事情を聞いての上では複雑なものを覚える。
反応に困って、塔子は、人によっては冷淡に思えるような無表情で固まっていた。
「些細な事で憎しみに近いものを感じちゃったりとかそうそうそれそれって感じで、結婚って好きとかそういうものだけじゃないんですよねぇ……ほんと。経験ないのにああいうの書けるってちょっと不思議で恐いですよね。あ、誉め言葉ですよ」
「はあ……」
そのまま受け取っていいものかどうか、考えあぐねて曖昧な表情で塔子は頷いた。
そんな野上とのやりとりをずっと、弓月は塔子に焦点を合わせたレンズ越しに見ていたらしい。
「野上さん、そろそろ次の時間近づいてきてるんじゃない?」
カメラを構えたまま声をかけた弓月に、野上は腕時計を見た。
「あ、そうね。もうっ、いらない話で時間使っちゃったじゃない……聞きたかったお話は聞けたけれど。甘糟さん、今日は貴重なお時間をありがとうございました」
「あ、はい。こちらこそっ……どうも」
テーブルに頭を打ち付けそうに深くおじぎして塔子が顔を上げた時にはもう、野上は席を立って数歩離れた場所から背中を見せていた。
次の約束の時間が迫っているのだろう。忙しない様子で道路に向かって手を挙げ、呼び止めたタクシーに乗り込んで去っていく姿をカチャカチャと機材を片付ける音を聞きながら見送って、あれ、と塔子は振り返った。
野上に同行せず、地面に屈んでのんびりと折り畳んだ三脚を黒い大きなナイロンバッグにしまう弓月がいる。
「次回作、もしかして結婚する相手とはみたいなのがテーマだったりする?」
「え?」
「そういう顔してた」
「顔……?」
「そ、顔」
ファスナーを閉じる音をさせ、よいしょっと言いながらバッグを背負って弓月は立ち上がると、デザインと実用を兼ねているらしいポケットの多くついた薄手のジャケットのあちこちを探った。
「それか『野人時代』かな? ここ最近の企画では一番なんじゃない。予定調和な穏便さがない対談で面白い。今月の第二回目もまあまあだったし。上津原氏との疑似デート?」
「は、恥ずかしいので……い、言わないでください」
「恥ずかしいんだ」
恐ろしいことに、例の猫カフェで偶然、上津原と出くわした時の出来事が第二回目の対談記事となっていた。
上津原の仕事が多忙を極め、対面でなくともやりとりを交わす時間の調整が取れそうになく、おまけにそれを見越していた彼が、塔子を強引に引っ張っていった店に入るなり携帯電話のボイスレコーダーをオンにして、ご丁寧に店に許可まで取って撮影まで行い、それらをすべて早坂に送りつけたらしい。
あんたの部屋を掃除していたあたしを放置してお食事していた時の書き起すことにしたそうよ、と松苗女史からの知らせを聞いた時は、塔子は思わず携帯電話を取り落としてしまった。
松苗女史の連絡から三日と経たずに届いた初稿を読んで、これは意図的に会話順を入れ替えるなり加筆しないと対談にならないと思ったのは塔子だけではなかったようだ。
上津原が彼の分も含めて塔子に好きに直してもらってくれと言っていたのでお願いしますと、早坂から無茶振りも過ぎる依頼があった。
いくらなんでもそれはと塔子が上津原の研究室へ電話をかければ、「そっちのが読み物に関してはプロだろ」の一言で片付けられ一方的に通話を切られた。
結局、出来る限り発言内容を損なわないよう、早坂と相談しながら共同作業でテーマに沿って原稿を直したのだった。
やはりまあまあかと、弓月の言葉を塔子は受け止めた。けれど、このどこか鋭いものを感じさせるカメラマンが読んでその評価に止まったのなら、読み物としては最低限のものにはなっていたのだと思うことにする。
ベタ起こしのままの対談記事などありえないが、そもそも対談を前提にしていない会話を強引に使った不納得感が塔子にはあった。
「次号は……もう少しましだと思います」
「へえ。ええと、名刺どこに入れてたっけ」
自身の都合で編集部に迷惑をかけた思いがあるのか、第三回目“意外な一面”についての対談は上津原が協力的だった。
おまけに同席した松苗女史が早坂にかわって進行役となり、テーマが塔子にとっても話しやすいものだったこともあって、奇蹟のように対談らしい対談になっている。
もっとも上津原との見解の相違は相変わらず。穏便さなど欠片もない対談となっている。
それに松苗女史と上津原の肉食獣同士の牽制のような名刺交換は背筋が凍るような怖さで、対談中ずっと奇妙な緊張感が続いていたけれど。
「あの……次の取材があるのでは?」
「僕はここで終わり」
「そうですか」
「お、あったあった。駆け出しのフリーだから撮れといわれたらなんでも撮るけど。一応、人物撮影を売りにしてるんで、著者近影とか必要な際はこの番号まで」
弓月の声に我に返り、差し出された名刺を塔子は立ち上がって受け取った。
名前とメールアドレスだけの名刺に携帯電話の番号が書き加えられている。
印字された名前の文字に、思わず塔子は弓月を見た。
「弓月、誠、さん……」
「バツ2で“誠”もなにもないって思ったでしょ、いま」
「い、いえっ……どうも……ありがとうございます」
「人生の伴侶は、一度や二度ではそう見つからない」
「え?」
「だから離婚した。気がない相手を縛り続けることはない。僕と別れる前の彼女はあんなに生き生きとはしていなかった」
名前とそう食い違いはないでしょ、と囁いて弓月は店のスペースから道路へと出ていった。
塔子は手の中に残った名刺に目を落し、再び席に腰を下ろすと追加の紅茶を頼んで、道路を行き交う人をぼんやりと眺めながら物思いに沈む。
人生の伴侶。次の対談テーマ。
塔子にとっては恋愛よりもさらに遠いものに思える。
「人生の伴侶は、一度や二度ではそう見つからない……か」
弓月の去り際の言葉を塔子は呟く。
頭の中では違う人物が言った、違う言葉を思いながら。
『そこで、踏み込むか?』
淡々と静かな声音だった。
もしかすると、自分とはまた違う意味で上津原にとっても人生の伴侶というものは遠いものなのではないだろうか。
何故そんなことを思ったのかはわからない。
けれども、ふと、そんな気がした。
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