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別荘編
36-束の間のティータイム
しおりを挟むアーノルドと別荘で優雅なティータイム中。長めのソファに互いに座り、向かい合ってお菓子を楽しむ。
アーノルドの用意したミルクティーもアーモンドとキャラメルのお菓子も何もかも美味しい。
甘いものに目がない僕は夢中になって食べていた。
「ルーク、美味しい?」
「はい、シュバルツ様」
普通に素の笑顔で答えてしまった。
「…そっちの方が可愛い。呼び名もアーノルドでいいよ。僕はルークって呼んでるし…」
何故かアーノルドの顔が赤い。
急に何故?普段何考えてるか分からないけど、こういう顔してると意外と人間味あるんだな。
少し僕はアーノルドに対して色々と誤解していたのかもしれない。
「それに、僕のこと散々いい様に言った癖して、今更取り繕った所で無駄だよ」
「……」
さっきの人間味はどこへやら、また笑わない視線が僕を貫く。
前言撤回。やっぱりこわい。
ドクンッ
「…ぇ…」
ガシャンッ
急に動悸がして手に持っていたお菓子をテーブルの皿に落としてしまう。
頭に心臓があるみたいにドクドクと脈打つ感じがして、体温がどんどん上がっていく。
汗が止まらない。息も荒くなってくる。
なんだこれ…?
下半身も熱くなり、何もしてないのに勝手に反応している。
思わず自分の胸あたりの服を掴み、アーノルドにバレないようにキュッと股を閉め、俯いてしまう。
「…ルーク、僕は何のために君をここに連れてきたと思う?」
向かい側に座っていたアーノルドが立ち上がって僕の隣に腰掛ける。
アーノルドが僕の隣に座った振動にさえビクッと身体が反応する。
そんな僕を気にもとめず、アーノルドは僕の肩に腕を回して密着してくる。
今の顔をアーノルドに見られたくない。
そう本能で思い、思わず顔を背けてしまう。
アーノルドは僕の肩に回している腕とは別の方の手で僕の下顎を掴み、強制的に自分の方に僕の顔を向かせる。
隠すことをやめた猛獣と目が合ってしまう。
これから起こることの恐怖に身体がビクビクと震えてしまう。獲物になった気分だ。
「僕たち婚約者だよね?親密を深めるためにも、ほら、おあそびしないとこの関係も意味ないよね?」
やっぱり平和でなんか終われなかった。楽しいティータイムをして、自然を満喫してなんて、そんな生ぬるい訳がなかった。
浅い都合のいい希望が打ち砕かれる。
僕はただ今婚約解消したくなかっただけなのに。
アーノルドを怒らせてしまったんだ。
後悔しても遅かった。
アーノルドはそのまま捕食するかのように僕の唇に噛み付いた。
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