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〚第五章〛〜不幸な少女の”日常”編〜
〚154話〛「20年振りの」
しおりを挟む扉がいたのに気づいたのか僕達が入ってくると同時に隠し扉まで上がってきて耳を澄ましてるなんて事をしたおかげで分かったのだが。
「変換‐異形化、苦しんで死ね」
僕は魔導ミスリルを細く伸ばし石と石の隙間に差し込むと、猛毒付与を掛けてやった。
「?何したの?」
「何でもない、行くぞ」
紅葉達が去ったあと、石の隙間からゴポッゴポッと異質な音が響いていた。
「着いた…な」
「うん…」
重く頑丈そうな扉を開けると、まず酷い臭いが鼻を突く。
そこはとても酷い臭いが漂い、とても人が居られるような場所では無く、部屋の中心に人が寝られるような台が2つあり、それを中心に何か道具が沢山並べられていたり吊るされたりしていた。
「し…シアル…何…これ…」
その道具は拷問道具であり、既に使用されたことを示す血がべっとりと付いており。
「……リーネは」
台の上に寝かせられている赤黒い血だらけの死体は凄い形相のまま固まっていた。
僕は気配感知で反応の弱い方にまず目をやった。リーネじゃ無いことを思いながら。
部屋の奥の方、天井から伸びる鎖を辿ってゆく。
血に染まった手、皮の剥がされた腕、肉の無い肩、虚ろな瞳で俯いている女のその顔には僅かに見覚えがあった。
僕が奴隷だった頃最初に売れてゆくのが見えた女の子、幸せそうな顔で売れて行った奴隷の女の子だった。
「…ひっ………酷い……」
紅葉はその女を見ると悲鳴を上げそうになる。
「こいつじゃない」
僕は少しだけ安心しもう片方の方へと目をやった。
見覚えがある薄桃色の髪。
僕は近づいてゆきしゃがみこむ。
血で黒くなり汚れきった髪。
僕に気が付いたらしく、顔を上げる。
雑に切られた前髪。
その隙間から見えたその顔は。
間違いなく僕の妹。
「リーネ…」
僕は優しく妹を抱き締めた。
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