皇帝が愛したエスクワイア

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4 ティニアスと風呂に入るナルセウス

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 書類整理が終わり、ナルセウスに風呂の用意を命じたティニアス。ナルセウスは風呂の用意に関してよくわかっていないことがあり、先輩のクロムという従騎士を探したが、どこにもいない。

 通路を歩いている侍女と思しき女たちに聞いてみるが、分からないの一点張り。仕方ないので、ナルセウスは自分が思うように風呂の支度を始めた。

 風呂の場所はわかっているので、ナルセウスは皇帝が来る前に先回り。着替えなどを用意しておき、準備していた。ちなみに、風呂は24時間入れるようになっている。温泉が湧いているし、風呂場は掃除人がいるので清潔だ。

 皇帝が入るのは大浴場ではなく、三人程度しか入れない、小さな浴槽だ。その中に柑橘系のレモンなどを入れたりして、ティニアスは風呂を楽しむ。

「ティニアス様。こちらです」
 
 ナルセウスは風呂場の入り口から、皇帝を手招きする。まるで母親が子供を呼ぶような感じで、手招きしている。とても従騎士が行っていい行動ではない。

「そこかナルセウス。では、服を脱がせろ」

 脱衣所に入ると、ティニアスは両手を広げた。

「はい」

 ティニアスは手招きのことは何も言わなかった。その程度のことは、児戯と等しい。そう思っているのだろう。

 ナルセウスはティニアスの服をなんとか脱がせる。法衣のようなティニアスの服は、ボタンが多いし、脱がせるのも着せるのも、とても面倒くさい服だ。

 ティニアスは初めて会ったナルセウスにも恥ずかしがらず、全裸になる。当然、股間のものも見えている。

 そこでナルセウスは驚いた。

「毛、毛が無いッス」

 ティニアスのかわいいゾウさんには、毛が生えていなかった。

「か、かわいいッス」

「なんだ? 何か言ったか?」

「いえなにも」

 ナルセウスはティニアスが浴槽に入る前に、体を流してやる。きちんと体を流し終えると、ティニアスはゆっくりと浴槽に体を浸ける。「はぁぁあ」とおやじくさい声を上げて、湯に浸かっている。

「ではティニアス様。私もご一緒してよろしいですか?」

「は? なんだと?」

 皇帝と一緒に風呂に入る従騎士はいない。湯女ゆなという、風呂で体を洗ってくれる女なら分かるが、従騎士は背中を洗い流す程度だ。一緒に浴槽に入ったりしない。

「一緒に入ったら、とても気持ちいいと思います」

「ちょっとまて。この浴槽は狭いんだ! それにお前、さすがに遠慮が無さすぎるぞ! 俺が誰だか分かってやってるんだろうな!? それとも子供だと思って馬鹿にしているのか!?」

「では失礼して」

 下着を脱ぎ始めるナルセウス。ティニアスの話をまるで聞いてない。

 彼女は男と偽って従騎士をしているのに、とんでもない暴挙に出る。従騎士初日だというのに、もう秘密がばれそうである。

 ナルセウスが上半身裸になったところで、ティニアスが何かおかしいと気づく。

「おいナルセ。お前の体、ずいぶん細くないか? それにその胸、男の胸ではないような……」

 ナルセウスの肌は絹のようにすべすべで真っ白。胸が全くないが、さすがに男とは形が違う。ティニアスも気づく。もちろん腰のクビレもきちんとある。湯煙りでうまく隠れていたが、目を凝らせばすぐに女とばれる。

「では、下も脱がせていただきます」

 ナルセウスは女を隠すよりも風呂に入りたくて仕方ない。ティニアスもかわいい男の子と分かったので、余計に入りたい。

 そこで風呂場に、とある男が入ってきた。

「誰だあんた。それは俺の仕事だぜ?」

 ティニアスに仕えるもう一人の従騎士、クロムが入ってきたのだ。

 クロムはまだ若く、前髪をツンツンに立てた騎士だった。

 ちょうどクロムの入ってきた方からは、湯煙が濃く、ナルセウスの体は見えなかった。微妙に顔だけが見えており、シャワー用のカーテンで体が半分隠れていたので、クロムはナルセウスを女と気づかなかった。

「ティニアス様。何やってるんですか? ついに男色に目覚めたんですか? 男と風呂に入ろうとするなんて」

「違うわ! 貴様が来ないから、新しい従騎士に背中を流させたのだ! ナルセウス! 服を着ろ!」

「えぇ~」

「えぇ~ではない! お前は本当に俺のエスクワイアなのか!?」

 ナルセウスは舌打ちすると、しぶしぶ服を着る。ギリギリではあるが、ナルセウスは女とばれなかった。かなり怪しまれたが、従騎士初日からバレることはなかった。

「ティニアス様の新しい従騎士? 俺は聞いていませんが」

「俺も今日知ったのだ。とにかく話はあとだ。すぐに上がる」

 ティニアスは風呂から上がると、ナルセウスに体を拭かせる。クロムは横で突っ立っているだけだったが、ニヤニヤと笑っている。その理由はナルセウスのエロい手つきにあった。

 ナルセウスは執拗にティニアスの股間を拭いているのだ。何度も股間を拭いて、綺麗にしたがっている。

 尻の穴も綺麗に拭いてあげると、ナルセウスは思った。

 ティニアス様の、皮、被ってた。ドリルだった。

 農村にいたころは良く近所の子たちと水浴びをしていた。裸になってかわいい少年たちとよく遊んでいたので、ティニアスも近所の男の子と同じに見えた。立場は皇帝であるが、裸にすればやっぱり普通の男の子だった。

「ナルセウス。そこはもういい。服を着せろ」

「はっ! ただいま!」

 ナルセウスはティニアスに親近感が湧き、これからもっと仲良くなれそうな気がした。 
 
  



 
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