俺は自販機使いの魔王

無名

文字の大きさ
上 下
4 / 6
ニホンジン魔王爆誕

魔王様、自販機で買いまくる

しおりを挟む
 なぜこんなことになったのか理解できない。

 寝て起きたらこれは夢でした。誰かそう言ってほしいが、寝て起きても、俺は魔王のままだ。
 
 俺は以前魔王が使っていたと言われる寝室に案内された。案の定、戦闘があったせいでボロボロだが、ベッドは綺麗にメイクされていた。多分、生き残っているメイドがやってくれたんだろう。

 出された食事も腐りかけたパンに、味のしないスープだった。これでは、自販機の食べ物を魔力で購入した方が何万倍もマシだ。

 俺は生き残った民に、城に出現した自販機には触るなと言っておいた。危険だからと。

 リシャールが自販機の警備兵を選抜し、子供が自販機に触らないように監視することになった。

 エルナも疲れていたし、リシャールもいろいろと疲れていたようだ。人間たちの軍は今、動きはないとのことだ。

 この城は捨てられた古い廃城で、大昔に戦争があった場所らしい。今は森の中にひっそりと隠れるように建っている。人間たちもこの城のことは忘れており、俺たちを探しきれていないようだ。

 とにかく俺は、エルナと一緒にベッドで眠った。ススだらけで汚い状態だったので、エルナはきちんと体を拭かせてからベッドに入れた。

 ぐっすり眠って朝起きると、やはり俺の体は魔王のまま。日本に戻ることはなかった。

 ひび割れた鏡で自分の顔を確認すると、どこのギャル男だと言いたくなる顔をしていた。浅黒い肌で、髪は金髪でロング。側頭部からにょっきりと一本ずつ角がなければ、渋谷にでもいるギャル男である。

「魔王様、チャライ顔してんなぁ~。イケメンなんだろうけど、女遊びしてそうな顔だな」

 俺には縁のないほどのイケメンだ。これは相当女に苦労しただろうな。

 と言っても、生き残っているのが孫のエルナだけだ。彼女は大切に育てなければならない。

「はぁ。今日はどうすっかな。まずは食料と、けが人の治療だな。自販機に何かないかな」

 俺はベッドで寝ているエルナを起こさないように、部屋から出た。

 やることも分かっている。城中に現れた自販機を一台一台確認するところから始めた。なにか使えるものはないかと。

 崩れかけた城の通路を歩いていると、さっそく自販機を見つけた。昔からここにありましたよって感じで、自販機が通路わきに設置されている。城の中に、異常に馴染んでいる。

 俺は自販機の商品サンプルを見てみる。

「スポーツドリンクと、お菓子か。お? 隣はカップラーメンの自販機か?」

 お湯が出てくるタイプだ。俺は日本が恋しくなってしまい、カップラーメンを購入する。昨日と同じくらい魔力が吸われた。

 取り出し口に落ちてきたカップラーメンはシーフード味。

 蓋を開けて、ボタンを押して、お湯を投入。3分待って、備え付けの割り箸を使い、ラーメンを食べる。

 うまい。

 やっぱり、ジャンクフードは美味い。体に悪いとか関係ない。塩分の取りすぎとかは、今は関係ないのだ。味が良ければすべてよし。

 俺はズズーっとラーメンをすすりながら、城の中を徘徊する。

 階段の踊り場や、倉庫の中。至る所に自販機がある。どうやって動いているのか分からないが、電気が通っていない。もしかしたらこの自販機、俺の魔力で動いているのかもしれん。

 さまざまな自販機を見て回って、これだと思った自販機がある。

 回復薬を売っている自販機と、銃火器を売っている自販機だ。

「リボルバーマグナム44口径。弾は別売り。となりにはAKライフルもあるな」

 信じられないが、自販機で武器が売っている。しかも日本にある武器が。この世界には銃火器はあるのだろうか? 魔法が支配している世界だから、火器類は発展しない可能性が高い。

 もし発展しているなら、魔法を使った武器類だろう。銃火器は有っても、火縄銃程度ではないか? 

 射程距離が魔法よりも長く、連射できるライフル。威力も一発で人間を殺せる。下手な鎧など、簡単に貫通する威力を持っている。

 魔力コストが低いのなら、大量に購入するべきだ。

「よし。まずはリボルバーマグナムを買うぞ」

 俺は購入ボタンを押した。

 すると、今までより比べ物にならない量の魔力が吸われた。

 おでん缶の30倍以上だろうか? よく見ると、購入ボタンの下に、なにやら数字らしきものが書いてある。見てみると、1000という数字があった。俺はおでん缶の数字と見比べてみる。

 おでん缶は、30という数字だった。 

 リシャールよ。お前はもともと魔力が少ない体質ではないのか? おでん缶で30だぞ? この先、自販機はおでん缶ぐらいしか買えんぞ。

 俺は通常よりも大きい取り出し口から、リボルバーを取る。箱入りだ。もちろん、弾丸も一緒に購入している。30発ほど買っている。

 俺は初めてリボルバーマグナムを持った。どこのメーカーかは分からんが、かなり質は良い。弾を込めてセイフティーレバー? そんなようなものを下して、トリガーを引いた。

 撃鉄が自動で叩き込まれ、弾丸飛び出た。

 火薬の大きな破裂音とともに、壁に穴が開いた。かなり、巨大な穴が。

 人の頭ほどの穴が、レンガの壁に空いたのである。

 おいおい。なんだこの威力は。普通のリボルバーマグナムじゃねぇぞ。レンガに大穴開けるって、大口径のライフルかよ。なんで小さなリボルバーでこんな威力が? しかも反動は全くなかったぞ。

 俺はリボルバーを観察すると、なんだか分からない、魔法の文字が描かれている。グリップの部分に、細かく刻印されている。これはもしかして、魔法銃? 

 俺はうーむと唸っていると、リシャールが走ってきた。

「魔王様!! 今の音はなんですか!!!」

 リバルバーの炸裂音に、血相を変えて走ってきたのだ。

「リシャールか。おはよう」

「おはようではありません! 寝室に言ったらいらっしゃらないし、いきなり大きな音は鳴るしで! どういうことですか!」

 俺は騒ぐリシャールを落ち着かせ、自販機で武器を買ったことを説明した。その後、兵士の訓練施設があるというので、リシャールに案内してもらう。

 そこで弓矢の的を設置してもらい、俺はそこにリボルバーの弾丸を発射する。

 弓矢の的を粉々に怖し、さらにその奥にある壁も破壊した。その威力見ていたリシャールは、茫然と立ち尽くす。

「魔王様。その大砲はなんですか?」

「大砲ではない。銃だ」

「銃? マスケット銃ですか?」

「マスケット銃がなんだか知らんが、これは弾を6発連射できる銃だ。携帯性に優れた武器だな」

 俺はリシャールにマグナムを渡す。

「か、かるい。こんなに軽い銃は初めて見た」

 リシャールはなんだか感動している。

「ああ、それとリシャール。ついでにポーションも買っておいた。傷ついた民にポーションを分けてくれ」

「な!! ポーションですと!!」

 リシャールはことのほか驚く。そんなにポーションが珍しかったか?

「今は薬剤師が不足しているのです。しかも原料もありません。人間が全部押収したので。これはすごいですよ! ポーションも手に入るなんて!! 早速民に渡してきます!!」

「ああちょっとまて。ポーションは一本だけではない。100本ほど買っておいた。倉庫に置いてあるから、持っていきなさい」

 リシャールはまたも茫然と立ち尽くす。この子はフリーズすることがかなり多い。

「はは!! 必ずや役立てて見せます!!」

 リシャールは俺に敬礼をして走り去っていった。

 その後、俺から提供されたポーションで、民は全快した。どうやらただのポーションではなく、ハイポーションだったらしい。すぐにみんな傷が癒えた。病気の人も回復に向かっている。

  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

オカン公爵令嬢はオヤジを探す

清水柚木
ファンタジー
 フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。  ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。  そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。    ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。  オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。  オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。  あげく魔王までもが復活すると言う。  そんな彼に幸せは訪れるのか?   これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。 ※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。 ※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。 ※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。

処理中です...