この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

23 教会で食事

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 教会に帰ると、神父のヌアザが壁を修理していた。焼け焦げた壁を剥がし、新しい板を壁に打ち付けている。塗料は無いのでそのままだが、壁が腐って落ちることは無くなる。

 俺たちが来た時とは違い、教会の中にはボランティアの信者も数名いた。彼らも教会を修理している。屋根に上って修理する者や、教会に設置されている椅子を直している者もいる。若い男たちばかりだが、その中に女の子もいた。

 彼らが修理する中、シスターのアリアンは大きな鍋でおかゆを作っており、炊き出しを行っている。どうやら、食べ物がない子たちに仕事を与え、食事を提供しているようだ。俺が見る限り、完全にホームレスを支援する団体である。

「やぁリザとアオ君。帰ってきましたか。ちょうど夕食を食べようと思っていたところです。さぁこちらに」

 神父は俺たちを快く迎えて入れてくれる。こんなに教会がボロボロなのに、俺たちに親切にしてくれる。

「みなさん。今日はありがとうございます! さぁ、夕食を食べましょう!」

 修理をしていた若者が手を止め、シスターのもとに集まってくる。顔はやつれていたが、笑顔がある。順番におかゆをもらっていて、俺も列に並ばされる。日本でもホームレスの炊き出しは見たが、まさか自分がもらうことになるとは思わなかった。しかも異世界で。

 木のお椀を近くにいたお姉さんからもらい、シスターにおかゆをすくって入れてもらった。

「さぁアオ君。いっぱい食べてね。リザもね」

「あ、あぁ。ありがとう」

「はい。ありがとうございます」

 俺の後ろに並んでいたリザも、おかゆをもらう。

 シスターの目の下には大きなクマがあり、彼女もやつれている。だが、笑顔を絶やさない。

「皆さん。いつものように、食事の前に祈りを捧げます。では、手を合わせてください」

 壊れかけた長椅子に座ると、先ほどの若者たちが全員手を合わせた。目をつむり、何やらぶつぶつと唱えている。なんだか、神様の名前を言っているが、俺にはよく分からない。

 この世界に生まれてから、俺は村の奴らの小間使いだった。宗教など知らない。日本でも、「いただきます」「ごちそうさま」しか言ったことが無いので、どうしたらいいか分からない。

「我が神ダーナよ、日々の糧に感謝します! さぁみなさん、食事をしましょう!」

 神父が祈りを終えると、スプーンでおかゆを食べ始めた。リザも食べている。俺はみんなにならい、一緒になって食事をする。食べてみると、おかゆは水のように薄かった。味もない。しかも使われている水が泥水のようで、ひどい匂いがする。

 周りを見ると、無言で食事を続けている。なんだか、すごくいたたまれない。

「おいリザ」

「なに?」

「さっき買ってきた食料。食べないのか? バッグに入っているだろ」

「みんながいるのに、私たちだけ肉や野菜を食べるのか?」

「俺たちだけ食べる? 何を言っているんだ。みんなに分けろ。神父のヌアザには、世話になっているんだろう?」

「ふふふ、その言葉を待っていたよ。やっぱりアオ君は神の御使い様だな」

「はぁ? 何を言ってるんだ?」

「アオ君だったら、みんなに食べ物を分けると思っていたから、言わなかったのさ」

 リザは俺の頭をくしゃくしゃに撫でる。すっと立ち上がり、バッグの中から干し肉と野菜、ビスケットを取り出した。

「神父様。私とアオ君から、差し入れがあるので、食べていただけませんか?」

 ヌアザとシスターはその差し入れを見て、びっくりする。

「リザ。これはどうしたのですか? 黒糖入りのビスケットまでありますが」

「盗んできたんじゃないですよ。買ってきました」

「あなたはいつもお金が無くて、食べ物に苦労していたでしょう。どうしたのですか?」

「それなら、アオ君が良いって言ったので、大丈夫です」

「え? アオ君が?」

 リザは余計なことを言った。全部リザの手柄にすればいいのに、俺の名前を出すな。

 神父は俺に近寄ってくると、頭を下げる。

「あなたはどこかの貴族様ですか? なぜ私たちに差し入れを?」

 貴族だと? この格好を見ろ。ボロのシャツにボロのズボンだぞ。どう考えても孤児にしか見えんだろう。さすがに貴族は話が飛躍しすぎだ。というか、教会に寄付する市民くらい、ここにはいないのか?

「気にするな。一晩泊めてもらうから、その礼だよ」

「ありがとうございます。人は見かけによりませんね。ハハハ」

「おい。一言余計だぞ」

 神父は俺を見て微笑んでいる。シスターや他の信者たちも、みな笑顔で俺を見ている。

 少ないが、リザと俺で買った食料を全員に渡し、水も渡した。

 透明な水を渡したことで少し騒ぎになったが、ヌアザがその場を収めると、深々と俺に頭を下げてきた。

 大人が子供に頭を下げるな。気分が悪い。

「おい。水を渡したのはリザだぞ。俺じゃない」

「お金が無かったリザが、こんな高級な水を出せるわけがありません。アオ君。あなたでしょう?」

「…………」

 ちっ。無駄に頭が回る奴は嫌いだ。子供が水を持ってくるなんて、普通思わないだろう。そこはリザが稼いで買っきた水だと思うだろう。すぐに俺だと気づくあたり、この神父は勘が良い。

「ありがとうございます」

「気にするな」

 俺は初めて異世界に来て、大人の優しさを感じた。リザも優しいが、神父のヌアザは損得勘定がない。困っている人がいたら誰でも助けるという感じだった。なんだか、日本の父さんや母さんを思い出した。

  
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