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第一章 伝説の水魔法使い

21 職人街の前に教会へ

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 リザの提案により職人街に行くことになったが、その前にオルフェと牛二頭を預けてから行くことになった。
ポニーと牛を連れて歩くのは、かなり目立つ。だからオルフェたちを預けてから買い物に出かけるのだ。

 リザ曰く、ライドは俺たちを追ってきていないし、発信機のようなものも取り付けられていないと言っていた。動くなら今がチャンスだ。

「カイトの街にはたくさんの宗教と教会があるが、ダーナ教会は中立だ。そこにオルフェ君を預けよう」 

「ダーナ教会?」

 俺のいた村にはダーナ教会は無かった。ルドミリア教会という、訳のわからない教会はあったが、ダーナは知らん。というか、教会の奴らは村で俺を見ても助けてくれなかったので、信用していない。

「アオ君。私はダーナの信徒でもある。教会の神父様とは知り合いだし、牛たちをそこに預けよう」

 俺はこの町では何も知らないので、リザの言うことに従った。明日にはここを出るし、宿をとるよりもいいかもしれない。

★★★

 教会に着くと、ひどいありさまだった。空襲でも受けたのかと言う状態だ。屋根は半分吹き飛び、壁は焼け焦げている。もはや廃墟と言ってもいい。これで教会が成り立つのか? 教会の鐘なんか、地面に落ちてぶっ壊れているぞ。

「教会同士での争いで負けたんだ。教会はボロボロだけど、神父様は無事だ。さあ、中に入ろう」

「分かった。リザを信用しよう」

 俺たちは中に入ると、神父とシスターが出てきた。神父はリザを見ると感激し、涙を流した。

「おぉ。リザ。無事でしたか」

「はい。神父様」

 シスターも神父の後ろで泣いている。なんだこいつらは。リザの親族か? 二人とも40歳くらいの中年だが、リザのおじさんとかだろうか?

「リザ。君の求めるオアシスは見つかりましたか?」

「いえ。それはまだ」

「そうだね。たった数か月では見つからないだろう。これからもがんばりなさい。ダーナの神が見守っていますよ」

 リザはその言葉を聞いて、頭を下げる。どうやら、リザはこの町を出てから数か月程度、水源を探していたらしい。枯れた森には川が流れているというから、それを探していたのかもしれない。実際、村の奴らしか知らないから、本当にあるのか分からないけどな。

「神父様。ここにはご迷惑をおかけしたくなかったのですが、一晩だけお力を貸してはいただけませんか?」

 リザは深々と頭を下げる。よく分からいが、一応、俺も頭を下げておく。

「そんなことですか。こんなボロ教会でよければ、いつでも構いませんよ。して、そちらの子は?」

 神父は俺を見てニコニコしているが、俺は毅然として言った。

「俺は奴隷じゃない。冒険者だ。リザと一緒に冒険をすることになった」

 その言葉を聞いて、神父は目を見開いて驚いた。

「はっはっは! 冒険者でしたか! しかし、ギルドの冒険者は14歳から登録ですよ? 見習い登録でも、13歳からだ。君はまだ10歳以下に見えるが」

 俺の体は平均よりも小さい。多分、栄養が足りないからだ。10歳ではあるが、普通の10歳よりももっと小さいのだろう。

「冒険者に定義はない。冒険をしていれば、誰でも冒険者だ」

「定義? ほう。難しい言葉を知っているんだね」

 神父は俺を見てニコニコ。シスターもニコニコ。なんだか馬鹿にされている気がする。リザは俺を「男」として扱ってくれたが、こいつらは完全に子ども扱いだ。

「私はヌアザ。彼女はアリアンだ。ゆっくりとしていきなさい」

 神父とシスターは挨拶してくれる。一応俺も、「アオ」と名乗っておいた。

 それからリザは時間が無いと言って話を切り上げ、オルフェと牛たちを教会の脇にある小屋に入れた。ニワトリと豚がいたので、家畜小屋のようだった。

 教会を出ると、すぐに職人街へ向かう。その途中、リザは俺を見て言った。

「アオ君。申し訳ないけど、教会に少し寄付できないかな?」

「寄付?」

 俺たちには全く余裕が無いが、それでも寄付するのか?

「この町に来て彷徨っていた私を助けてくれたのは、神父様だ。恩返しをしたい」

 俺の金で恩返しか。まぁいいけどな。働かずに手に入れた、あぶく銭だ。人の為に使ってもバチは当たらないだろう。

「分かった。後で用意しておく」

「ありがとう」

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