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22 担任からの呼び出し。そしてカミングアウト
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ついに、学校の担任が動いてしまった。
病気のことは隠していたが、限界が来たのだ。
女性化が進み、玲の外見がすでに女となっているからだ。男性器の方も、ギリギリ残っていると言う感じで、もはや性別の戸籍変更は目前だ。
玲は放課後、担任に生徒指導室へ呼び出された。
玲の担任はナヨナヨしたへっぽこ教師だが、女生徒には人気がある優しい男性だ。名前は嶋田一志と言って、メガネをかけた化学の教師である。
生徒指導室に呼び出された玲は、TS病のことを打ち明ける気でいた。卒業する前に女になってしまうのは分かっていたので、開き直ったのだ。
「さて、斉藤玲君。呼び出された理由はわかるよね?」
「あぁ」
「君の胸が発達し、体が縮んでいるとの報告を受けている。体育教師の狩野先生からも、君の体について聞いている」
玲は体育教師の狩野と聞いて、汗臭いゴリラを思い出した。玲の体を案じて、体育を見学でいいと言った教師だ。
「玲君は、性同一性障害なのかい? 今の学校はそういう子に対しても、幅広い対応が出来るから、玲君が認知するなら、学校では準備があるよ」
「え? 性同一性障害?」
「男の子なのに、女の子の心を持っていたりする、そんな病気だよ。玲君の体の変化から、女性ホルモンでも打っているのかと思ってね。病院の診断書とかあれば、玲君を女生徒として扱うこともできるんだ。どうしても言いたくないならそのままでもいいけど、どうする?」
担任はかなり優しかった。見た目通りの男だった。いつも問題ばかり起こしていた玲にも、優しい対応でびっくりした。
「先生。俺、性同一性障害じゃないよ」
「え? 違うのかい?」
「あぁ。TS病だってさ」
「まってくれ。TS病? もしかして、心も体も女になるっていう、あれかい?」
「あぁ。発症する男は、数万人に一人っていう割合の病気だ。運が悪いことに、その病気が俺に当選しちまった」
玲はあっけらかんとして、病気をカミングアウトした。それを聞いた担任は、口を開けて驚いた。
「最近はTS病が増えてるみたいで、数万人に一人じゃなく、数千人に一人になってるみたいだけどな」
「そ、そうだったのか。ひどい病気だったんだね。じゃぁ、どうする? 卒業まであと一年近くあるけど、女生徒として通うかい? お医者さんの診断書があれば、学校も対応を変えられるよ?」
「対応を変えるってどういう風に?」
「このままこの学校に通うんなら、制服を女子の物に変えられる。あとはトイレとか女子用を使ってもらう。更衣室も、女子の場所を使わせる。その他細かいところを変えられるかな。最悪、転校するって手もある」
「転校まで出来るのか」
玲は驚いた。最近は性別問題に寛容だ。心の病気も社会がきちんと認め、いろいろと動いているのは知っていた。それは分かっていたが、自分が通う程度の低い高校でも、きちんと生徒を見てくれることに、驚いた。
「大丈夫。これからは隠さなくていいよ。君が望むなら、女生徒の制服を用意しよう。中古の制服もあるから、お金がないならそれを貸すこともできる」
いたれるつくせりでびっくりする。
「分かった。ありがとう先生。でもさ、まさか学校が俺みたいなやつに、ここまで動いてくれるとは思わなかった」
「こう言った問題に、君の素行は関係ない。それに、私はあまり熱心な教師ではないが、生徒を見捨てたりしないよ。君たちが頑張るなら、私も頑張って面倒を見よう」
玲は初めて教師に親切にされて、感動した。今まで自分が行ってきた行動を、悔い改めようと思った。
「んじゃ先生。まず俺はどうすればいい?」
「そうだな。まずは玲君を診てくれているお医者さんから、診断書をもらってきてくれ。そうすれば学校も認めざるを得ない」
「分かった」
「もしも他の生徒からいじめや差別があった場合は、速やかに我々に報告しなさい。微力ながら力になろう。あとは、そうだな。部活や委員会に入れば、そう言った差別問題も仲間が助けてくれる可能性が高い」
「は? 部活はいいけど、委員会?」
「うん。委員会は前期、後期で、各クラスから立候補を募る。立候補者がいないと、推薦や多数決で決めるんだが、確か君は風紀委員に推薦されていたね」
「え!? 俺が風紀委員!?」
「クラスのみんなが、誰も風紀委員をやりたがらなくてね。クラスの誰かが嫌がらせで君を推薦したら、いつの間にか風紀委員になっていたね。そう言えば、武尊君も風紀委員だよ。彼は何度か委員会に顔を出しているね」
「え!? 武尊が!? いつの間に!? ば、馬鹿な……」
玲は驚いたが、事実だった。玲は委員会をクラスで決める際、ずっと寝ていた。玲を嫌いな生徒が、嫌がらせで風紀委員に推薦したのだ。ちなみに、武尊は玲が委員会に行かないので、代理で何度か行かされていた。武尊は根が真面目なので、責任ある仕事は断れなかった。
「学校行事も真面目に取り組めば、君の評価も変わる。いじめや差別を受けたくなければ、君自身が変わるしかないね」
玲は改めて教師に諭され、納得した。確かに、自分が変わらなければ、相手の評価もずっと変わらない。他者に嫌われ続けるのが嫌なら、好かれる努力をしないとダメなのだ。
「勉強になったよ先生。まずは診断書を持ってくる。委員会にも顔を出す」
「そうか。玲君が変わってくれて、僕もうれしいよ」
担任の嶋田は玲を見てにっこりとほほ笑んだ。
病気のことは隠していたが、限界が来たのだ。
女性化が進み、玲の外見がすでに女となっているからだ。男性器の方も、ギリギリ残っていると言う感じで、もはや性別の戸籍変更は目前だ。
玲は放課後、担任に生徒指導室へ呼び出された。
玲の担任はナヨナヨしたへっぽこ教師だが、女生徒には人気がある優しい男性だ。名前は嶋田一志と言って、メガネをかけた化学の教師である。
生徒指導室に呼び出された玲は、TS病のことを打ち明ける気でいた。卒業する前に女になってしまうのは分かっていたので、開き直ったのだ。
「さて、斉藤玲君。呼び出された理由はわかるよね?」
「あぁ」
「君の胸が発達し、体が縮んでいるとの報告を受けている。体育教師の狩野先生からも、君の体について聞いている」
玲は体育教師の狩野と聞いて、汗臭いゴリラを思い出した。玲の体を案じて、体育を見学でいいと言った教師だ。
「玲君は、性同一性障害なのかい? 今の学校はそういう子に対しても、幅広い対応が出来るから、玲君が認知するなら、学校では準備があるよ」
「え? 性同一性障害?」
「男の子なのに、女の子の心を持っていたりする、そんな病気だよ。玲君の体の変化から、女性ホルモンでも打っているのかと思ってね。病院の診断書とかあれば、玲君を女生徒として扱うこともできるんだ。どうしても言いたくないならそのままでもいいけど、どうする?」
担任はかなり優しかった。見た目通りの男だった。いつも問題ばかり起こしていた玲にも、優しい対応でびっくりした。
「先生。俺、性同一性障害じゃないよ」
「え? 違うのかい?」
「あぁ。TS病だってさ」
「まってくれ。TS病? もしかして、心も体も女になるっていう、あれかい?」
「あぁ。発症する男は、数万人に一人っていう割合の病気だ。運が悪いことに、その病気が俺に当選しちまった」
玲はあっけらかんとして、病気をカミングアウトした。それを聞いた担任は、口を開けて驚いた。
「最近はTS病が増えてるみたいで、数万人に一人じゃなく、数千人に一人になってるみたいだけどな」
「そ、そうだったのか。ひどい病気だったんだね。じゃぁ、どうする? 卒業まであと一年近くあるけど、女生徒として通うかい? お医者さんの診断書があれば、学校も対応を変えられるよ?」
「対応を変えるってどういう風に?」
「このままこの学校に通うんなら、制服を女子の物に変えられる。あとはトイレとか女子用を使ってもらう。更衣室も、女子の場所を使わせる。その他細かいところを変えられるかな。最悪、転校するって手もある」
「転校まで出来るのか」
玲は驚いた。最近は性別問題に寛容だ。心の病気も社会がきちんと認め、いろいろと動いているのは知っていた。それは分かっていたが、自分が通う程度の低い高校でも、きちんと生徒を見てくれることに、驚いた。
「大丈夫。これからは隠さなくていいよ。君が望むなら、女生徒の制服を用意しよう。中古の制服もあるから、お金がないならそれを貸すこともできる」
いたれるつくせりでびっくりする。
「分かった。ありがとう先生。でもさ、まさか学校が俺みたいなやつに、ここまで動いてくれるとは思わなかった」
「こう言った問題に、君の素行は関係ない。それに、私はあまり熱心な教師ではないが、生徒を見捨てたりしないよ。君たちが頑張るなら、私も頑張って面倒を見よう」
玲は初めて教師に親切にされて、感動した。今まで自分が行ってきた行動を、悔い改めようと思った。
「んじゃ先生。まず俺はどうすればいい?」
「そうだな。まずは玲君を診てくれているお医者さんから、診断書をもらってきてくれ。そうすれば学校も認めざるを得ない」
「分かった」
「もしも他の生徒からいじめや差別があった場合は、速やかに我々に報告しなさい。微力ながら力になろう。あとは、そうだな。部活や委員会に入れば、そう言った差別問題も仲間が助けてくれる可能性が高い」
「は? 部活はいいけど、委員会?」
「うん。委員会は前期、後期で、各クラスから立候補を募る。立候補者がいないと、推薦や多数決で決めるんだが、確か君は風紀委員に推薦されていたね」
「え!? 俺が風紀委員!?」
「クラスのみんなが、誰も風紀委員をやりたがらなくてね。クラスの誰かが嫌がらせで君を推薦したら、いつの間にか風紀委員になっていたね。そう言えば、武尊君も風紀委員だよ。彼は何度か委員会に顔を出しているね」
「え!? 武尊が!? いつの間に!? ば、馬鹿な……」
玲は驚いたが、事実だった。玲は委員会をクラスで決める際、ずっと寝ていた。玲を嫌いな生徒が、嫌がらせで風紀委員に推薦したのだ。ちなみに、武尊は玲が委員会に行かないので、代理で何度か行かされていた。武尊は根が真面目なので、責任ある仕事は断れなかった。
「学校行事も真面目に取り組めば、君の評価も変わる。いじめや差別を受けたくなければ、君自身が変わるしかないね」
玲は改めて教師に諭され、納得した。確かに、自分が変わらなければ、相手の評価もずっと変わらない。他者に嫌われ続けるのが嫌なら、好かれる努力をしないとダメなのだ。
「勉強になったよ先生。まずは診断書を持ってくる。委員会にも顔を出す」
「そうか。玲君が変わってくれて、僕もうれしいよ」
担任の嶋田は玲を見てにっこりとほほ笑んだ。
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