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19 玲と武尊

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 武尊は玲の部屋に行くと、コンビニで買ったであろうケーキを渡してきた。雑だが、武尊らしい見舞い品だ。

「あれから病気はどうなんだ? 大丈夫なのか? メールも返してくれなかっただろう? 急に休んだから、心配したんだぞ」

 武尊は玲のことをずっと心配していた。玲の股間から血が出てから、ずっと心配していたのだ。 

「返事をしなくて悪かった。体は、大丈夫だよ」

 玲はジャージ姿で、体育座り。むすっとして、すごく機嫌が悪そうだ。

 部屋の中は散らかっており、服がところどころに脱ぎ捨てられている。

「学校には戻れるのか?」

 その言葉を聞いて、玲は数秒黙り込む。

「ん。あぁ。戻るよ。だけど、いじめられるようなら、学校を辞める」

 武尊は玲から「いじめ」と言う言葉を聞いて、なによりも驚いた。いまだかつて、玲はいじめなど受けたこともないからだ。武尊もそうだ。玲がいじめと言う単語を出すこと自体、ありえなかったことだ。

「は? いじめって、お前。マジで言ってんのか? 天下の斉藤玲をいじめる奴なんているわけ……」

「これを見てもか?」

 玲は武尊に、大きくなった胸を見せた。ジャージをたくし上げ、突然見せた。胸の大きさは、すでにDカップはありそうだった。

「え!?」

 武尊は玲の胸を見てびっくりする。育ちまくっている。

「今はまだごまかせるが、夏になったら水泳とか、いろいろあるだろ。多分、隠し通すのは無理だ」

 武尊は玲の胸を見て、ドギマギする。乳首はツンと上を向いていて、すごく美しい形をしていた。玲の顔も、すでに女の子だ。すっぴんで化粧はしていないが、すぐに美人と分かる顔をしている。

「TS病がどれくらい流行っているか知らないが、こんな気持ち悪い体を見たら、クラスの奴も俺を気味悪がるだろ? 俺だってそうだ」

「そんなこと……」

 武尊は玲の言葉を否定できない。実際、差別を受けることはあるかもしれない。いじめなんて、学校では当たり前だ。玲と武尊が知らないだけで、普通にあるのだ。

「武尊には迷惑をかけた。これからも迷惑をかけると思うが、いじめられるようなら学校を辞めるよ」

「でもそんな、いきなりいじめって……」

「いままで喧嘩三昧だったんだ。俺に恨みのある奴もいるだろ? そんな奴と学校にいたら、どうなるか分かるだろう?」

「それは……」

 下手をしたら、玲はレイプされてしまう。

「だから、そうなりそうだったら、辞める」

「いや、待てよ。まだそれを決めるのは……てっ、え?」

 玲は泣いていた。これまでは気丈に振る舞っていたが、実はショックを受けていたのだ。

 武尊は、初めて親友が泣いているところを見てしまった。

「玲。お前」

「ごめん。卒業までは持つかと思ったが、無理みたいだ」

 玲は泣き続ける。胸をはだけたまま、泣き続ける。

「ごめん」

 玲はなぜか武尊に謝り続けた。

 武尊はポロポロと涙をこぼす玲を見て、いてもたってもいられくなった。武尊は玲を抱きしめた。

「え? 武尊? ちょっと、なにしてんだ?」

 玲は武尊に抱きしめられ、びっくりする。

「いいから黙れ。玲は俺が守る。卒業までは一緒にいる。卒業したら、お前はお前の道を行け。車の仕事が出来るかは分からないけど、専門学校に行くつもりだったんだろ?」

「あ。う、うん」

 武尊は玲をぎゅっと抱きしめ、優しく語り続ける。

「心配するな。ずっと一緒だったろ? 俺はお前を裏切らねぇよ」 

「うん。そうだな一緒だったな」

「俺だって、こんなこと、恥ずかしいんだぞ? 何度も言わすなよ?」

「うん」

 抱きしめられながら、玲は泣き笑い。もはや、不良だったころの面影はない。

 武尊は泣いている玲を見ると、あらがえない感情が押し寄せてきた。

 自分の腕の中で笑う玲が、あまりにも可愛いので、自然と体が動いてしまった。ぎゅっと強く抱きしめて、そして。

 唇にキスを落とした。

「……んむ!?」

 玲は一瞬驚いたが、武尊の気持ちに気付いたのか、抵抗はしなかった。

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