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13 学校での生活 授業編

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 午後の授業になった。特に誰かに絡まれることなく、普通にここまでこれた。

 普段から玲と武尊は学校で寝てばかり。特に問題を起こさない。たまーに喧嘩をして窓ガラスを割ったり、壁を壊したりするくらいだ。教師にとってはそれが問題なのだが、玲と武尊は普段から暴れたりしていない。

 たまに喧嘩に巻き込まれたり、教師に呼び出されたりと、学校にも敵は多いが、玲はこれから卒業まで頑張らなければならない。

 まずは、学校の授業をきちんとうけて出席日数を稼ぐこと。サボるわけにはいかない。その中で危険な授業が、体育だ。

 玲は着替えをトイレで済ませたが、他にも問題はある。運動能力が落ちていることだ。

 最悪なことに、今日は体力テスト。ただひたすら校庭を走るだけだ。なんの罰ゲームだと思うが、高校のカリキュラムにあったので仕方ない。

 玲は体の調子が悪い中、わき腹を押さえて必死に走った。クラスメイトからは、玲が退院して弱っているのだと思われてしまったが、それでも玲は頑張って走った。

「玲。あんまり無茶するな。体がまだ作り替わってないんだろ?」

 武尊が優しく声をかけてくれるが、玲は突っぱねる。

「俺はこの程度で負けねぇ」

「おいおい。何と戦ってんだよ。体育の評価が悪くても、出席さえあればなんとかなるだろ。無茶するな」

 玲は額にものすごい汗を流している。

「いいから、先に行ってろ。俺は俺のペースで走る」

「そうか? 無茶するなよ玲」

 武尊は先を走っていく。他の男子も玲を追い越していく。クラスの男子たちは弱っている玲を見て、もしかしたら、今なら喧嘩で勝てるんじゃねぇか? と玲を見ているが、武尊が睨みを利かせたので、すごすごと退散していく。

 ぜーぜー言いながら、玲は校庭を走る。顔を上気させ、陸上部に負けてなるものかと、必死に走る。すでに周回遅れだが、玲は巻き返してやると頑張っている。

 そこで、体育の教師からストップがかかった。ゴリラのような、体育教師からだ。

「おい玲! 無茶するな! お前は退院明けと聞いたぞ! こっちに来て休め!!」

 今の時代、熱中症で倒れる子供は普通にいる。教師もこのようなケアは重要だ。ゴリラのような教師は、へとへとになっている玲に近づくと、肩を貸した。

「倒れられると、俺が困るんだよ! お前のようなクズでも、学校の生徒なんだからな!」

 ゴリラ教師は不良の玲を嫌っているが、玲も生徒だ。救急車にでも運ばれたら、大ごとになる。

「いいか!? 面倒は起こすな! 俺の給料に響くんだよ! 分かったなら…………えっ!?」

 ゴリラ教師は、玲の上気した顔を見てギョッとする。

「え!? お前、斉藤玲か?」

「あ? 何言ってやがる、ゴリラ」

「ゴリラって、お前な……、いや、でも」

 ゴリラ教師は玲に肩を貸して、ドギマギする。

 玲は顔を真っ赤にさせて、はぁはぁと息を切らせている。舌を少しだけ出して、目も潤ませている。汗だらけの体からは、女の子の甘酸っぱい香りが漂っている。

 完全に女の子のような玲を見て、ゴリラ教師はびっくりする。

「れ、玲? お前、玲だよな?」

「あ? だから何言ってんだゴリラ」

 玲は悪態をつくが、はぁはぁ息を切らせている。武尊が遠くから玲を心配していたが、教師が近くにいるので手が出せない。

「なんだか、体もやわらかいが、まあいい。とにかく休め。ちゃんと出席しておいたことにしてやる」

「そうか? あんたが俺に優しくするなんて珍しいな」

 玲はゴリラ教師に向かって、ニコッと笑った。

 玲の顔はとても整っており、美人化してきていたので、笑顔一つとっても破壊力がある。ゴリラ教師は玲の笑顔に魅了され、変な世界に目覚めそうだった。

「うっ」

 校庭の隅まで肩を貸してやり、玲を下す。下手な女子生徒より可愛かったので、ゴリラ教師は信じられない。

「今日は見学していろ。無理はするなよ」

「おお。ありがとう」

 玲はまた微笑む。すごく可愛い顔だ。普通にお礼を言っただけだが、ゴリラ教師には、玲が気があるように見えたかもしれない。

「うっ」

 ゴリラ教師は玲の男の娘ぶりにたじろぎ、何も言わずに去っていく。それに気づかない玲は、「どうしたんだあの野郎は? いつもと態度が違うぞ。いつもなら引っ叩いても走らせるのに」とぼやいた。

「まぁいいか。体が慣れるまで休もう。今日はラッキーだな」

 玲はまったく気づかなったが、クラスの男子には体力が無いことがばれ、体育教師には玲の異変を感じ取られ、かなりまずい状況になっていった。まだまだ病気が進行していくのに、早い段階で玲の症状に気付かれてしまった。


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