精術師と魔法使い

二ノ宮明季

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三章

3-51 外側の器ごと、人間ごと、精術師が

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「いいわよ。うちは学校を卒業したら教えてるから、それがちょっと早くなるだけだし」

 最初にファインのお母さんが大きく頷いた。

「クロエ、お前はどうだ?」
「……ここまで来たら、言わずにはいられませんよね。特に、シュヴェルツェが再び動いているとなると、無関係ではないですし」

 アーニーのお母さんも、ため息交じりに返す。

「お願いします」

 そして、ルースのお父さんに頼んだ。

「残りはレヴィンだけだが、無言で了解を取ったから、伝えるぞ」

 ……つまり、きっとこれが親父が一番言いたくなかった事。そして、ルースのお父さんが一番気にかけている事。

「シュヴェルツェは、あいつが入り込んだ器ごと、精霊石を武器にしたもので倒す。いや、こんな言い方だと生ぬるいな」

 つまり、と、嫌な予感が背中を伝う。

「外側の器ごと、人間ごと、精術師が殺すんだ」
「……え?」

 この「え」は、誰が口にしたものかわからない。
 オレだったかもしれないし、スティアだったかもしれない。もしかしたらキラキラした三人組かもしれないし、ベルンシュタインの二人のどちらかだったかもしれない。
 あるいは、全員だった可能性すらあった。
 頭がその意味を理解するのを拒否するが、拒否もしきれず、オレの脳裏には、対峙したシュヴェルツェが浮かんでいた。
 グロリオーサの中に入ったシュヴェルツェ。人の身体を乗っ取り、痛みすら感じないようにして好き勝手遊んでいたシュヴェルツェ。

「で、でも、おかしくないか?」

 オレはふと思い出し、からからに乾いた声を出した。

「あいつ自ら、傷つけてみろ、みたいな事をしてたんだ」
「挑発じゃないのか?」
「挑発かもしれないけど、オレ……」

 ルースのお父さんは眉間に皺を寄せながらも、 オレの言葉の続きを待ってくれる。

「オレ、ジギタリスが止めてくれなかったら、殺してたはずなんだ」

 今でも鮮明に思い出せる。無防備に、手を広げていた様子を。

「武器で、外の人間ごと殺すって……それ、本当に合ってるのか?」

 オレの疑問に、誰も答えない。
 シュヴェルツェの倒し方を知っていた人も、誰も何も言わないのだ。

「……その件に関しては、よく考えておくわ。それと、ヴニヴェルズムの家にも話しておく」

 最初に口を開いたのは、ファインのお母さんだった。

「い、いや、でも、クルト君の勘違いという事も」
「そんな甘い考えで、取り返しのつかない事態になったらどうするのよ」

 ファインのお母さんが、ギロッとテロペアのお父さんを睨みつける。

「あんたの息子が、もしかしたらシュヴェルツェの器にされるかもしれない。そうなったら、あんたの所の頑固ジジイは……孫でも殺すでしょ」
「それ、は」
「それを止められる可能性があるのなら、今までやってきた事が無駄だったとしても、検証する必要があるんじゃないの?」
「俺も同意見だ」

 今度はルースのお父さんが、軽く手を上げて話に入っていった。どうやらファインのお母さんと同じ考えのようだ。

「お前がクルトの意見を勘違いで済ませたいのは、何の為だ?」
「いや、実際に勘違いかもしれないという意見だ」
「だから、目の前にぶら下がっている可能性を無視出来る理由を聞いてるんだよ」

 なんか……険悪になってきたな。オレ、不味い事言った?
 不安になってちらっとスティアを見ると「お前はお前の見たものを言ったまでだ。胸を張れ」と頷かれる。心強い!

「……ベルンシュタイン、クルト君の言っている事が正しい可能性は?」
『……私はベルンシュタイン。今、あなた達の心に直接語り掛けています……』

 喋った! なんか、変な方向で!
 オレは今まで全く口を開かなかったベルンシュタインの大元が喋った事に驚いて、そちらをじっと見た。こいつ、あのベルンシュタインさん家にお世話になっている時も、一回も喋らなかったからな。びっくりした。
 ていうか、心って……。精術師にしか聞こえていないだけなのに。

『……今回の件に関しては、精霊としては何も言える事はありません……』

 ベルンシュタインの大元は、人の形をした何かが金色に発光している、「あたし妖精さん」みたいな姿。そのベルンシュタインの大元が、本当に心に響いてくるような感じで厳かに語るものだから、なんとなく有難いお言葉のように感じてしまう。

『……シュヴェルツェは人間から生み出された精霊と言っても過言ではなく、その感覚は精霊よりも人間に近い物……』

 おお、ありがたや……。じゃ、なくて! あいつ、感覚が人間に近いのかよ! どうりで俗物的だと!

『……故に、私達の尺度で測ってもいいかと問われれば、難しいと答えるよりありません……』

 そっか。精霊にしてもわかりにくい相手なのか。

『……シュヴェルツェが最初から私達を騙していた可能性もあるかと……』

 最初からの最初って、いつの事だろう。
 少なくとも親父が産まれるよりも前だよな? 親父の一件の時にはすでにそう伝わっていたんだから。

『アタシも同意見よ』

 続いたのは、グレンツェントの大元だ。鬣のついた獅子が女性的な言葉遣いだと、ちょっと混乱するな。やっぱり。
 でももふもふしてそうで、触りたくはなる。

『アタシ達の全盛期では、確かに伝わっている方法でどうにか出来ていたわ』

 グレンツェントは身体をしならせながら目を細めた。ちょっと色っぽい。

『だけど、どこかに抜け道があった可能性は否定しきれないわね』
『オレはノーコメントで。どっちにしたって確証はねーし、昔は上手くいっていたのは事実だしな』

 うーん、精霊達もちょっと困惑している感じか?
 全てはシュヴェルツェという精霊の性質が問題か。

「……こういう事であれば、否定はしきれないですね」

 次に口を開いたのは、アーニーのお母さんだった。精霊に話を振った張本人だもんな。
 しかし彼女がそう言った事で、テロペアのお父さんは「うぐぐ」と呻いた。オレの勘違いって事にできなかったからか? オレ、嘘ついてないのに。

「ジギタリスも見てるし戦ってるんだから、オレの言葉が信じられないならジギタリスにも聞いてみればいいじゃん」
「あ、いや、別に嘘をついているとか言っているわけではなく」
「やっぱりごめんなさいが出来ないんだ」
「い、いや、そうではなく。す……すまなかった」

 しどろもどろに言い訳を始めたテロペアのお父さんは、ルイザにジロっと睨まれてオレに頭を下げた。どうしよう……ヘタレって言われてるの、否定しきれなくなってきたな。

「ヘタレは置いておくとして、とりあえずクルト君の言った事はヴニヴェルズムには知らせるし、あたし自身も調べてみるわ。ジス君に関しては、ヴニヴェルズムに言えば管理局の中で、調査の一環として聞いておいてくれるだろうし」
「そうですね。管理局には、ウィルくんもライリーちゃんもブレイデンくんもいますし、それがいいと思います」

 管理局にヴニヴェルズム家の人、いっぱいいる。三兄弟って言ってたもんな。
 一人はカサブランカ様の代わりに挨拶に出てきた人だとしても、他に二人もいるって凄いなぁ。

「じゃ、ある程度の動きが決まったところで俺からフォローを入れよう」

 ルースのお父さんは、オレとスティアに向き直ると真面目な顔をした。こういう顔をするとチャラくないから、ルースもたまに真面目な顔をするといいと思う。

「クルト、スティア。お前らのお父さんが、お前らに話をしなかったのは、何も信用していないとか、愛していないとか、そういう理由じゃないんだ」
「そうなのか?」

 別に親父の愛を疑った事はない。だが、改めてそう言われると、どうしても気になってしまうのだ。

「むしろその逆で、あいつがお前達を愛しているから言えなかった」

 嬉しいけど恥ずかしい。親父を良く知っている人の発言で、きっと疑う必要のない人だからこそ、気恥ずかしさがぶわーっと出てきてしまう。

「あの時、シュヴェルツェを封印したのはお前達のお父さんだから、だ」
「それが、なんだよ」

 照れ隠し半分、警戒半分。根拠にシュヴェルツェが出る事への恐怖のようなものもどこかにあった。
 スティアも「シュヴェルツェが何か?」くらいの勢いで眉間に皺を寄せている。

「自分の愛する子供に、人を殺したなんて言いたい親が、いるかよ」
「……それ、は」

 そうか。そういう事か。
 だから親父は、オレ達には何も言わなかったんだ。

「まして、こんなに早く復活するだなんて、誰も思っていなかったんだ。本来の周期であれば、お前達が歳を取って死んでから、なんだから」

 ……早すぎる復活。やっぱり、色んな事が間違っている気がする。

「だからこそ、大切な子供に人を殺す方法を教えるだなんて、あいつには出来なかったんだろうよ」

 親父にしてみれば「教えなくてもいいなら教えたくないもの」だったんだ。それなのに、何故かシュヴェルツェは早く復活し、オレ達の脅威になっている。
 誰にとっても、想定外の出来事だ。

「でも、安心したといえば、安心したな」
「どこが」
「やっと大切にしたいと思える家族が出来た事、だよ」

 シュヴェルツェの事に安心出来る部分なんかないぞ、と、凄んでみたが、ルースのお父さんは飄々と続けた。それも、意外な言葉を。

「これ以上は、今回の件に関係がないから言わないが、あいつに大切にしたい相手が出来た事を、俺は嬉しく思うよ」
「……ありがとう」

 親父の友達だから、親父の事を想ってくれてたんだ。ごめん、凄んじゃって。

「オレ達にそういう風に言ってくれる事も、親父の事、分かってくれる事も」
「そうだな。父さんはあれで人見知りだから、わかって貰えているのは嬉しい」

 シアが小さく「スッティー、遺伝したんだ」と呟いた。そうか、スティアが初対面にツンツンするのって親父の遺伝だったのか!
 親父も初対面だといっぱい警戒するもんなぁ。

「とりあえず、どうしてももっと気になるのなら、続きはお父さんから聞け。お前達のお父さんから情報を取るのは難しいだろうけどな」

 ぐっ、確かに! 親父から聞き出すって、いくら積めばいいんだ!?

「あと、もう一個だけあいつに伝言を頼めるか?」
「おう! 頼めるぞ!」
「いい加減会いに来い。いつまでも気にすんな、って伝えてくれ」
『がってんしょうちー』
『さすがグラジオラスー』

 オレがツークフォーゲルに頼むよりも先に、ツークフォーゲルは動いた。それをスティアも一緒に「おー」と見送ってから「伝えてくれるって」と、ルースのお父さんに伝えた。

「マジ? アザーッス」

 あ、やっぱりルースのお父さんだな。アザーッスって言った!

「よし、じゃ、湿っぽい話はここまで!」

 ルースのお父さんは、両手をパンっと打ち鳴らす。

「食事を中断させちまって悪かったな。ほら、飯食おう」

 オレ達はルースのお父さんに促されて食事をする事にした。精術師ではない面々に、さっきの精霊の発言を聞かれ、答えたりしながらも和やかに食事は進む。
 雰囲気も元の賑やかなものに戻った頃に、どこからかテロペアが「めっちゃ混んでたー」と言いながら飲み物と追加の食糧を持って帰ってきた。これがまた、肉多めだったので非常に有難く、オレも食べた。美味しい。
 オレの試合は午後だ。ちゃんと腹ごしらえをして、気持ちも落ち着けて臨まなければ。
 
   ***

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