119 / 228
三章
3-13 ほらね、息ぴったり
しおりを挟む「スティア後ろ! 精術でサポートが出来るだろ」
「ふん、その男ではやはり精術のサポートという意味では心もとないか」
「そうじゃなくて」
何を言っても好意的な方へと転がらない。
「テロペアは強いから、前にでてガンガン攻撃してほしいんだって」
「うん! ベユの作戦だもん。おれはその作戦がいいにゃー」
ほとほと参ってしまいながらもテロペアにお願いすれば、彼はわざとらしい位の笑顔で、にこにことミリオンベルを見た。
「で、大将はベユにしよ。やっぱりおれかベユがいいと思うんだよね。ルーシュの事もあるし。どうせあいつは数合わせだし? 前衛でも大丈夫だよ。おれがベユを守るから」
「ふん、数合わせであっても戦力は戦力だ。貴様のようにどの程度使えるのかもわからぬ輩には何も言われたくないな」
ついにミリオンベルは、大きく息を吐く。
「二人とも……」
「ミリィ、良い事を教えてあげよう」
ぐったりとしている彼の肩をポンと叩いたのは、ネメシアだ。
「二人とも人見知りだから、これが最大のコミミ……コミュニュ……コニュミ……」
「コミュニケーション?」
「それ。それだから」
『違う!』
否定したのは同時だった。
ネメシアが噛みながらも伝えたそれは、二人にとっては不服だったのだろう。だが彼女は、にっこりと笑う。
「ほらね、息ぴったり」
そして指差しながらミリオンベルに伝えた。
「そっか。じゃあ仕方がないな」
彼は彼ですんなりと信じると、こくりと大きく頷く。
「いいなー、テロペアくんとスティちゃん、仲良しで」
「誤解するなアリア。私がこれと仲がいいはずがないだろう」
「しょーだよ。こんな女と仲良くするわけにゃいでしょ?」
どこから出したのか、いつの間にか手にピンクのリボンを持っているアルメリアが羨望の眼差しを向けると、二人は首を左右に振った。
「二人とも、仲良くしてくれないのか?」
待ったをかけたのはミリオンベルだ。このタイミングを逃してなるものかと、チームとしての結束を強くする為に間に入る。
「……仕方にゃいなー。大会中だけね」
「ああ。大会の、試合中だけは仲良くしてやろう」
結果として彼の行動は功を奏し、距離はあるものの一応の譲歩が見えた。
「ミリィ、二人はちょっとずつ距離を詰めないと受け入れられないんだよ」
「なるほど、わかった」
「ええ、わたしもわかったわ」
天然暴走娘が説明をすると、ミリオンベルとアルメリアはこくこくと頷く。
『……もう、それでいい……』
険悪な二人はまた、大きく妥協をしてから息を吐き出した。こうなってしまっては、もうネメシアのペースに巻き込まれる。
「作戦もアレだ。ベルが言ったやつでいい」
「しょーしょー。ベユが大将。前衛は俺とベユ。後衛がコレ」
「人をこれ扱いするな! 私はスティアだ!」
「えー、でもー、あんただっておれの事、貴様って呼ぶじゃん。おれ、貴様さんじゃないですしー?」
再びミリオンベルがおろおろとし始めると、ネメシアは彼の袖をちょいちょい引っ張った。
「ね、戯れてるでしょ?」
『違う!』
「息ぴったりー」
結局上手い反論も見つからず、二人は「わかった」だの「もう作戦会議終わり!」だのと話を打ち切った。おろおろしていたミリオンベルだったが、最終的には「こういう仲良しの形だよ」というネメシアの言葉に大きく頷く。彼の中では納得がいったらしい。
「スティちゃん、おしまいなのよね?」
「その言い方だと、私が終わっているようなのだが」
アルメリアのキラキラとした視線を受け、スティアは表情を引きつらせた。
「おそろい、しましょ?」
「しーましょ!」
アルメリアの手にはリボン、ネメシアは何も持っていないが、わしわしと手を動かしている。
「くっ……す、好きにしろ!」
結局この二人に敵うはずもなく、スティアは髪の毛を触らせる事を決意した。
目の前のテロペアが「あーあ、ご愁傷さまー」と鼻で笑いながら言ったのに腹は立つものの、そのテロペアもすぐにミリオンベルに「別に喧嘩じゃないよー」とフォローに回ったあたり、彼にも受難が訪れているようだ。
どうも作戦会議よりももっと大変な事が起こりそうな状況のまま、時間は進む。
***
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる