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三章
3-8 明日の作戦会議でも、どうかな?
しおりを挟む「本人が言った通り、お隣にある雑貨屋さんのお嬢さんだよ。お兄さんと二人暮らしをしているんだ。ドルンリートっていうお店なんだけど」
所長がそう言うやいなや、ディオンさんが大きく咽た。
「ま、まさか、スターチス・ブルーメの……!」
「そうそう。それが、今の子のお兄さんだね」
あれ? スーさんの事を知ってるのか?
「嘘だろ……」
「スーさん、嫌な人なのか?」
「いや、スーさんはいい人だよ」
ディオンさんの反応がよくわからなくて、オレは所長に尋ねた。が、所長はにっこりと笑って返す。
「ただ、本当は凄い人っていうだけで」
「え!?」
凄いって何? 本性はコスモス!?
「うちの隣なんかで雑貨屋をやってるけど、あの人、本当は人気デザイナーだからねぇ」
「人気デザイナー!?」
え? 待って、じゃあ、オレが今着ているこの制服って高級品か!?
「あー、わかる。スーさんのお洋服、中々いいお値段なんだよねぇ」
「ちょ、おい、お前は知ってたのか!」
「え? うん。うちにも何着かあったし」
「だー! お嬢め!」
高級な服が何着もある家って何だよ!
スティアが、スーさんの話を聞いてから制服をもそもそ触っている。わかる、それの値段、気になるよな。
「というか、ブルーメ一族っていうと、第一にいると結構耳にするよー。なんでも、王族のお洋服を作ってるらしい、って」
「マジか」
一族って事は、スーさんのお父さんとかお母さんも凄いのか。え? じゃあ、コスモスも?
うっそ、そんな気は全くしなかったんだけど。
オレ、今まであそこはフリルとレースが蔓延る魔窟だとばかり……。特にコスモスに飾り立てられるし。
「ただいま帰ったわ!」
「お帰り。ここは君の家じゃないけどね」
早ぇよ! そして当たり前のように突然入ってくるのか!
「お兄ちゃんから許可を貰えたの!」
あー、スーさんなら駄目って言わなそうだもんな。あの穏やかな人が人気デザイナーか。
「あの、本当にいいの? 君の家って」
「あぁ、いいのいいの。部屋ならあるわ! そして、とびきり可愛くしてあげる!」
「可愛く……?」
この大男が、可愛い部屋に寝泊りするの? 可愛い部屋ってどんな部屋? ピンク、フリル、レース、リボン、みたいな感じ?
「ま、そんなわけだから、夜には家に来てね。隣だから」
「あ、ありがとう」
どうやら話はまとまったらしい。基本的にコスモスが一人でさっさと決めてしまったような気はするが。
「ご飯はどうする? ベルが出す?」
「どっちでもいいけど」
ベルはそう返しながら、ディオンさんへと視線を向けた。
「あ、俺達は俺達でどうにかするのでお構いなく」
「……だって」
「わかったわ!」
慌ててぶんぶんと首を振った彼の言葉を受け、コスモスは大きく頷いた。
「もしも必要になったら言ってね。うちでも用意出来るから!」
ご飯までばっちりサポートが出来るのか。意外と至れり尽くせりの宿だ。本当は宿じゃないけど。
「じゃ!」
「本当にそれだけ言いに来たんだね!?」
「そうよ」
コスモス、すげぇ。
彼女は大きく頷いてから、手を振って去っていった。激しい。
「……えっと、明日の作戦会議でも、どうかな?」
嵐が去っていった後の何でも屋で、ディオンさんがポツリと呟く。
「そうしよう」
そう同意したのは誰だったか。いや、大会に出る全員だったかもしれない。
「まさか別のチームがいる前で作戦会議をするってわけにもいかないし、ちょっと一緒に外に行きませんか?」
「あ、はい!」
「僕は兄さんに従うよ。ここでも、外でも、火の中でも、どこでも!」
「ラナ、火の中は危ないからやめよう」
丸焦げになるぞ。
エーアトベーベンはこちらのツークフォーゲルを見ながら「焼き鳥か」と呟く。その連想ゲームやめろ! ツークフォーゲルも自ら「じゅー」って言うの止めろ。焼けちゃってるだろ、それ。
「夕方には食事の支度をするから。夕食までには帰って来いよ」
「わかった」
今日のご飯、何だろ。鶏肉を焼くのかな。じゅー。
「ベユ、あいつらが外に行くなら、おれ達はここで作戦会議しよーよ」
「うん」
その方がいいだろう。ベル、今は所長の近くに居たいだろうし。
「スティア、いいか?」
「構わん」
ベルがスティアに確認すると、すぐに頷く。これで、それぞれの行動は決まった。
「じゃ、また後で」
そうしてオレ達は別れて作戦会議をする事にした。
***
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