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一章
1-25 子供の教育には熱が入ってしまう方なのだよ
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よく考えて見なくても分かる。実際に、模擬戦以外で人に武器を向けたのは初めてだったのだ。多少の不安位、あって同然だろう。
だが、無駄に大げさな武器を向けた事で、多少なりとも相手が怯んだ可能性もある。
じっとブッドレアを見ると、彼の表情は余裕そうなものだった。
「どれ、一つ相手をしてあげようではないか。教師とは人を育てる職業なのだから、ね」
「な、舐めやがって!」
オレは槍を大きく振り被ると、シアに当たらないように気を遣いながら振り下ろす。
振り下ろした瞬間に思わず目を瞑ってしまったが、想像した人間の肉に武器が触れる感覚が手に伝わってくる様子はなく、寧ろ硬い馴染のある震動が来た。
目を開ければ、ブッドレアは片手に持った杖でオレの槍を止めていた。
柄の部分と、杖の木目が合わさってはいるが、どちらの得物にもヒビが入った様子はない。
「駄目だよ、敵から目を逸らしては」
にっこり笑ったまま、ブッドレアはオレの槍を押し返す。
――と、次の瞬間。彼は僅かに眉を顰める。
「子猫ちゃん、甘噛みはほどほどにして貰えないかね?」
顰めた眉は、あっという間にハの字に変わり、どこかうっとりとした表情をシアへと向けた。視線の先のシアは、自分を捕えるブッドレアの腕に噛みついていたのだ。注意されている今なお、「うー」と唸りながら口をもごもごさせている。
「こういった事はあまり趣味ではないのだが、仕方があるまい」
ブッドレアはシアを振り払うと、倒れ込んだシアの足を杖で叩く。バチンともゴチンとも取れぬ鈍くありながら高い音がこの場に響いた。
だが、痛みはかなりの物だったようで、倒れ込んだまま起き上がれないシアが、涙目で息を飲んだのが見て取れる。声も出ない程、痛いとか、怖いとか、そう言うのがあったのだろう。
「お前!」
「さて、続きと行こうではないか」
ブッドレアは微笑みを浮かべたまま杖の先を捻ると、銀色の細い刀身を出した。杖だと思っていたそれは剣……いや、レイピアだったのだ。所謂仕込み杖というものだったようで、刃を抜いた後の鞘を無造作にベルトにひっかける。
刃はオレに向けられ、近くにはシアが倒れている。
リーチの差であれば自分に理がある筈なのだ。決して絶望的な状況ではない。それなのに、なぜだろうか。オレの槍を握る手は震え、刃先も揺れる。
「いつでも来たまえ」
「やってやらぁ!」
次は目を逸らしては駄目だ。とにかく切り抜けて、シアを助けて、それからアーニスト達に知らせないと。
そう、実践だからと言って殺す必要はない。ただ、この場さえ切り抜けられればいい。
オレは自分自身に言い聞かせる、これで少しでも落ち着けば、と思っての事だ。
ブッドレアは余裕があるせいか、オレが向かって行くまで仕掛けてくる様子はないが、あいつの横で倒れ込んでいるシアを残して逃走なんて出来ない。
オレは震える手を槍を握り直す事で強引に落ち着かせた。
「おりゃあ!」
自分で自分を欺かなくては。怖くはない。全く怖くなどない。
言い聞かせながら槍を振るうと、ブッドレアは微笑みを浮かべたままレイピアよりも更に細い刀身でオレの攻撃を受け止めた。
いや、正確には受け止めたのではない。受け流したのだ。ほんの少しだけ剣に力を加え、オレが全力で力を込めた槍の軌道を変えたのだろう。行き場を失った力は、重力と共に地面へと槍の先をめり込ませた。
「ふむ。いつでも来たまえとは言ったが、ここは君が引いた方が良い様に思えるね。力任せにしか攻撃出来ないのであれば、折角ご立派な槍を持っていても無意味になってしまうのだから」
「なっ――!」
「私は彼女さえ置いて行ってくれるのなら、君の事を見逃すのはやぶさかではないのだよ。弱い者いじめのようになってしまいそうで、私としては心苦しいのでね」
「バ……バカにしやがって!」
余裕顔のブッドレアに、オレは再度槍を構えて振り降ろした。
しかしまたしても受け流されると、今度は彼の蹴りがオレの腹に直撃する。息の詰まる圧迫感に喘ぎながらオレは膝をつくも、追撃はいつまでたってもやってこない。
代わりに、言葉が降ってくる。
「私は教師をしているものでね。子供の教育には熱が入ってしまう方なのだよ」
「なにが、言いたいん、だよ……!」
オレは息を乱しながらも、何とか顔を上げて睨み付ける。
この期に及んで、ブッドレアは微笑んだままだった。
クソっ、こんなザマでいてたまるか! オレは槍を地面に突き立てて、縋る様にゆっくりと立ち上がる。
「君に引く気が無いと言うのならば、もう少し付き合ってあげる意思はあるよ、という優しさを見せつけてあげているのだよ」
「う、るせ!」
チクショウ、バカにしやがって! でも、ブッドレアが油断している今がチャンスではある。
オレは何とか立ち上がると、体制を整えて槍を構え直した。
またとないチャンスを、そうやすやすと逃してたまるものか。オレは奥歯を噛み締め、三度目の正直とばかりに槍を振り下ろす。
――が、直ぐに受け流された挙句、二度目の蹴りを食らって、石だらけの地面に強かに尻を打ち付けた。
「君は、実践は初めてのようだね。緊張でガチガチになっているし、先程から折角槍を使っているというのにやっている事は殴りかかっているのと変わらない。これでは勝機は無いように見受けられるが……大丈夫かね?」
「う、ウルセー! 出来る! オレは、ちゃんと、どうにか出来る!」
何でこんな所で、こんな奴に、こんな事を言われなきゃいけないんだ!
オレは苛立ちを覚えながらももう一度体制を建て直し、力任せに突っ込んだ。
今度は腹に攻撃を食らわないように一応気をつけながら、二撃、三撃と槍の柄を叩き込むが、それら全てをブッドレアは受け流す。本物のレイピアよりも強度の落ちる筈の仕込み杖の刃は、オレの攻撃を受けてもビクともしない。
「このっ!」
とにかく攻撃あるのみだ! オレは必死になって槍を振るうも、やはりブッドレアは余裕顔で受け流す。
と。唐突に視界が色とりどりの何かで覆われ、思わずオレは距離をとった。
「ルト、落ち着いて! あたしは大丈夫だから!」
少し舌足らずな子供っぽい声が聞こえて、オレはハッとした。
この色取り取り、花だ! 声がシアのものであると気が付くと、直ぐに色取り取りの物に思い当たった。先程川に流していた、あの魔法で出した花を目隠しのようにしたのである。
そうだ。オレは、シアを守らないといけなかった。目の前の相手を倒さなくったって、あいつを連れて逃げるのが一番するべきこと。
少し冷静になると、オレは視界を花でうめられたまま「少し離れられるか?」と確認した。シアの返事は「うん!」だったので、そのまま離れて貰う。
「我はツークフォーゲルの名を継ぐ者。ツークフォーゲルの名のもとに、風の精霊の力を寸借致す! この場に風を!」
オレは短く呪文を唱えると、槍を空で八の字に振り回した。
すると、その周辺につむじ風が起こり、花と小石が巻き上がる。同時に、目の前にブッドレアの姿を認識する事も出来た。
彼は唐突な状況に驚いていたようで、余裕そうな表情が消えている。
つむじ風によって巻き上がった小石がブッドレアの頬や服を数か所薄く切ると、風はおさまって花と共に地面に落ちた。
オレ達の武器は、自分達の精術を強化する物でもある。だが、どうにも威力が弱かった。
オレは思ったよりも上手く食らわせる事が出来なかった事に首を傾げると、近くにいる精霊が少ない事に気が付いた。さっきまでブッドレアしか見えていなかったせいで、全く気付かなかったが、おそらく今の状況をスティアに知らせに行った精霊がもちゃっといたのだろう。
という事は、じきに応援も来るという事だ。
おし、落ち着いて来たぞ!
「次はこんなもんじゃ済まない! とっとと家に帰るんだな!」
「ふむ。中々に困った子……いや、困った子達だね」
ブッドレアは心底困った表情を浮かべると、一歩下がる。シアはブッドレアの側にいながらも、先程よりも彼から距離を取れているので、直ぐにどうこうという事もなさそうだ。さっきの精術での威嚇が成功していて、このまま帰って貰えればオレとしても助かる。
「本当に、困ったなぁ」
ブッドレアの表情には、徐々に笑みが戻ってくる。と、同時に、彼の指先が光りはじめる。
――これは、魔法陣!? こいつ、魔法使いなのか!?
オレは慌ててシアの近くへと走り始めると、ほんの少し前までオレがいた場所へ空気の塊が直撃した。
派手な音を立て、地面の土や石を抉り取る「衝撃波」のようなそれは、まともに当たっていたら無事では済まなかっただろう。
オレは背中に嫌な汗をかきながら、呆然とブッドレアを見た。まだ、シアとオレの間には距離があるせいで、彼女に魔法を向けられたら、直ぐには守れなそうなのが不安だ。
「お、お前! お前、魔法使いだったのか!」
「ルト、ただの魔法使いじゃない! あれは、あの威力は、大魔法使いの魔法だよ!」
シアが焦ったようにオレの言葉に続ける。
「正解。流石、君は優等生だね」
ブッドレアは微笑みをシアに向けてから、少しだけ胸元をはだけた。素肌を晒した鎖骨の下には、12枚の花弁の痣がくっきりと浮かび上がっている。
「つまり、私の正確な名は、ブッドレア・ツヴェルフ・ドナートなのだよ。わざとではあるが、しっかりと名乗らなかった事だけは謝っておこう」
「なっ!」
名前を、わざと言わないだと!?
名前が力に直結する精術師には想像も出来ない話だった。しかも、12枚である事も、想定外。
オレ達にとっては良くない展開だ。
だが、無駄に大げさな武器を向けた事で、多少なりとも相手が怯んだ可能性もある。
じっとブッドレアを見ると、彼の表情は余裕そうなものだった。
「どれ、一つ相手をしてあげようではないか。教師とは人を育てる職業なのだから、ね」
「な、舐めやがって!」
オレは槍を大きく振り被ると、シアに当たらないように気を遣いながら振り下ろす。
振り下ろした瞬間に思わず目を瞑ってしまったが、想像した人間の肉に武器が触れる感覚が手に伝わってくる様子はなく、寧ろ硬い馴染のある震動が来た。
目を開ければ、ブッドレアは片手に持った杖でオレの槍を止めていた。
柄の部分と、杖の木目が合わさってはいるが、どちらの得物にもヒビが入った様子はない。
「駄目だよ、敵から目を逸らしては」
にっこり笑ったまま、ブッドレアはオレの槍を押し返す。
――と、次の瞬間。彼は僅かに眉を顰める。
「子猫ちゃん、甘噛みはほどほどにして貰えないかね?」
顰めた眉は、あっという間にハの字に変わり、どこかうっとりとした表情をシアへと向けた。視線の先のシアは、自分を捕えるブッドレアの腕に噛みついていたのだ。注意されている今なお、「うー」と唸りながら口をもごもごさせている。
「こういった事はあまり趣味ではないのだが、仕方があるまい」
ブッドレアはシアを振り払うと、倒れ込んだシアの足を杖で叩く。バチンともゴチンとも取れぬ鈍くありながら高い音がこの場に響いた。
だが、痛みはかなりの物だったようで、倒れ込んだまま起き上がれないシアが、涙目で息を飲んだのが見て取れる。声も出ない程、痛いとか、怖いとか、そう言うのがあったのだろう。
「お前!」
「さて、続きと行こうではないか」
ブッドレアは微笑みを浮かべたまま杖の先を捻ると、銀色の細い刀身を出した。杖だと思っていたそれは剣……いや、レイピアだったのだ。所謂仕込み杖というものだったようで、刃を抜いた後の鞘を無造作にベルトにひっかける。
刃はオレに向けられ、近くにはシアが倒れている。
リーチの差であれば自分に理がある筈なのだ。決して絶望的な状況ではない。それなのに、なぜだろうか。オレの槍を握る手は震え、刃先も揺れる。
「いつでも来たまえ」
「やってやらぁ!」
次は目を逸らしては駄目だ。とにかく切り抜けて、シアを助けて、それからアーニスト達に知らせないと。
そう、実践だからと言って殺す必要はない。ただ、この場さえ切り抜けられればいい。
オレは自分自身に言い聞かせる、これで少しでも落ち着けば、と思っての事だ。
ブッドレアは余裕があるせいか、オレが向かって行くまで仕掛けてくる様子はないが、あいつの横で倒れ込んでいるシアを残して逃走なんて出来ない。
オレは震える手を槍を握り直す事で強引に落ち着かせた。
「おりゃあ!」
自分で自分を欺かなくては。怖くはない。全く怖くなどない。
言い聞かせながら槍を振るうと、ブッドレアは微笑みを浮かべたままレイピアよりも更に細い刀身でオレの攻撃を受け止めた。
いや、正確には受け止めたのではない。受け流したのだ。ほんの少しだけ剣に力を加え、オレが全力で力を込めた槍の軌道を変えたのだろう。行き場を失った力は、重力と共に地面へと槍の先をめり込ませた。
「ふむ。いつでも来たまえとは言ったが、ここは君が引いた方が良い様に思えるね。力任せにしか攻撃出来ないのであれば、折角ご立派な槍を持っていても無意味になってしまうのだから」
「なっ――!」
「私は彼女さえ置いて行ってくれるのなら、君の事を見逃すのはやぶさかではないのだよ。弱い者いじめのようになってしまいそうで、私としては心苦しいのでね」
「バ……バカにしやがって!」
余裕顔のブッドレアに、オレは再度槍を構えて振り降ろした。
しかしまたしても受け流されると、今度は彼の蹴りがオレの腹に直撃する。息の詰まる圧迫感に喘ぎながらオレは膝をつくも、追撃はいつまでたってもやってこない。
代わりに、言葉が降ってくる。
「私は教師をしているものでね。子供の教育には熱が入ってしまう方なのだよ」
「なにが、言いたいん、だよ……!」
オレは息を乱しながらも、何とか顔を上げて睨み付ける。
この期に及んで、ブッドレアは微笑んだままだった。
クソっ、こんなザマでいてたまるか! オレは槍を地面に突き立てて、縋る様にゆっくりと立ち上がる。
「君に引く気が無いと言うのならば、もう少し付き合ってあげる意思はあるよ、という優しさを見せつけてあげているのだよ」
「う、るせ!」
チクショウ、バカにしやがって! でも、ブッドレアが油断している今がチャンスではある。
オレは何とか立ち上がると、体制を整えて槍を構え直した。
またとないチャンスを、そうやすやすと逃してたまるものか。オレは奥歯を噛み締め、三度目の正直とばかりに槍を振り下ろす。
――が、直ぐに受け流された挙句、二度目の蹴りを食らって、石だらけの地面に強かに尻を打ち付けた。
「君は、実践は初めてのようだね。緊張でガチガチになっているし、先程から折角槍を使っているというのにやっている事は殴りかかっているのと変わらない。これでは勝機は無いように見受けられるが……大丈夫かね?」
「う、ウルセー! 出来る! オレは、ちゃんと、どうにか出来る!」
何でこんな所で、こんな奴に、こんな事を言われなきゃいけないんだ!
オレは苛立ちを覚えながらももう一度体制を建て直し、力任せに突っ込んだ。
今度は腹に攻撃を食らわないように一応気をつけながら、二撃、三撃と槍の柄を叩き込むが、それら全てをブッドレアは受け流す。本物のレイピアよりも強度の落ちる筈の仕込み杖の刃は、オレの攻撃を受けてもビクともしない。
「このっ!」
とにかく攻撃あるのみだ! オレは必死になって槍を振るうも、やはりブッドレアは余裕顔で受け流す。
と。唐突に視界が色とりどりの何かで覆われ、思わずオレは距離をとった。
「ルト、落ち着いて! あたしは大丈夫だから!」
少し舌足らずな子供っぽい声が聞こえて、オレはハッとした。
この色取り取り、花だ! 声がシアのものであると気が付くと、直ぐに色取り取りの物に思い当たった。先程川に流していた、あの魔法で出した花を目隠しのようにしたのである。
そうだ。オレは、シアを守らないといけなかった。目の前の相手を倒さなくったって、あいつを連れて逃げるのが一番するべきこと。
少し冷静になると、オレは視界を花でうめられたまま「少し離れられるか?」と確認した。シアの返事は「うん!」だったので、そのまま離れて貰う。
「我はツークフォーゲルの名を継ぐ者。ツークフォーゲルの名のもとに、風の精霊の力を寸借致す! この場に風を!」
オレは短く呪文を唱えると、槍を空で八の字に振り回した。
すると、その周辺につむじ風が起こり、花と小石が巻き上がる。同時に、目の前にブッドレアの姿を認識する事も出来た。
彼は唐突な状況に驚いていたようで、余裕そうな表情が消えている。
つむじ風によって巻き上がった小石がブッドレアの頬や服を数か所薄く切ると、風はおさまって花と共に地面に落ちた。
オレ達の武器は、自分達の精術を強化する物でもある。だが、どうにも威力が弱かった。
オレは思ったよりも上手く食らわせる事が出来なかった事に首を傾げると、近くにいる精霊が少ない事に気が付いた。さっきまでブッドレアしか見えていなかったせいで、全く気付かなかったが、おそらく今の状況をスティアに知らせに行った精霊がもちゃっといたのだろう。
という事は、じきに応援も来るという事だ。
おし、落ち着いて来たぞ!
「次はこんなもんじゃ済まない! とっとと家に帰るんだな!」
「ふむ。中々に困った子……いや、困った子達だね」
ブッドレアは心底困った表情を浮かべると、一歩下がる。シアはブッドレアの側にいながらも、先程よりも彼から距離を取れているので、直ぐにどうこうという事もなさそうだ。さっきの精術での威嚇が成功していて、このまま帰って貰えればオレとしても助かる。
「本当に、困ったなぁ」
ブッドレアの表情には、徐々に笑みが戻ってくる。と、同時に、彼の指先が光りはじめる。
――これは、魔法陣!? こいつ、魔法使いなのか!?
オレは慌ててシアの近くへと走り始めると、ほんの少し前までオレがいた場所へ空気の塊が直撃した。
派手な音を立て、地面の土や石を抉り取る「衝撃波」のようなそれは、まともに当たっていたら無事では済まなかっただろう。
オレは背中に嫌な汗をかきながら、呆然とブッドレアを見た。まだ、シアとオレの間には距離があるせいで、彼女に魔法を向けられたら、直ぐには守れなそうなのが不安だ。
「お、お前! お前、魔法使いだったのか!」
「ルト、ただの魔法使いじゃない! あれは、あの威力は、大魔法使いの魔法だよ!」
シアが焦ったようにオレの言葉に続ける。
「正解。流石、君は優等生だね」
ブッドレアは微笑みをシアに向けてから、少しだけ胸元をはだけた。素肌を晒した鎖骨の下には、12枚の花弁の痣がくっきりと浮かび上がっている。
「つまり、私の正確な名は、ブッドレア・ツヴェルフ・ドナートなのだよ。わざとではあるが、しっかりと名乗らなかった事だけは謝っておこう」
「なっ!」
名前を、わざと言わないだと!?
名前が力に直結する精術師には想像も出来ない話だった。しかも、12枚である事も、想定外。
オレ達にとっては良くない展開だ。
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