さよならクッキー、もういない

二ノ宮明季

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 よく駅前で一緒に買い物をした。買い物をして増えた荷物はコインロッカーに預け、買い物の続きを楽しんだ事も、一度や二度ではない。
 増えて重くなったものはコインロッカーへ。
 増えて重くなった憎悪も、愛情も、少しだけコインロッカーに預けてしまおう。
 決して人にはバレぬよう、私は体系や姿を隠せるような服装で、深夜の駅前のコインロッカーの前に立った。
 目深にかぶったフードの下は、あの指輪を買った夏祭りで、彼だけが購入したお面だ。夏祭りの後、私の家に置いて行ったのである。
 プラスチック製の安っぽい狐面は、さぞや怪しい事だろう。
 別に私だって、あの日、あんな事さえ言わなければこんな事をしたくは無かった。けれども、どうしても必要だった。
 愛しているからこそ、許せない事がある。
 愛しているからこそ、愛を示さなければいけない。
 そうしなければ、私は何処にも行けない。私の行き場のないこの心は、可哀そうに踏みつけられたこの愛情は、無様に床に散らばったままでもいいのか。許されるのか。
 許されるはずがない。
 きっと、社会の中でも許せる人はごく少数。とはいえ、今私のやっている事が許されるのかと問われれば確実に無理だ。
 私はコインロッカーに鍵もかけずに後にすると、そのままその場を去る。警戒に警戒を重ね、現場からかなり離れた場所で、隠れてコートとお面を取った。
 それからコートを畳み、中にお面を隠して帰路についた。幸い明日はゴミの収集日。明日の朝すぐ、ゴミ袋に入れて捨ててしまえばいい。
 必ず最後までやりとげてやる。絶対に、最後まで捕まるものか。

   ***
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