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「次は勇者。お前との交渉と行こうではないか」
わーお、レイラさんやる気ー!
「報酬を準備して貰おうか」
「今?」
「約束出来るのなら、今じゃなくてもいい。約束を反故された場合は、貴様らをまとめて潰せばいいだけだ」
過激だなぁ。
でも、俺達の生活を良くする為の交渉をしてくれるらしい。しっかり者だ。
「さぁ、ボク達に何をくれるんだ?」
「愛情!」
「そんな食えもしないもの、いらん! もっと実用的なものにしろ!」
愛情はエッセンスにはなっても、齧りつけるものではないもんな。
「それじゃあ、君達の土地を増やそう」
「……他に?」
「何が欲しいんだい?」
よくばりだな。まだ何か貰うのか!
「貴様達が遊びに来ない権利」
「それはダメー。折角の古民家カフェなのに」
「コミンカカフェ?」
勇者は相変わらず訳の分からない話をする。コミンカカフェって何だ?
「それじゃあ、街で自由に買い物が出来る権利を寄越せ」
街で買い物!?
俺達は人間ではなく、どちらかと言えば恐れられている存在だ。その上、通貨も持っていない。
レイラの要求はあまりにもハードルの高い物で、驚いた俺は彼女を見た。表情は、どこか楽しげだ。
「魔王城で、皆で力を合わせた自給自足をしていた時とは違い、今は二人だからな。使える部分は使いたい」
人間に歩み寄って効率化する、って事だな。
「何、瘴気の影響を受けているものでも構わん。だが、ボク達は人間の通貨など持っていない。そこで、その辺をどうにかして貰いたい」
俺達は瘴気の影響を受けた物をどうにかする術を持ってるしなー。あぁ、レイラさえ納得すれば、勇者にも教える事ではあるんだけど。
「ふむ……」
勇者は顎に手を当てて、暫し沈黙。
「それじゃあ、何かカードのようなものを作って、周知させよう」
やがて口を開いた時には、なんだかよくわからない事を言った。
店の人とカードでゲームでもすればいいのか?
「君達はそのカードを見せて買い物をする。買い物の内容は店側が記録しておき、後日こちらで支払う」
あー、つまり、勇者が買い物の手助けになるアイテムをくれるって事か。
「即興クレジットカードって感じになるから、あまり使いすぎないで欲しいけど……。これでどうかな?」
「クレなんとかは知らないが、悪くは無いな」
クレなんとかカードが有れば、大分便利そうだな。えーっと、纏めると……勇者のおごり、ただし後払い、って事だな!
「何、使いすぎる予定は無い。ただ、塩はどうやったって買った方が楽だからな」
「そう言えば君達、買い物せずに今までどうやって……」
ふと疑問に思ったらしい。ふっふっふ、これはレイラの助けがあってこそだ。自慢してやろう。
「レイラは飛べるし、力持ちだから、ちょっと海まで行って海水を汲んで来て貰って、塩を作ってた!」
「砂糖は?」
「樹液から作る。お前らだって、そうやってるだろ?」
パンが甘かったからだろうか。俺はごく一般的な作り方をしているつもりだったが、人間は違うのだろうか。
「でも、この気候じゃ……」
「ん? そりゃあ、魔王パワーでどうにか」
なるほど。
考えてみれば、年中樹液が取れるわけではない。環境を整えなければ、生産量は落ちる一方だ。
これが人間界の縮図、か?
「よし、じゃあ見せてやろう」
どんな環境で何を育てているのか。
まぁ、大体は魔王城にもあるんだけど、それにしたって魔王パワーが無くなった今、あの場所の植物は上手く育てていないかもしれない。
あ、悲しくなってきた。いやいや、今から頑張って手塩にかけて育てて貰えるかもしれないし、きっと大丈夫だ。
俺は一人でコクンと頷くと、手元のサンドイッチとコウヒイに目を落とした。そういえば、まだ食べている途中だったな。美味しく食べきらないと。
「で、そこで色々説明してやるから、とりあえず食べよう。な?」
「……まぁ、話しも纏まったしな」
よし、レイラのお許しが出たぞ!
見れば、勇者とオリヴィアも少し表情を和らげ、サンドイッチに手を伸ばす。よーしよし、その調子でお食べ。
俺も、レイラも同様に食べ始める。少し冷めたが、やっぱり美味しい事には変わりがなかった。
***
わーお、レイラさんやる気ー!
「報酬を準備して貰おうか」
「今?」
「約束出来るのなら、今じゃなくてもいい。約束を反故された場合は、貴様らをまとめて潰せばいいだけだ」
過激だなぁ。
でも、俺達の生活を良くする為の交渉をしてくれるらしい。しっかり者だ。
「さぁ、ボク達に何をくれるんだ?」
「愛情!」
「そんな食えもしないもの、いらん! もっと実用的なものにしろ!」
愛情はエッセンスにはなっても、齧りつけるものではないもんな。
「それじゃあ、君達の土地を増やそう」
「……他に?」
「何が欲しいんだい?」
よくばりだな。まだ何か貰うのか!
「貴様達が遊びに来ない権利」
「それはダメー。折角の古民家カフェなのに」
「コミンカカフェ?」
勇者は相変わらず訳の分からない話をする。コミンカカフェって何だ?
「それじゃあ、街で自由に買い物が出来る権利を寄越せ」
街で買い物!?
俺達は人間ではなく、どちらかと言えば恐れられている存在だ。その上、通貨も持っていない。
レイラの要求はあまりにもハードルの高い物で、驚いた俺は彼女を見た。表情は、どこか楽しげだ。
「魔王城で、皆で力を合わせた自給自足をしていた時とは違い、今は二人だからな。使える部分は使いたい」
人間に歩み寄って効率化する、って事だな。
「何、瘴気の影響を受けているものでも構わん。だが、ボク達は人間の通貨など持っていない。そこで、その辺をどうにかして貰いたい」
俺達は瘴気の影響を受けた物をどうにかする術を持ってるしなー。あぁ、レイラさえ納得すれば、勇者にも教える事ではあるんだけど。
「ふむ……」
勇者は顎に手を当てて、暫し沈黙。
「それじゃあ、何かカードのようなものを作って、周知させよう」
やがて口を開いた時には、なんだかよくわからない事を言った。
店の人とカードでゲームでもすればいいのか?
「君達はそのカードを見せて買い物をする。買い物の内容は店側が記録しておき、後日こちらで支払う」
あー、つまり、勇者が買い物の手助けになるアイテムをくれるって事か。
「即興クレジットカードって感じになるから、あまり使いすぎないで欲しいけど……。これでどうかな?」
「クレなんとかは知らないが、悪くは無いな」
クレなんとかカードが有れば、大分便利そうだな。えーっと、纏めると……勇者のおごり、ただし後払い、って事だな!
「何、使いすぎる予定は無い。ただ、塩はどうやったって買った方が楽だからな」
「そう言えば君達、買い物せずに今までどうやって……」
ふと疑問に思ったらしい。ふっふっふ、これはレイラの助けがあってこそだ。自慢してやろう。
「レイラは飛べるし、力持ちだから、ちょっと海まで行って海水を汲んで来て貰って、塩を作ってた!」
「砂糖は?」
「樹液から作る。お前らだって、そうやってるだろ?」
パンが甘かったからだろうか。俺はごく一般的な作り方をしているつもりだったが、人間は違うのだろうか。
「でも、この気候じゃ……」
「ん? そりゃあ、魔王パワーでどうにか」
なるほど。
考えてみれば、年中樹液が取れるわけではない。環境を整えなければ、生産量は落ちる一方だ。
これが人間界の縮図、か?
「よし、じゃあ見せてやろう」
どんな環境で何を育てているのか。
まぁ、大体は魔王城にもあるんだけど、それにしたって魔王パワーが無くなった今、あの場所の植物は上手く育てていないかもしれない。
あ、悲しくなってきた。いやいや、今から頑張って手塩にかけて育てて貰えるかもしれないし、きっと大丈夫だ。
俺は一人でコクンと頷くと、手元のサンドイッチとコウヒイに目を落とした。そういえば、まだ食べている途中だったな。美味しく食べきらないと。
「で、そこで色々説明してやるから、とりあえず食べよう。な?」
「……まぁ、話しも纏まったしな」
よし、レイラのお許しが出たぞ!
見れば、勇者とオリヴィアも少し表情を和らげ、サンドイッチに手を伸ばす。よーしよし、その調子でお食べ。
俺も、レイラも同様に食べ始める。少し冷めたが、やっぱり美味しい事には変わりがなかった。
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