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1章
1-27 明日、直接向かって確認して来ます
しおりを挟む今日はさすがにリリウムさん達の手伝いは無く、事後処理に追われていた。
「ジギタリスさん、大変です」
日は殆ど沈んで、魔法の明かりで照らされるナチの執務室の扉を叩いたのは、クレソンさんだった。手には手紙が握られている。
「ヴルツェル支局からです。何らかの事件を起こしていた犯人である、ブッドレア・ツヴェルフ・ドナートと、サフラン・ツヴェルフ・ガイスラーを捕縛したそうなのですが、その護送中、顔に13枚の痣のある男に襲撃され、管理官が五名殺害されたそうです」
俺は思わず眩暈を覚えた。ヴルツェルって、俺が何でも屋に依頼していた件の村じゃないか……。
所員に怪我は無いのか。
「一名はこの件を伝える為に見逃されたようですが……」
俺はちらりと壁掛け時計に視線を向ける。
この時間じゃあ、今から向かうのは無理か。交通手段となる汽車の終業時間も近い。
「明日、直接向かって確認して来ます」
「ジギタリスさんが?」
「はい、私が。もしかすると、精術師の調書問題で向かって頂いた方々と関係があるかもしれませんので」
これでクレソンさんは思い出したらしい。その一件を、外注した事を。
「持ち運びの出来る書類関係は汽車の中で済ませます」
「……そうですね。今はナスタチウムさんと同等の権限が与えられているようなので、問題は無いでしょう」
合点がいったという表情の相手に畳み掛ければ、思ったよりもあっさりと許可が下りた。
タイミング的に、外注したそれとの関係性は高いと考えたのだろうか? なんにせよ、俺にとっては都合がよかった。
「他の部分は、僕がカバーしておきます」
「はい、よろしくお願いします。今日の内に出来る部分までは、ギリギリまでやっておきますので」
「あまり、無理はし過ぎませんよう」
多少の無理は必要だ。まして、無理すら出来なくなった仲間もいるのだ。
だが俺は「はい」と、表情一つ変えずに頷いた。
これが今、彼に対して必要な事だったから。
「大丈夫です。全てこの目で確認して来ます」
「よろしくお願いします」
クレソンさんは、支局からの手紙を置いて出ていく。手紙を再度開けば、どうもベルさん達が巻き込まれたような文面だ。
無事でいてくれるだろうか。
不安で押し潰されそうになりながらも、必死に平静を装い、俺は再び書類と睨めっこを始めたのだった。
***
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