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爵位剥奪
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「ど、どういうことだ……?」
エドニアの額に冷汗が滲む。
王城から届いた書簡は間違いなく本物だ。
内容はハベリア家の爵位を廃止するというもの。その理由として、コルディアがジャック王子に傷を負わせ、また不法侵入したことが記されていた。
現在、コルディアは王都にて拘束中。
死罪はジョシュア・エリオット公爵と、その妻である「マイア・エリオット」により免れた旨も記されている。
「どうしたの、あなた? そんなに怖い顔をして……」
「デナリス! デナリスはどこだ!」
シャニアの言葉も無視して、エドニアは怒鳴った。
エドニアが大声で呼びつけるのはいつものことで、商人のデナリスは呆れた様子でやってきた。
「ここに。いかがいたしましたか、旦那様?」
「こ、この書簡は偽物か? 内容は本当なのか?」
かつてない様子で焦るエドニアから書簡を受け取り、デナリスは真偽を確かめる。
「まず、この印章は間違いなく本物ですね。王家のみが知る独自の製作方法で作られたものです。そして、内容に関してですが……ふむ」
内容を読み始めたデナリスの視線は次第に険しいものとなっていく。
常識的に考えてあり得ない話なのだが、あのコルディアを想起すれば嘘とも言いがたく。
「……恐らく事実でしょう。ここに書かれていることが紛れもない事実で、王家に対して異議申し立ての余地がないのならば……ハベリア家は爵位を失いますね」
深刻に言い放たれた言葉。
エドニアは頭を抱えてその場にへたり込んだ。
一方、シャニアはまだ状況がわかっていない様子で。
「どういうこと? デナリス、ハベリア家がどうなるの?」
「貴族ではなくなる、ということです。コルディア様が大変な無礼を働いたようでして。奥様も豪遊できなくなるでしょう」
夫に続き、妻までもが言葉を失う。
一家存続の危機。
「そ、そうだ……デナリス! 今すぐエリオット公爵家に行き、爵位剥奪を取り消しをするように嘆願してこい! もうそれしかない!」
一縷の望みは、マイアが嫁いだ公爵家。
書簡では、マイアのおかげでコルディアの罪が軽くなったとある。
公爵家に取り次いでもらえば、まだ爵位が存続する可能性はあるだろう。
しかし、デナリスは書簡を返して告げた。
「お断りします。これ以上、ハベリア家に関わると私も身を滅ぼしかねませんので」
「な、何だと……!? お前、私の命令を無視するというのか!?」
命令。
エドニアはそう言った。
この家族はいつもこうだ。
必ず自分が上だと断じて、他者を扱き使う。
マイアもまた犠牲者の一人だった。
「なぜ貴族ではない一般人の命令を、私が聞かなければならないのでしょう? 公爵家に取り次ぎを願いたければ、ご自分で行かれては? まあ……一般人と公爵が面会できるとは思えませんがね。それでは、失礼します」
書簡が届いた時点で、ハベリア家は貴族ではない。
デナリスは彼らに見切りをつけ、慌てるように去っていった。次の寄生先を見つけるように。
商人とはそういう生き物だ。
去りゆくデナリスを引き止める活力もなく、エドニアは失意に沈んだ。
「あなた! 座ってないで、今すぐジョシュア公爵に会いに行ってちょうだい! 平民になるなんて嫌よ!」
「お前の……お前たちのせいだろうが! お前とコルディアを甘やかさなければ、こんなことには……」
「何よ、私のせいだって言うの!? コルディアと違って、私はちゃんと振る舞っていたわよ!」
一家の危機を前にして、彼らは責任を押し付け合うばかりだった。
その後、エリオット公爵家に直談判したエドニアだが、マイアに対する仕打ちを認めることはなく。
ジョシュアの怒りを買って爵位は剥奪となった。
エドニアの額に冷汗が滲む。
王城から届いた書簡は間違いなく本物だ。
内容はハベリア家の爵位を廃止するというもの。その理由として、コルディアがジャック王子に傷を負わせ、また不法侵入したことが記されていた。
現在、コルディアは王都にて拘束中。
死罪はジョシュア・エリオット公爵と、その妻である「マイア・エリオット」により免れた旨も記されている。
「どうしたの、あなた? そんなに怖い顔をして……」
「デナリス! デナリスはどこだ!」
シャニアの言葉も無視して、エドニアは怒鳴った。
エドニアが大声で呼びつけるのはいつものことで、商人のデナリスは呆れた様子でやってきた。
「ここに。いかがいたしましたか、旦那様?」
「こ、この書簡は偽物か? 内容は本当なのか?」
かつてない様子で焦るエドニアから書簡を受け取り、デナリスは真偽を確かめる。
「まず、この印章は間違いなく本物ですね。王家のみが知る独自の製作方法で作られたものです。そして、内容に関してですが……ふむ」
内容を読み始めたデナリスの視線は次第に険しいものとなっていく。
常識的に考えてあり得ない話なのだが、あのコルディアを想起すれば嘘とも言いがたく。
「……恐らく事実でしょう。ここに書かれていることが紛れもない事実で、王家に対して異議申し立ての余地がないのならば……ハベリア家は爵位を失いますね」
深刻に言い放たれた言葉。
エドニアは頭を抱えてその場にへたり込んだ。
一方、シャニアはまだ状況がわかっていない様子で。
「どういうこと? デナリス、ハベリア家がどうなるの?」
「貴族ではなくなる、ということです。コルディア様が大変な無礼を働いたようでして。奥様も豪遊できなくなるでしょう」
夫に続き、妻までもが言葉を失う。
一家存続の危機。
「そ、そうだ……デナリス! 今すぐエリオット公爵家に行き、爵位剥奪を取り消しをするように嘆願してこい! もうそれしかない!」
一縷の望みは、マイアが嫁いだ公爵家。
書簡では、マイアのおかげでコルディアの罪が軽くなったとある。
公爵家に取り次いでもらえば、まだ爵位が存続する可能性はあるだろう。
しかし、デナリスは書簡を返して告げた。
「お断りします。これ以上、ハベリア家に関わると私も身を滅ぼしかねませんので」
「な、何だと……!? お前、私の命令を無視するというのか!?」
命令。
エドニアはそう言った。
この家族はいつもこうだ。
必ず自分が上だと断じて、他者を扱き使う。
マイアもまた犠牲者の一人だった。
「なぜ貴族ではない一般人の命令を、私が聞かなければならないのでしょう? 公爵家に取り次ぎを願いたければ、ご自分で行かれては? まあ……一般人と公爵が面会できるとは思えませんがね。それでは、失礼します」
書簡が届いた時点で、ハベリア家は貴族ではない。
デナリスは彼らに見切りをつけ、慌てるように去っていった。次の寄生先を見つけるように。
商人とはそういう生き物だ。
去りゆくデナリスを引き止める活力もなく、エドニアは失意に沈んだ。
「あなた! 座ってないで、今すぐジョシュア公爵に会いに行ってちょうだい! 平民になるなんて嫌よ!」
「お前の……お前たちのせいだろうが! お前とコルディアを甘やかさなければ、こんなことには……」
「何よ、私のせいだって言うの!? コルディアと違って、私はちゃんと振る舞っていたわよ!」
一家の危機を前にして、彼らは責任を押し付け合うばかりだった。
その後、エリオット公爵家に直談判したエドニアだが、マイアに対する仕打ちを認めることはなく。
ジョシュアの怒りを買って爵位は剥奪となった。
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