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子爵家のその後

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あの夜会からしばらく経って。
スリタール子爵家に関する報告が届いていた。

まずはお母様とお姉様について。
お母様は離婚後、実家の商家に戻されたという。
今まで散財した費用はすべて賠償責任を負わされ、商家は火の車だという。
おそらく完済には途方もなく長い時間がかかるだろう。

そして、そんな商家にドリカお姉様を養えるわけもなく。
お母様はドリカお姉様とも縁を切ったらしい。
今お姉様は『どこか』で働いているという。

「ど、どこかって……?」

報告の内容はやけにぼかされていた。
私と同様にエルヴィスも首を傾げている。
こう言ってはなんだが、あのお姉様に働ける場所があるのだろうか……?
何をするにも文句ばかりで、まともに働けるとは思えない。

私たちの話を聞いていた使用人のオーバンさんが眉間に皺を寄せて答える。

「これは噂に過ぎませんが……ドリカ嬢はアルバン子爵のもとに送られたとか」

「アルバンが買ったか。となると……炭鉱で強制労働でもさせられているんじゃないか? それとも人体実験でもされるのか?」

「どちらにせよ、ロクな労働環境ではないでしょうな」

エルヴィスとオーバンさんの話を聞く限り、よい結果にはならなかったみたい。
夜会で一度会ったアルバン子爵はとても有能な人だけど、表立っては話しづらいような事業にも着手している。
そんな方に領地経営を任せていたのは、エルヴィスにとっても芳しくなかったようで。

「まあ……すでにアルバンから領地経営の権限は返してもらったからな。ようやく面倒な経営代行から解放される、と彼は喜んでいたよ。あとは好きに子爵家の領地でやってくれればいい。行きすぎた活動には口出しさせてもらうが」

いま、エルヴィスは再び領主の道を歩み始めていた。
リアさんとアルバンさんが今まで領地を管理していたけれど、ようやく自分の手で民の暮らしを守り始めたのだ。
勉強を始めて、もう大きな失敗は二度としないように。
そして失敗してしまっても、私が寄り添って立ち直らせなければならない。


次にお父様に関して。
スリタール子爵家の離縁騒動は社交界で噂になる……かと思いきや、そんなことはなかった。
大公閣下とエルヴィスが根回ししてくれたおかげで、お姉様は『重病に罹って修道院へ送られた』ことになっているようだ。
夜会の騒動の目撃者にも、大公閣下から箝口令が敷かれている。

あの後、お父様からは改めて謝罪があった。
これまで私に多くの迷惑をかけてきたこと、お母様やお姉様のいじめから救ってやれなかったこと、満足に物を買ってやれなかったことなど。

お父様もわがままな母娘に悩み、苦悩していたのだ。
それは家族としてずっと関わってきた私だからこそ理解できる。
だから私はお父様を責めるつもりはないし、これからがんばって立ち直ってほしいとも思う。
エルヴィスもスリタール子爵家を支援してくれると言っていた。


そして私は。
私は……本格的に侯爵夫人としての振る舞いを学び始めていた。
色々と不足しているところも多いから、礼儀作法や社交の基礎を徹底的に学んでいる。
エルヴィスが名君を目指すのなら、私も立派な夫人を目指さないと。

さあ、今日も勉強を始めよう。
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