無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています

朝露ココア

文字の大きさ
上 下
16 / 31

ドレスアップ

しおりを挟む
続いてやってきたドレスショップ。
エルヴィスはすごく入りづらそうにしていたけど、やっぱり私が率先して彼を導く。
いつかお店に入ることにも慣れてくれるよね……?

店内には豪華絢爛なドレスが所狭しと並んでいる。
輝くドレスやアクセサリーに、軽いめまいを覚えた。

「好きなだけ買っていい。とりあえずアフタヌーンドレス、イブニングドレス、カクテルドレスは買っておきたいな。令嬢の流行り廃れはわからんから、ディアナに選んでもらうか。それとも店員に聞くか……」

「好きなだけと言われましても……お気持ちは嬉しいのですが、逆に困ってしまいます。ええっとですね、エルヴィス。あなたにドレスを選んでいただこうと思うのです」

「お、俺にか……!?」

「はい。私もエルヴィスの礼服を選びますから。ダメ……でしょうか?」

「い、いや……ダメとは言わないが。俺はドレスのことなんて欠片もわからないし、壊滅的なセンスかもしれないぞ? ディアナには綺麗な服を着てもらいたいし……俺が選ぶのは気が引けるな」

「そんなことはありませんよ! エルヴィスに選んでもらったという事実が大事なのです」

必死な説得にエルヴィスは諦めたように首肯した。
流行のドレスはミレーヌから教えてもらっているし、それを彼にも伝えよう。

「ミレーヌさんからもらった流行のメモがあるんです。これ、参考にしてください」

「ありがとう。なるほど……今はこんなのが流行っているのか」

「それでは、ドレスを選び終わったら試着してみましょう! エルヴィスにぴったりのタキシードを選んできますね!」

私はさっそく店内をめぐり、エルヴィスに合いそうな服を探し始めた。

 ***

そして時が経ち。
私は試着室の中で感心していた。

エルヴィスのセンスは抜群だ……!
彼が選んでくれたのはリバーレースのドレス。
白を基調とした生地に、落ち着いた薄緑の紋様が幾重にも重なったアクセント。

試着してみると、すごくしっくりきた。
私がこんなにおしゃれなドレスを着られる日がくるなんて、夢にも思わなかった。
最後にルビーをあしらったネックレスをつける。

婚約者や夫婦間では、相手のイメージカラーを纏うことが多い。
私のドレスもまた、エルヴィスを想起させる赤と緑の色が印象に残る。

「ふふ……」

これは購入決定だ。
エルヴィスはセンスがないと自虐していたが、全然そんなことはなかった。
喜び躍る心を抑え、試着室から出る。

「その……どうだ。俺の選んだドレスは」

「はい、とってもすてき……っ!?」

試着室から出た瞬間、私の意識が固まった。
目の前には黒いフロックコートを着たエルヴィスの姿。
前面も背面も丈が長めの服が、背丈の長い彼によく似合っている。

これは似合うだろうなぁ……と想像しながら服を選んだけど。
私の想像以上を遥かに超えてきた……!

「ど、どうした。俺の着こなしは変か? 変だよな、そうか……」

「いえ、いえいえ! 全然変じゃありません! むしろお似合いすぎて言葉を失っていたといいますか……すばらしいです!」

「ほ、本当か? ありがとう……ディアナもすごく綺麗だよ。何を着ていても似合うが、より輝きが際立って見える」

「ふふ……ありがとうございます。今度夜会に行くときは、お互いが選んだ服を着ていきましょうね!」

こうして大切な人にドレスを選んでもらえる……そんな日々が夢みたい。
でも、これは夢じゃなくて現実。
私は幸福な現実を噛みしめて、エルヴィスに選んでもらったネックレスを握りしめた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています

中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...