77 / 216
第6章 差別主義者の欺瞞
傀儡
しおりを挟む
流水は腐らず、止水は腐りゆく。
肥沃なるグラン帝国に流れる水……それは二つに分かたれる。
純潔なる赤き水と、汚濁なる青き水。
人は誰しも無垢だった。
生まれたときから悪か善か、そんなのは水掛け論で。
とかく何にも染められず。
俺だってガキのころは真人間だったさ。
そのうち人は気づかぬ内に染まっている。
欺瞞と虚偽と狡猾に。
美しいあの娘も、かわいらしいあの娘も、みんな汚れてる。
もちろん俺だって。
連中に青き血が流れる限りは救われない。
「ハハッ……もうすぐだ」
今、グラン帝国は大きな岐路に立っている。
未来と血を分かつ分水嶺だ。
ここでミスったら、きっと彼らは報われない。
――俺がグラン帝国をぶっ壊す。
◇◇◇◇
クラスNの教室を、無数の小さな人形が駆け回っている。
小さなものは子どもが遊ぶためのベベドール。
大きなものは等身大のファッションドールまで。
ぎこちなく動く様は、どことなく不気味さを感じさせる。
夏休み前、最後のクラスNの講義にて。
今日はマインラートの発表だった。
自動で動き回る人形が淹れた茶を優雅に飲みながら、マインラートは語る。
「入学してから一年と半年が経った。……けどまあ、俺の能力に関しちゃ研究もクソもない。ただ魔力物質を結合させるのが上手いってだけだし」
やる気がない。
とにかくマインラートは自分の力を知ろうという気がなかった。
ノーラのように自分の力で損害を被っているわけでもないし、当たり前の反応なのかもしれない。
周囲で動き回っているのはマインラートが作った『魔法人形』。
様々な魔力を含む物質を結合させ、自動的に動くように調整しているのだ。
この精密な魔法人形を作れるのは、帝国内でもマインラートだけ……とまで言われているとか。
まるで気力を感じさせない彼に、フリッツが抗議の声を上げる。
「それではこうして集まっている意味がありません。優秀な皆さまの知見を集め、未知なる能力を明らかにすること。それがクラスNの目的……違いますか、マインラート?」
「ふーん。じゃあさ、俺の力はどうすれば解明できるのか教えてくれよ。天才のフリッツ様?」
「そ、それは……」
フリッツは言いよどんだ。
ニルフック学園に入学したばかりのころは、マインラートもそこそこ真剣に研究に取り組んでいたのだ。
しかし思ったように研究が進まず、手詰まりな状態にあった。
二人の会話を聞いていたエルメンヒルデは小首を傾げる。
「じゃあ、なんでマインラート先輩はクラスNに入ったんです? 研究する気がないなら抜けてもいいんじゃないですか?」
「そりゃ女の子にモテるためだろ」
「「うわぁ……」」
一年生たちが幻滅の声を上げる。
その一方で二年生以上の面子は慣れているのか、マインラートの馬鹿げた言葉にも苦笑いするだけだった。
「しかし、なんでかな。こうやって魔法人形を操作してると、エルメンヒルデちゃんに魔力の糸が引きつけられるんだよ。運命で惹かれ合ってるってことかな?」
「んー……エルンが巫女だから、魔力を引き寄せやすいとかじゃないですか? 少なくとも運命で惹かれ合ってることは絶対ないですねぇ」
「残念だ。いっそエルメンヒルデちゃんが人形だったら簡単に操れるのにな?」
「はははっ。そんなわけないじゃないですかーきも」
講義が茶会に変わりつつある中、ペートルスがなんとか議題を前へと進める。
「ええと……それじゃあ、マインラート。夏休み中に何をする予定か教えてくれるかな? ……あ、プライベートなことじゃなくて研究のことね」
「んー……そっすねー。俺の扱う『錬象術』が学問として確立されてる国が、東の大陸にあるらしいんだけどなぁ。さすがに向こうの大陸に行って一か月で戻ってくるのは無理だな。せめてその国の文献とか、取り寄せられたら進歩があるかもしれないですね」
「なるほど。ルートラ公爵領は東の大陸と接している。僕も君の力に関係している本があるかどうか、東からの商人に聞いてみるよ」
「助かります。錬象術に関しちゃドマイナーな学問分野なんで、文献は簡単に見つからないと思いますけどね。ペー様ならそれでも見つけてくれるんじゃないかって淡い期待があります」
マインラートは軽くペートルスに頭を下げた。
夏休み中の研究……ノーラもどうすべきか考えなければならない。
世界各地の目に関する伝承を漁っているが、どうにも腑に落ちないものばかりで。
滞っている現状は否めない。
「さて、時間だ。これでクラスNの講義は終わりだね。次回は夏休み後。夏休み明けは顔合わせも兼ねつつ、軽く休暇中の話でもしようか。それぞれの過ごし方があるだろうけど、羽目を外しすぎないように。それと、けがもしないようにね」
ペートルスの警告に面々はうなずいた。
今のところ、ノーラに夏休み中の予定はない。
ルートラ公爵家で過ごすことになるだろう。
父にも会いたいし、実家に顔を出せたら嬉しいが……妹に会うのは嫌だ。
さっさと夏の予定を決めてしまわないと。
さてどうしようかと、講義後にノーラがぼんやりしていると……マインラートが軽々しく声をかけてきた。
「よお、ピルット嬢。ちょっといいかい?」
「なんすか。平民には話しかけないんじゃないんすか」
「まあそう冷たくすんなって。あんたにとっても悪い話じゃないからさ」
カタカタとそばの人形が動き、ノーラの機嫌を取るように菓子を運んでくる。
こんな食い物に絆されるわたしじゃない……と思いながら、ノーラは菓子を手に取った。
「怪しい話はお断りです」
「怪しくないさ。何せ皇城勤めの仕事を紹介するんだからな」
「……皇城? 帝都のど真ん中にあるお城ですよね」
「そう。実は魔法人形を操作する人手が足りなくてさ。ピルット嬢、魔石の操作とか得意だろ? それなら魔法人形を動かすのも上手いはずだ。夏休みの間、皇城で働いてみないか? 給料もめちゃくちゃいいぜ?」
チラッとペートルスの方を見る。
別に給金に興味はないが、皇城は行ったことがないので行ってみたくもある。
しかしノーラはルートラ公爵家で過ごす予定だったので、ペートルスの許可が必要ではないかと。
視線を受けたペートルスはにこやかに言った。
「興味があるなら行ってみるといい。実際、皇城の設備を操作する魔術師が不足していると聞くし。ただ……城に勤めるとなると、少し注意しておくべき点もあるからね。そこは事前に話させてほしい」
「なんでペー様の許可がいるんだよ? ピルット嬢、薄々感じてはいたけど……あんたマジでペー様の愛人とかじゃないよな?」
「ち、違いますって。ちょっと特殊な事情があるといいますか……気にしないでください」
マインラートに痛いところを突かれ、ノーラは口ごもる。
彼は意外と観察眼に長けているようで、周囲の人間をよく見ている。
「ふーん……ま、別に詮索はしないけど。平民が皇城の敷居を跨げるんだ。光栄に思ってくれよ」
「それが頼み事する奴の態度ですか? 別に断ってもいいんですけど?」
「ハッ。嫌なら断っても構わないね。その代わり、二度と城に入れるチャンスはないと思えよ」
相変わらずムカつく男だ。
やっぱり断ってしまおうか……とノーラは逡巡する。
だが、彼女はとある手がかりを求めに皇城に赴くことになるのだった。
肥沃なるグラン帝国に流れる水……それは二つに分かたれる。
純潔なる赤き水と、汚濁なる青き水。
人は誰しも無垢だった。
生まれたときから悪か善か、そんなのは水掛け論で。
とかく何にも染められず。
俺だってガキのころは真人間だったさ。
そのうち人は気づかぬ内に染まっている。
欺瞞と虚偽と狡猾に。
美しいあの娘も、かわいらしいあの娘も、みんな汚れてる。
もちろん俺だって。
連中に青き血が流れる限りは救われない。
「ハハッ……もうすぐだ」
今、グラン帝国は大きな岐路に立っている。
未来と血を分かつ分水嶺だ。
ここでミスったら、きっと彼らは報われない。
――俺がグラン帝国をぶっ壊す。
◇◇◇◇
クラスNの教室を、無数の小さな人形が駆け回っている。
小さなものは子どもが遊ぶためのベベドール。
大きなものは等身大のファッションドールまで。
ぎこちなく動く様は、どことなく不気味さを感じさせる。
夏休み前、最後のクラスNの講義にて。
今日はマインラートの発表だった。
自動で動き回る人形が淹れた茶を優雅に飲みながら、マインラートは語る。
「入学してから一年と半年が経った。……けどまあ、俺の能力に関しちゃ研究もクソもない。ただ魔力物質を結合させるのが上手いってだけだし」
やる気がない。
とにかくマインラートは自分の力を知ろうという気がなかった。
ノーラのように自分の力で損害を被っているわけでもないし、当たり前の反応なのかもしれない。
周囲で動き回っているのはマインラートが作った『魔法人形』。
様々な魔力を含む物質を結合させ、自動的に動くように調整しているのだ。
この精密な魔法人形を作れるのは、帝国内でもマインラートだけ……とまで言われているとか。
まるで気力を感じさせない彼に、フリッツが抗議の声を上げる。
「それではこうして集まっている意味がありません。優秀な皆さまの知見を集め、未知なる能力を明らかにすること。それがクラスNの目的……違いますか、マインラート?」
「ふーん。じゃあさ、俺の力はどうすれば解明できるのか教えてくれよ。天才のフリッツ様?」
「そ、それは……」
フリッツは言いよどんだ。
ニルフック学園に入学したばかりのころは、マインラートもそこそこ真剣に研究に取り組んでいたのだ。
しかし思ったように研究が進まず、手詰まりな状態にあった。
二人の会話を聞いていたエルメンヒルデは小首を傾げる。
「じゃあ、なんでマインラート先輩はクラスNに入ったんです? 研究する気がないなら抜けてもいいんじゃないですか?」
「そりゃ女の子にモテるためだろ」
「「うわぁ……」」
一年生たちが幻滅の声を上げる。
その一方で二年生以上の面子は慣れているのか、マインラートの馬鹿げた言葉にも苦笑いするだけだった。
「しかし、なんでかな。こうやって魔法人形を操作してると、エルメンヒルデちゃんに魔力の糸が引きつけられるんだよ。運命で惹かれ合ってるってことかな?」
「んー……エルンが巫女だから、魔力を引き寄せやすいとかじゃないですか? 少なくとも運命で惹かれ合ってることは絶対ないですねぇ」
「残念だ。いっそエルメンヒルデちゃんが人形だったら簡単に操れるのにな?」
「はははっ。そんなわけないじゃないですかーきも」
講義が茶会に変わりつつある中、ペートルスがなんとか議題を前へと進める。
「ええと……それじゃあ、マインラート。夏休み中に何をする予定か教えてくれるかな? ……あ、プライベートなことじゃなくて研究のことね」
「んー……そっすねー。俺の扱う『錬象術』が学問として確立されてる国が、東の大陸にあるらしいんだけどなぁ。さすがに向こうの大陸に行って一か月で戻ってくるのは無理だな。せめてその国の文献とか、取り寄せられたら進歩があるかもしれないですね」
「なるほど。ルートラ公爵領は東の大陸と接している。僕も君の力に関係している本があるかどうか、東からの商人に聞いてみるよ」
「助かります。錬象術に関しちゃドマイナーな学問分野なんで、文献は簡単に見つからないと思いますけどね。ペー様ならそれでも見つけてくれるんじゃないかって淡い期待があります」
マインラートは軽くペートルスに頭を下げた。
夏休み中の研究……ノーラもどうすべきか考えなければならない。
世界各地の目に関する伝承を漁っているが、どうにも腑に落ちないものばかりで。
滞っている現状は否めない。
「さて、時間だ。これでクラスNの講義は終わりだね。次回は夏休み後。夏休み明けは顔合わせも兼ねつつ、軽く休暇中の話でもしようか。それぞれの過ごし方があるだろうけど、羽目を外しすぎないように。それと、けがもしないようにね」
ペートルスの警告に面々はうなずいた。
今のところ、ノーラに夏休み中の予定はない。
ルートラ公爵家で過ごすことになるだろう。
父にも会いたいし、実家に顔を出せたら嬉しいが……妹に会うのは嫌だ。
さっさと夏の予定を決めてしまわないと。
さてどうしようかと、講義後にノーラがぼんやりしていると……マインラートが軽々しく声をかけてきた。
「よお、ピルット嬢。ちょっといいかい?」
「なんすか。平民には話しかけないんじゃないんすか」
「まあそう冷たくすんなって。あんたにとっても悪い話じゃないからさ」
カタカタとそばの人形が動き、ノーラの機嫌を取るように菓子を運んでくる。
こんな食い物に絆されるわたしじゃない……と思いながら、ノーラは菓子を手に取った。
「怪しい話はお断りです」
「怪しくないさ。何せ皇城勤めの仕事を紹介するんだからな」
「……皇城? 帝都のど真ん中にあるお城ですよね」
「そう。実は魔法人形を操作する人手が足りなくてさ。ピルット嬢、魔石の操作とか得意だろ? それなら魔法人形を動かすのも上手いはずだ。夏休みの間、皇城で働いてみないか? 給料もめちゃくちゃいいぜ?」
チラッとペートルスの方を見る。
別に給金に興味はないが、皇城は行ったことがないので行ってみたくもある。
しかしノーラはルートラ公爵家で過ごす予定だったので、ペートルスの許可が必要ではないかと。
視線を受けたペートルスはにこやかに言った。
「興味があるなら行ってみるといい。実際、皇城の設備を操作する魔術師が不足していると聞くし。ただ……城に勤めるとなると、少し注意しておくべき点もあるからね。そこは事前に話させてほしい」
「なんでペー様の許可がいるんだよ? ピルット嬢、薄々感じてはいたけど……あんたマジでペー様の愛人とかじゃないよな?」
「ち、違いますって。ちょっと特殊な事情があるといいますか……気にしないでください」
マインラートに痛いところを突かれ、ノーラは口ごもる。
彼は意外と観察眼に長けているようで、周囲の人間をよく見ている。
「ふーん……ま、別に詮索はしないけど。平民が皇城の敷居を跨げるんだ。光栄に思ってくれよ」
「それが頼み事する奴の態度ですか? 別に断ってもいいんですけど?」
「ハッ。嫌なら断っても構わないね。その代わり、二度と城に入れるチャンスはないと思えよ」
相変わらずムカつく男だ。
やっぱり断ってしまおうか……とノーラは逡巡する。
だが、彼女はとある手がかりを求めに皇城に赴くことになるのだった。
1
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる