見えない鎖   〜育児放棄・薬・風俗の中で生きてきて〜

ぶう子

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第二話

地獄の始まり

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夜中母親の小さな車に詰めるだけの荷物を積んで家を出た。
私は住んでいたアパートを見ながら、父親は私達が居ない事にいつ気がつくだろうとか、家には普段からあまり来なかった気づかないんじゃないかとかいろいろ考えていた。

今思えば、母親が居ない時点でエステの店舗にも居られなくなるわけだから家に来なくても気づく事にはなるんだろう・・・父親が家に来て気づいたのか、店舗から追い出される時に気づいたのかは今では分からないけど・・・

新し家は二階建てで庭もあり日あたりはよくなかったけどとても広い家だった。
新しいお父さんとは、引っ越す前に何度か顔を合わせていて知っていた。
ゴリラのようにごっつくて谷村新司みたいに鼻の下に髭を生やしてた。
長距離トラックに乗ったり土木業をしていたから筋肉ムキムキで怖い感じの見た目・・・

家族とあまり一家団欒を味わった事があまりなかった私は、ドラえもんの家のような小さい庭と椅子に座る食卓テーブルが嬉しくて、お母さんのお手伝いで庭の草むしりとか、食器棚におやつとかに憧れてたから、家を探検しながらドラえもんの家族と自分の家族をダブらせ嬉しくなっていた。

けれど嬉しくなると決まって父親の最後に見た背中が私を幸せ感から引き戻す・・・本当は新しいお父さんではなく本当の父親と描きたかったドラえもんの世界だった・・


荷物も片付いてきた数日後母親は私と姉に
「お父さんと呼んであげなさい」
と言った。
私は正直、父親を見捨ててきたのに笑って日々を過ごしている自分がすごく最低な気がして、それに加え今のおじさんをお父さんと呼んでしまったら本当の父親にもっと酷い事をしているような気がして呼ぶ事に迷った・・・

でも母親が呼んであげたら喜ぶんじゃなかと思った私は
「うん」
と呼べることに嬉しいフリをした。

今思うと、実の母親に子供の私はなぜそこまで作り笑いをし、気を回してたのか分からない・・・
「ありがとう」
と母親は喜んだ。
それを見て私も嬉しかった。

たかが子供の作り笑いと嘘にきっと母親は気づいていたと思う・・・気づかない振りをしたんだろう・・・そんな母親だ・・・

その日の夜、初めて好きなわけでもない暮らしてまだ浅いおじさんをお父さんと呼んだ。
その時姉だけは下を向き呼ぶことをしなかった
「無理しなくていいよ」
と義父は言った。

この時側から見たら良い父親に見えるけど、これはコイツの表の顔・・・

後で分かる事だが、この時から義父は姉を嫌いだしていた。

自分の父親と急にバラバラに離された子供・・・呼べなくても仕方ない・・・姉は父親が大好きだった・・・そんな子供の少しの抵抗も義父は許せなかった小さい男だった・・・


数日は姉の反抗はあるものの無事に過ぎていった。本当にほんの数日間・・・

壊れるのは早かった・・・

「お父さんとお風呂に入ろう」
私は9歳になっていた・・・
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