見えない鎖   〜育児放棄・薬・風俗の中で生きてきて〜

ぶう子

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第一話

私のクズ家族

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私は岐阜県で産まれた。おじいちゃんのいた頃に建てた二階建ての一軒家で、私、姉、母、父、祖母の家族5人で暮らしていた。

その頃は母親も家の一階を作り替えてエステを経営していたし、父親はバイクショップにバイクにたずさわる物を家で作りバイクショップに届け収入を得ていた(父親の収入は多分そんなにはなかったと思うけど取り合え得ず働いてはいたかな・・・)
父親は一階の母親の店の一部で仕事をこなし、寝泊まりもしていたため、家族が揃う時間は晩御飯の数時間のみだった
きっと良い夫婦関係ではなかったんだろうけど、きっとその頃は、そこそこお金はあったんだろうと思う。
休みには家族で旅行なんかもしたり、祖母は猫が大好きでたくさんの猫と犬も飼っていた。


ある時、祖母が夜歩き回ったり、夜階段から足を踏み外し怪我なんかをしてた。
祖母はアルコール依存だった。
酒を求め夜抜け出しては酒を飲み、酔っ払って怪我を何度もする。

その頃は、近所には長い付き合いの知り合いや、精肉屋さん、八百屋さん、酒屋さんがいて(私達の周りはサザエさんのような感じが似てるかな)祖母がそんななので挨拶に周り、酒屋さんには酒を売らないように頼みに行ったのをおぼえてる・・・
近所のほとんどの店は同級生なんかの家だったりして、きっと近所では凄い噂だったんだろうな・・・
そんな家族の阻止もむなしく祖母は店では買えないから、営業後の酒屋の前のワンカップの自販機で酒を買っていた。
さすがに自販機までは止められず、祖母は酒を飲み続けた。


ある時、ほんの数センチの家の段に引っかかり酒の飲み過ぎで骨がスカスカだった祖母は骨折して50代にして寝たきりになった・・・(下半身がほとんど動かなかったから脊髄とかを損傷したんだろうと思う)
でも家族はこれで酒をやめてくれると安心していた。
不幸中の幸いでかなりの時間はかかるけど、祖母もまだ若かったしトイレなんんかは一人で行けたし、両手も使えその時はさほどの問題もなく生活できていたし何より私はおばあちゃん子だったので生きてくれてるだけで嬉しかった。
そんな事件はあったけど、それ以外は何もなく私は日々を過ごした。


私が7歳の頃、母親が急に引っ越すと言い出した。
私は新しい家と転校生は人気者のイメージもあり転校するのが嬉しかったから、気楽に喜んでいた。
今思うと、その時が借金地獄の始まりだったんだと思う・・・
真実は今は分からないけど、家の土地、母親の店、うちのエステは設備が良かったから、その全ての物を売ったんだろう・・・
母親は新しい家の近くに、前よりもかなり狭い店舗を借りてエステの店を開き仕事をしていた。
その頃父は、バイクの仕事を全くしなくなっていて、エステの店が狭くなったため、父親も一緒に暮らした。
私は新しい友達と新しい家、そして起きたら父親がいる生活が嬉しかった。


数日が過ぎたある時、母親が私と姉に
「お父さんが暴力を振るうから一緒に寝てほしい」
と言ってきた。

私と姉は、交互に母親と同じ部屋で寝る事にした。
夜になると扉が静かに開いて光が漏れる、私たちが寝ているのを確認すると父親はそっと扉を閉めて出ていく。
その時は、母親を暴力から守っていたと思っていたけど、きっと暴力からではなく、父親のセックスの要求から守っていたんだと思う。

殴るとか同じ家にいてそんな場面は一度も見たこともないし物音も聞いた事がない、父親は性欲が強くよく母親の店の従業員にも手を出したり、韓国に頻繁に行き遊んでいたから・・・まあその頃は、私は子供でそんな事は分からなかったけど・・・

引っ越して1年ほどの時、母親はまた急に引っ越すと言った・・・私8歳だった。
でも今回は家だけ引っ越すとの事・・・今の家と比べるとかなり小さいアパート・・・そこに父親の場所はなく、父親は無理矢理母親の経営する店にスペースを作りそこで暮らす事になった。
子供ながらに母親が一緒に寝て・・・と言ってきた時の事が原因だと何となく分かっていたから何も言わず同意した。

今でもなぜそこまでして父親と離れなかったか分からない・・・セックスまで拒み、仕事すらしず、子供を可愛がる事もほとんどしてない父親に何を思っていたんだろう・・・

引っ越しと同時に母親は私と姉に
「お父さんが夜来たら出かけてるって事にして」
と言ってエステの店とは別に少し距離のある場所で内緒で居酒屋の店を出した・・・

どこにそんなお金があったのか、今では分からないけど、母親はこの時から父親から離れる事を考えていたのかもしれない・・
父親のいる場所のなくなった家には、父親はほとんど寄り付かなくなった。
母親も父親もいない夜はとても寂しく、電気をつけとも何だか暗くて、寝たきりの祖母の足を引きずる音とテレビの音だけが頭に残ってる。9歳の姉と私は言葉にはお互い出さなかったけど、その空間がとても寂しく嫌いだった。


それからほんの数ヶ月後母親はまた引っ越すと言い出した・・・今度は父親に内緒で・・・母親は私達に
「新しお父さんができるよ。その人と家を借りてあるから、そこに引っ越すから・・・お母さんが先に家を出るからお父さんにはお母さんが家出した事にしなさい。お母さん居ないって分かるとあんた達だけならお父さん来ないと思うけど、お父さんが来たら食べ物がないとお金をもらいなさい。それでゴミ袋に必要なものをつめなさい。もしお父さんがきた時、段ボールに詰めると引っ越すのに気づくからゴミ袋にしか詰めたらダメだよ」
私はなぜかその引っ越しと新しいお父さんを喜んだら母親は嬉しいんじゃないかと
「新しいお父さんは日曜に一緒に遊んでくれるかな?」
と喜んでみせた。
姉は父親っ子だった分、その時きっと寂しかったんじゃないかな・・・


そして引っ越しが迫る頃、私は一人夕方の公園の滑り台に座ってた。遠くから父親の姿が見えて私は心の中で母親に言えと言われた言葉を繰り返した。
「お母さんまだ帰らないのか?」
「うん・・・」
痩せて元気のない父親・・・
「ご飯食べてるか?」
私はしばらく何も言えず下を向いてうなずいた。
本当はお腹なんか空いてない・・・
お父さんがお金をほとんど持っていないのは母から聞いていたし、食費も母から預かっていたからちゃんとご飯は食べていた・・・
母親は二度と会わないっであろう父親に貰える物は貰わないとと私に嘘をつくように言ったんだろう・・・
嘘をついた後ろめたさと、父親の沈んだ顔を見れず、父親の言葉にうなずくのがやっとだった・・・

カサカサ
顔を上げると父親はボロボロのペラペラの黒い財布から千円を出して私に渡した・・・
それを私に渡すと背をむけ私の家とは別の方へ帰っていった・・・
父親の後ろ姿はなかなか見えなくならず、だんだん小さくなる父親の姿を見ながら、私はとても3人分には足らないであろう千円を握りしめて涙が止まらなかった・・・
これでお父さんと最後なのかも・・・何でお腹すいたと嘘をついてしまったんだろう・・・
今でも父親の後ろ姿が目に焼き付いている・・・
この父親の背中が父親を見た最後になった。
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