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アルバの高等学園編

離宮で会議

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「おめでとうアルバ君。まあ受からないことはないと思ってたけど」
「そうだな。アルバはあれだけ素晴らしい魔術陣を描けたのだから、あれで落ちていたら私は魔術陣技師の試験内容を王命で変更していたところだ」
「画家でも生計を立てることは出来そうだけどね。そっちは残念……ということで、お祝いのケーキどうぞ!」

 目の前に出された見た目がとても可愛らしいケーキを前に、俺は困惑していた。
 一国の王妃お手製のケーキがお祝いだなんて。
 ……いいの? 本当に? 
 チラリと隣に座った兄様に視線を送ると、兄様はにこりと笑ってフォークを手に取った。
 そして、上に飾られたフルーツをサクッと刺して……

「はい、あーん」
「さらに贅沢が上乗せされた!!」

 うわああああと両手で顔を覆うと、斜め前からぶふぉっと噴き出す音が聞こえた。

「流石アルバ! ここでも笑いをしっかり取る辺りすごいなあ」

 あはははははと大口を開けて笑いまくるセドリック君は、陛下と妃殿下の前なのにとてもくつろいでいた。
 わかるよ! そんなことで咎めないお二人なのはすっごくわかるけど!
 セドリック君この離宮にいるときってめちゃくちゃリラックスしまくりじゃない?
 指の間からじろりと睨むと、さらにセドリック君の笑いが酷くなって、とうとうソファの上で丸まっていた。

「こらセドリック。指さすのはどうかと思うの」

 俺を指していたセドリック君の指を、ミラ妃殿下がむんずと掴むと、おかしな方向に力を加えた。

「いててててて! ミラ義姉様ごめんなさい! 指折れる!」
「謝る人を間違えていてよ」
「アルバごめんなさい!」
「よく言えました」

 にこやかにセドリック君の指を離すミラ妃殿下に、隣に座っていたヴォルフラム陛下が「君もやり過ぎだ」と苦笑している。
 

 今日ここに集まったのは、別にミラ妃殿下お手製のお菓子を食べるためじゃない。
 俺が昨日の夜に視た刻魔法内容をヴォルフラム陛下に伝えるためだ。
 本当は王宮の方に盗聴不可能な俺たち限定の会議室を作ったんだけど、どうせならストレス発散したい! と騒いだミラ妃殿下がこの離宮を指定したんだ。勿論こっちも盗聴は不可能状態。むしろ中には使用人もほぼいないので、お気楽極楽なんだそうだ。
 そして何かを発散するようにスポンジケーキにデコレーションしたミラ妃殿下は、今現在とても満たされた顔をしていた。
 セドリック君は本当に偶然で、丁度セネット公爵のところに届け物があったので王宮に来たら、俺たちが離宮に移動するところとばったりあって、そのままついて来てしまったんだ。もう秘密も教えたから同席を許されたんだ。
 まあ、それにしたってここに入ってからの皆のリラックス加減について行けないけど。


 昨夜発動した刻魔法は、大きな発作と同じように魔力がグイグイ消費されるタイプのヤツだったんだ。色つきで声や音まであるような感じのもの。
 応接室で母とルーナと戯れている時に刻魔法が発動してしまい、丁度王宮から帰ってきた兄様にメイドさんが玄関まで走って知らせてくれたことで、魔力枯渇もなくちゃんと最後まで視るが出来たという。二人分の魔力を使って。
 ……その間ずっと兄様とアレでアレなキッスをしていたなんて、周りには内緒だけど! 思い出すだけで兄様の口に視線が向かってしまう。兄様も最後はヘロヘロになっていたので、本当にすっごく大量に魔力を消費してたんだ。義父がブルーノ君を呼んで魔力回復薬を大量に持ってきてもらってたくらいだし。

 そのまるで映画のような刻魔法の内容が、この国の南側の領地に大きな魔物たくさん出るというもの。
 あれは竜だった。絶対に竜だったよ。

 ヴォルフラム陛下が言うには、ただいま魔力が枯渇しそうな国は、北西の山を挟んだむこうの国と、南に隣接した国。東の方は安定しているとのこと。東の国の人口はこの国よりもさらに多くて、交易も盛んだって。国自体が安定しているんだそうだ。これで東まで宝玉が力尽きそうになってたとしたら全方向ヤバかったよ。
 北西の国はヴォルフラム陛下から助言をもらって総力を挙げて魔物退治をしているみたいだけれど、未だ宝玉の回復には至っておらず。南に至っては最近王が代替わりしてからさらに魔物が増えたとかなんだとか。
 ほんと、この世界国家間の戦争がない世界でよかった。国内に目を向ければいいって本当に助かるよね。
 でもまあ、こうして魔物で被害は被るわけだけど。それはお互い様で。うちの国がヤバかったときは反対に向こうにも影響していただろうし。しかもこれ、宝玉の魔力が枯渇するっていうのは自然の摂理だから本当にどうしようもないんだよね。

「陛下、今朝ブルーノからも預かったものがあるので、内容の確認をお願いします」

 そっと兄様がポケットから封書を取り出す。
 ブルーノ君が卒業してから新たに作ったブルーノ君だけが使えるシーリングスタンプを押されたそれを受け取ったヴォルフラム陛下は、一つ頷いた後その場で開けた。
 飾り気のない質素な紙にびっちりと書かれた文字を、しばらくの間目で追った陛下は、最後まで読み終えると顔を上げた。

「ブルーノ預かりの者も似たような内容のものを視たそうだ。とはいえ、こちらはそこまで詳細ではないが……やはり使える魔力量の違いか」

 ふむ、と頷くヴォルフラム陛下の独り言のような言葉に、俺はそっと目を逸らす。
 そうですね。俺はあれだから。ただでさえ攻略対象者になる人と同程度の魔力を持っているのに、さらにもう一人分の魔力を存分に使えるから。
 それはもう壮大な映画のようなものを視ましたとも。俺の目視点で。
 ってことは俺も、出てきた人達も皆現場に行くってことかな。
 だったらどうして先頭に立って妃殿下が攻撃魔法をバンバン打ってたのかな。一国の王妃様が、普通最前線には出ないはずなのに。
 俺が指示して皆で討伐していた魔物っていうのがもうさ、ドラゴンで。

 
 竜ってアレだよ。お相手の色の鱗がゲット出来るめっちゃ周回するやつ。
 一緒に戦ってたまに出てくる光デス激レアアイテムがごくごくたまーに取れるアレなんだよ!
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