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アルバの高等学園編

後は長期休暇を待つばかり

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 夕食は、義父はまだ王宮にいて不在だったので、母とルーナも交えたとても和やかな晩餐となった。
 ルーナはジュール君を見るなり駆け出し、ジュール君を椅子に招いた。

「ジュール兄様が来てくれて嬉しい! もうすぐブルーノ兄様も来るから待っていてね。あれ、でもツヴァイト兄様はいるのね? ブルーノ兄様は?」

 ツヴァイト閣下を視界に入れて、ルーナはしきりと首を傾げていた。
 普段うちにご飯お呼ばれする場合は温室から二人で一緒にこっちに来るから。

「ルーナ嬢。今日は俺とブルーノは別行動だよ。ルフトを部屋に送ってから来るんじゃないかな? それよりもご挨拶とても上手になったね」
「今日ね、教えて貰ったの! 先生の動きがとても優雅で綺麗だったのよ。私もああなりたいわ」

 うふふと可愛らしく笑うルーナに、ジュール君が膝を突いて視線を合わせてくれる。

「ルーナ嬢なら絶対に出来ますよ。お招きいただきありがとうございます」
「ルーナ嬢、僕もご挨拶させてもらいますね。今日はお招きいただきありがとうございます」

 ジュール君の言葉に合わせて、セドリック君もひょいとルーナ前に顔を出した。いつものよそ行きじゃない笑顔を浮かべながら、挨拶をすると。
 ルーナがよそ行きの笑顔をその顔に貼り付けた。一生懸命淑女の顔をしている。うちの妹頑張っている。可愛い。

「セドリック様、ようこそいらっしゃいました」

 とても綺麗な挨拶をするルーナに、セドリック君は少しだけ困惑した表情を浮かべた。

「あれ、ジュールは兄様で僕は様なの……?」
「ジュール兄様は将来の家族ですから」

 セドリック君の呟きにそつのない笑顔で返したルーナは、ジュール君の手を引いてテーブルに向かっていってしまった。ジュール君に椅子を引いて貰って、ご満悦である。
 その後ろでは、何やらショックを受けているセドリック君がちょっと不憫だった。俺はその後ろで笑いそうになるのを必死で堪えていた。
 

 二人にようやく秘密を打ち明けた俺は、心も軽くなってのびのびと試験を受けることが出来た。そのせいか、学園で刻魔法が発動することもなく、落ち着いて学園生活を謳歌できている。
 座学は思ったよりもいい点が取れて、けれど実技で平均点を大幅に下げた俺は、辛うじて上位入賞者に名を連ねるという快挙を達成して、ホッと胸をなで下ろした。ちなみに市井の子達は全体の真ん中くらいに固まっており、かなり健闘しているみたいだった。市井の学校とここの中等学園では勉強内容レベルが結構違うらしいからね。フレッド君もギリギリ上位に名前が載らない辺りにいたらしい。
 試験が終われば、長期休暇。兄様と遠出で俺の祖父母の暮らす男爵領へのプチ旅行が待っている。
 ワクワクウキウキで発表を見ていると、相変わらずトップに君臨するセドリック君とジュール君に捕獲され、そのままサロンに拉致された。

「アルバは長期休暇はどうするんだ?」

 セドリック君に聞かれて、俺はウキウキのまま兄様と男爵領に遊びに行くことを伝えた。まあ言ったとしても公爵家の者が男爵家に滞在なんて負担にしかならないからほんの数日程度だけど。母とルーナも一緒に行くから、ルーナは初顔合わせになる。

「じゃあ、それ以外の用事はないのか。よかった。よければ僕の家に遊びに来ないかって誘おうと思ったんだ」
「セドリック君の家に? お茶会か何かですか?」
「いや……」

 俺が首を傾げると、セドリック君は少しだけ考えるような素振りをしてから、ぐいっと身体を俺の方に乗り出した。

「アルバはたとえ目の前にその人物がいなくても肖像画を描けるか?」

 いきなりそんなことを言い出したセドリック君に、思わず瞬いてしまう。

「肖像画ですか。沢山見ていて知っている方ならなんとか……ですが見たこともない方を特徴だけ教えられて描くということはできないと思います」
「じゃあ、僕の家に来てこっそり陛下と王妃の肖像画を描くことは出来ないか? 値段は言い値でいい。道具類も絵の具もこちらで用意すると言ったら、描いてもらえるかな」
「ミラ妃殿下とヴォルフラム陛下ならなんとか見なくても描くことは出来ますけど……それなりの日数通うことになりますよ」
「全然問題ない。それどころかうちに滞在して欲しいくらいだ」

 セドリック君は少しだけ言いにくそうにもじもじしてから、意を決したように口を開いた。

「僕、お二人とも姉兄のように過ごしてただろ? セネットからの正式な祝いは贈ったんだけど、僕個人でお二人に何か贈りたくて」
「ほう」

 照れたように仏頂面になるセドリック君に、俺はニヤリと笑った。なる程。二人に個人的に贈りたいのか。

「僕に絵心はないし、買った物になると陛下達ならいつでも手に入れられるだろう? 唯一無二のような贈り物をしたくて……前に姉上……王妃殿下がアルバの絵が本当に素敵だから離宮に飾りたいと呟いていて。でもアルバはサリエンテ家の者たちしか描いていないから一枚くれとも頼めないし、描いてもらうにも学園に通いながらだと負担じゃないかと躊躇っておられて」
「妃殿下、そんなに僕の絵を気に入ってくれていたのですか?」
「それはもう大絶賛。うちに飾ってる絵を褒めたことは一度もなかったのに、アルバの絵の話になるとすっごい褒めちぎって、実は父上もかなり気になってたみたいだよ。……僕も姉上に便乗して褒めまくったからなんだけど。ちなみにすでに父上はアルバがいいならいくらでも用意しようと張り切ってる」

 もう了承済みなんだ。あははと声を上げて笑った俺は、一応うちの人達に確認してからだけど、と前置きをして、了承した。
 とはいえ、二人の顔はアプリでは馴染みはなかったんだよなあ。
 家で少しだけ練習しようと心に決めた。
 それにしてもセドリック君、すごくミラ王妃殿下に懐いたよねえ。
 
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